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今節のプレビューをどう記すべきか。今週に入ってからというものずっとそれを自問自答していた。頭の中で下書きしてはそれを白紙に戻すことを何度繰り替えしたか分からない。それほど、徳島にとってこの一戦は超ビッグマッチであり、簡単には語れないものと捉えていた。
さらに、ご承知の方も多いと思うが、迎える今節はその前日（11/26）に行われる札幌のゲーム結果によって持つ意味合いが大きく変わってくる。ここでの昇格に関する細かなシミュレーションは控えさせていただくが、徳島はこの戦いで昇格を内定させられるかも知れない反面、ことによっては昇格圏外へ落ちてしまう危険性（得失点差により）も孕んでいるのだ。それだけにこのプレビューの書き方はよりいっそう難解…そう悩んでいた。
しかし、決戦に向かう美濃部直彦監督の、選手たちの声がそれを一気に解決してくれたのである。「平常心、ですよ。特別なことは何もない。これまで通り積み上げてきたことをやるだけ（美濃部監督）」「自分たちがやらなければいけないことに集中するだけです（ぺ スンジン）」「全てが終わるまで何も分かりません。だから今大事なのはこれまで通りのプレーを続けること（倉貫一毅）」。こうした言葉に、このプレビューも昇格云々を過度に意識せず今節の戦いだけを見据えて書くべきと教えられたのであった。
と、少々前置きが長くなったが、とにかく余計な計算などを全て消し去って書き進めれば、徳島としてはこの一戦も持ち得る全ての力を尽くし勝利を追い求めるのみ。今季のホーム最終戦として1年間支え続けてくれたファン・サポーターに成長した姿をしっかり披露し、恩返しとなる歓喜をスタジアムに届けるべく最後の1秒まで闘い切るだけだろう。そしてそのために何より大事なものはやはり、チームの原点である『積極性』。それをピッチ上で常に漲らせることだ。攻撃においてはゴールを強く意識した動きと展開でそれを表現し、守備では組織全体をコンパクトに保って厳しいアプローチとチェックを徹底しなくてはならない。
またもうひとつ、全員で一丸となって闘う姿勢も自分たちの持っている強みなのだから、それもしっかりと発揮したい─。今季ここまでを思い返せば徳島はどんな時も一丸となって戦ってきた。ピッチに立っている者だけでなくチームの全員が同じベクトルのもとひとつになって一戦一戦を乗り越えてきたと言えよう。事実それを物語るように、主力の出場停止が相次いだ前々節、前節では代役を務めた橋内優也や石川雅博が懸命のプレーで勝利の立役者に。今季それまでの出場機会がどうだったかなど関係なく、彼らは全員で紡いできた今の成果をさらに先へ繋げようと非常に強い気持ちを見せたのである。
いずれにしても、前記の指揮官や選手たちの言葉にもあった通り、徳島としてはこれまでと変わらない自分たちの戦いをすることこそがこの一戦において最も重要。それが望む結果を手繰り寄せる何よりのパワーになるのは間違いない。
とは言え、こうした状況下において選手たちがフラットな心理状態を一瞬足りとも崩さずにいられるかと言えばそれは難しいに違いない。普段と違う意識やプレーが顔を覗かせそうになることもきっとあるのではないだろうか。だからこそ美濃部監督は「本来の自分たちのスタイルと違うものが出てこようとするかもしれない状況の中で、平常心をもってそれを如何にコントロールできるか」ということをポイントとしてコメント。選手たちにはブレないメンタルの強さが大いに問われることとなる。
僅か3年前（2008年）まで、徳島はどん底を彷徨っていた。J昇格初年度（2005年）こそ健闘したものの、2年目からの3年間はシーズンの白星が数えるほど、得失点差は目を覆いたくなるマイナス数字で…。とにかく当時の記憶は心底辛いものでしかない。だが逆に、そうした時期があったからこそクラブも、チームも、サポーターも逞しくなったと言えよう。その時味わった言い表せないほどの悔しさが徳島の強い礎となり、2009年からの着実な成長を支えているように思われる。あの時を乗り越えたからの今、だ。
そして迎える11.27、さらなるステップアップに向けて、いざ決戦。
以上
2011.11.26 Reported by 松下英樹
