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前節、今季初めての逆転負けを喫した熊本。順位は10位となり、３位徳島、４位札幌との勝点差は12。残りの４試合で全勝しても勝点で並ぶに留まることから、今シーズンの昇格の実現は、現実的にはほぼなくなった。しかし前節の試合後に大迫希が口にしていたように、少なくとも来季につながる試合をして今シーズンを終えたい。
対する北九州は、前節の水戸戦で池元友樹と福井諒司が退場となり、また森村昂太も警告の累積で、今節は主力３人を欠くという状況。熊本にとってこれはラッキーとも言えるが、Jリーグ２年目で大きく躍進している北九州の勢いは、そうした状況をも推進力に変えてしまう可能性がある。前節は水戸に敗れているものの、10月の連戦を無敗で乗り切ったチームの総合力は、熊本に劣るものではない。
ただ、熊本も前節京都に敗れたとは言え、立ち上がりから積極的にプレッシャーをかけて主導権を握り、前半30分頃までは「パーフェクトに近い試合ができていた」（吉井孝輔）。特に11分の大迫の先制点の場面にも表れているパスワークからのバイタルエリアの崩しは、夏場以降に時間を割いて取り組んできたことが形になったもの。この場面以外にも、小気味良くボールを動かして相手の守備陣を翻弄するシーンを作っており、「お互いのプレーが分かるようになってきた」と武富孝介が言うように、ここへきて前線のコンビネーションが冴えているのは頼もしい。トレーニングの紅白戦でも大迫と武富のコンビでゴールに迫る場面を見せており、フィニッシュの精度という問題は依然あるにせよ、そうした場面を数多く作る事でリズムを掴む事は可能だ。
しかしそれも、前からの積極的な守備があってこそ。「北九州も京都と同じようにつないでくる。そこで外されると厄介なので、回させないように連動してプレスをかけないといけない」と原田拓。京都戦では相手も中盤の形を変えるなどして対処したことで流れが変わったが、もとよりそうしたプレッシャーを90分間かけ続けるのは難しい。「できるだけ高い位置で取って、高いところでボールを保持しながら、その時間を長くするためにメリハリが必要」と原田は続ける。原田をはじめ、吉井、根占真伍の中盤３人はいずれも本来ボランチとあって、距離感やバランスをはかりながらポジションをとり、ボールを受けたらキープ、あるいはテンポよく、広くさばくという部分の役割もこなせるのは小さくないメリット。前のアプローチに合わせて上手くスライドし、北九州の流れを切ることも含め、攻守において今節も中盤が鍵を握ることになる。
そうした点で前節できたことを継続する一方で、できなかったことは修正しなくてはならない。先制した後の試合運びや追加点を取る事もその１つだが、最たるものが最終的な局面での対応だ。高木琢也監督が会見で「大きなミス」と明言した通り、京都戦での失点も決して防げないものではなかった。「ゴール前は相手もパワーを持ってくるし、簡単にやらせないようにしないといけない。最初の一歩、出足から集中しないとやられるし、そのためにもボールがくる前の段階からいい準備をできるよう、ポジショニングにも気をつけないといけない」と筑城和人は話す。
北九州との戦績は、昨シーズンから１勝２分と無敗。今シーズンの前期（10節）は0-0で引き分けだが、「前回は向こうも完成していない段階で、勝点を落としたという印象」（廣井友信）。順位や過去の戦績と関係なく、それぞれのプライドをかけてぶつかる『バトル オブ 九州』とあって、今節は５台が出発するというツアーバスをはじめ、多くの熊本サポーターが本城陸上競技場のアウェイ側スタンドを赤く染めることが予想される。ホーム同然の空気を作り出すサポーターに３試合ぶりの歓喜を届け、結果を出して指揮官の誕生日に花を添えたい。
以上
2011.11.11 Reported by 井芹貴志
