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簡単にＪ１への道を譲るわけにはいかない。昇格圏内の３位に付ける徳島を、ホームのグリスタで迎え撃つ８位・栃木。勝点５９の徳島に対して、栃木は勝点５０。負ければ眼前で昇格の可能性を完全に断たれる事態は、絶対に避けなければいけない。徳島と勝点で並ぶ４位・札幌の結果はコントロールできないが、直接対決で徳島を破り、札幌も転べば勝点差を６に縮められる。
「まだまだＪ２を盛り上げるために、徳島に勝つことだけを考えたい。まだまだ燃え尽きていないところを見せたい」
終戦を迎えるには、まだ早すぎる。誰もが水沼宏太と同じ思いを抱いているはずだ。昇格戦線にもうひと波乱起こすために、徳島戦は栃木にとって極めて重要な一戦となる。
杉本真、リカルド ロボ、河原和寿、サビア、サビア。前節の鳥取戦で栃木はクラブ最多となる５ゴールを叩き出し、４試合ぶりの勝利を華々しく飾り、復活の狼煙をあげた。ゴールラッシュの一因に挙げられるのが距離感。ロボと崔根植の２トップを、共にゴールをマークした杉本と河原の両ワイドＭＦが適度な距離を保ってサポートし、さらにボランチの高木和正が絡むことで攻撃に厚みが生まれた。
今節の徳島も鳥取同様に布陣は４‐４‐２が予想される。がっちり組み合えば易々とチャンスは作れないが、リスクを冒さなければゴールは奪えない。５月に栃木が４‐０で圧勝した時と比べて徳島はブロックを作り、負けないサッカーにシフトしている。「昇格する上で先に失点したくないというプレッシャーがあるのかもしれない」と話す大久保裕樹は、「そこを上手く突けるサッカーが出来ればこっちのペースになる」と続けた。慎重に試合を運びたい相手の出鼻を挫く先制パンチが打てれば主導権は握り易い。序盤からフルパワーで仕掛け、先制点を奪えれば、徳島はバランスを崩さざるを得なくなり、快勝した前回のような展開に持ち込むことも不可能ではない。勝利への執念を燃やし、キックオフからアグレッシブさを発揮したい。
愛媛に執念を見せられ、後半アディショナルタイムに２点を返された徳島は、前節の“四国ダービー”で「サッカーの怖さというか、勝つことの難しさを痛感した」（美濃部直彦監督）。２‐０から２‐２に追い付かれた痛みを引きずらず、気持ちを切り替えられなければ今節も苦戦は必至だ。そのことを重々承知している美濃部監督は、戦術よりもメンタル面の修復を重視しているはずだ。いかに気持ちを立て直せるかが、今節、もっと言えば昇格に向けた徳島の大きな鍵を握ることになるだろう。
栃木も徳島も守備への意識が高いだけに、拮抗した試合展開になることは容易に想像が付き、セットプレーの比重は自然と高まる。累積警告で３人を欠く徳島だが、エリゼウ、西嶋弘之、佐藤晃大と高さは失われておらず、徳重隆明に島田裕介と良質なキッカーも取り揃えている。大敗した前回のリベンジと昇格への思いを形にし、しぶとく勝ち切って３位をキープしたい。
９月４日のＦ東京戦で右腓骨骨折の重傷を負い、治療のためブラジルに一時帰国していたパウリーニョが１１月５日に再来日を果たした。その翌日、栃木は鳥取に快勝。パウリーニョ離脱後、すっかり元気を無くしていたロボは２試合連続ゴールで復調を強く印象付けた。「いい流れを持ってきた感じがする」とサビアが言うように、パウリーニョの復帰はチーム内にポジティブな風を吹かせた。松田浩監督が何よりも重んじる、勝つための雰囲気と団結力は取り戻した。８月２１日以来、遠ざかっているホームでの勝利を掴み取り、凱歌、「県民の歌」を澄んだ秋の空気に乗せて響き渡らせたい。
以上
2011.11.11 Reported by 大塚秀毅
