12月17日（土） 第91回天皇杯 4回戦
清水 2 - 0 千葉　（15:00／アウスタ／6,855人）
得点者：49' アレックス（清水）、62' 伊藤 翔（清水）
★第91回天皇杯特集
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「うちは自分たちの時間帯の時に点が取れなくて、清水は自分たちの時間でしっかり取った。そういうシンプルなゲームだったと思います」。千葉の林丈統が語った言葉が、この試合をもっとも短く的確に表現している。実際、前半はほぼ千葉が思惑通りの展開に持ち込んでいた。

サイドバックが右・平岡康裕、左・ヨン ア ピンに変わった清水は、中盤も小野伸二とユングベリを欠いてアンカーに杉山浩太、トップ下にアレックスと枝村匠馬という構成。システムはいつもの4-3-3だが、メンバーが変わって少しぎこちない面もあり、天皇杯のJ2との戦いという慎重さもあって、エンジンのかかりは遅かった。
それに対して、同じ4-3-3の形で臨んだ千葉は、チャレンジャーらしくエンジンのかかりも良く、立ち上がりから綿密なスカウティングに基づいた自分たちの戦い方を遂行した。「後ろから長いボールを蹴っている時は、清水が困っている時。自分たちが前からプレスに行って長いボールを蹴らせて、フィフティフィフティのボールをマイボールにして（前半は）うちが主導権を握れていた」（佐藤勇人）という言葉通り、タイトな守備のブロックで縦パスのコースを消し、前からプレッシャーをかけて清水のセンターバックにロングボールを蹴らせるのが千葉の狙い。
そのためには、前からプレッシャーに行く中でも、DFラインを高く保って全体をコンパクトに保つことが欠かせない。チーム全体が連動して、その条件をきっちりと満たしていたあたりは、組織としての完成度をうかがわせた。
そして攻撃のほうでは、攻撃時に高い位置をとる清水の両サイドバックの裏を突くのが一番の狙い。両サイドでその意識が表われ、前半14分に左サイドバックの渡邊圭二と左FWの林できれいに崩して決定機を作った場面などは、まさに狙い通りの形だった。その他にも前半は2度、3度と得点機があったが、それを決めきれなかったのが千葉の課題でもある。
清水のゴトビ監督は、この展開に業を煮やしハーフタイムで激しい檄を飛ばしたが、選手たちには「慢心ではなく選手の中には余裕も少しあったと思うし、前半は耐えて後半にいけるという気持ちはあった」（杉山浩太）と焦りはなかった。そして後半は、監督の指示通り攻撃をスピードアップ。左膝を痛めたヨン ア ピンに変わって左サイドバックに入った太田宏介もすぐに持ち味を発揮して、早々に押し込む展開を作っていった。
そんな中、後半4分に平岡のフィードで高原直泰が右の裏に飛び出し、マイナスの折り返しからアレックスがフリーでシュートという決定機をさっそく作ったが、これは利き足ではない右足でアレックスが大きくふかしてしまう。ただ、そのリスタートからの攻撃で、枝村のパスを受けたアレックスが、今度は左足でミドルシュート。これがゴール手前でバウンドして変化し、GKの脇を抜いて待望の先制ゴールが決まった。最初のチャンスではミスしたアレックスが、次ではきっちりと汚名返上したあたりは、この試合を象徴しているとも言える。
これで余裕も出た清水は、その後も主導権を握りながらチャンスを作っていく。そして後半17分、大前元紀が高い位置からのしつこい守備でボールを奪い、そのパスを受けた伊藤翔が正確なファーストタッチからDFの間を抜くシュートを左隅に決め、決定的な2点目を奪った。

その後は、落ち着きを増した清水に対して、千葉の攻撃は前半のような冷静さを欠き、反撃の迫力という意味では物足りない内容。多少押し込まれても集中してゴール前を固めた清水から1点を奪うことができないままタイムアップの笛を迎えた。
終わってみれば、拮抗した展開の中での余力や、ゴール前でのプレーのクオリティ、相手のミスを見逃さないといった面で、J1とJ2の差が出たゲーム。千葉の選手たちも、そのあたりは十分に認識し、来季のレベルアップを誓った。
一方、これで7年連続の準々決勝進出を決めた清水は、ゴトビ監督が「一番難しい試合」と語った4回戦に良い形で完勝。アンカーの杉山浩太が非常に良い仕事を見せ、伊藤も2試合連続ゴールを決めるなど、出番が増えてきた選手の活躍も光った。2年連続の決勝進出と、今度こそのタイトル獲得に向けて、精神面でも戦力面でも準備を整えつつある。

以上

2011.12.18 Reported by 前島芳雄