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前節、さいたまダービーに1-0の粘り強い勝利で勝点を35に伸ばして残留争いから抜け出しかけた大宮が、Ｇ大阪に4-1と圧勝して優勝争いに弾みをつける名古屋をホームNACK5スタジアム大宮に迎える。
前回の対戦(6月18日・第16節)では、名古屋は２点をリードしながら、青木拓矢の２ゴールの活躍で大宮がアディショナルタイムに追いつき、貴重な勝点１を拾った。大宮がU-22代表の東慶悟の不在により、ボランチが本職の青木を右MFで起用するなど守備的な布陣を引いたこともあって、名古屋は後半半ばまで試合を支配していたが、選手交代が裏目に出て大宮に主導権を渡し、さらには終盤５バックにしたことで猛攻にさらされ、耐えきれず勝点２を失った。
ポゼッションしての攻撃サッカーを標榜している今季の大宮だが、実際のところ勝ったゲームは、前節の浦和戦のようにしっかりと守りを固め、少ないチャンスをカウンターでモノにする展開のほうが多い。特に秋以降は、東とラファエルを前線に残し、シンプルにDFラインの裏をねらう攻撃が多くなっている。前節ではさらに、攻守にバランスが取れてクロスやラストパス、セットプレーの一発がある橋本早十を左MFに起用。さらに左SBに、攻撃参加は少ないが正確な左足のロングキックを持つ金英權を起用するなど、攻撃の質をよりカウンター向きに修正しつつ、守備力の向上を図っている。その策が前節では、暫定で降格圏に落ちて絶対に勝たなければならなくなった浦和に対して、これ以上なくハマった。
これで大宮は降格圏に勝点６差となり、少なくとも、引き分けで勝点１でも良しとできる余裕が生まれた。対する名古屋は、優勝争いをにらんで、是が非でも勝点３を取りにいかなければならない。浦和戦と似た状況で、名古屋戦も同じメンバーで臨むだろう。大宮としては、相手がこちらの注文通り攻めにきてくれるため、ゲームプランは立てやすいはずだが、問題は優勝争いをしている名古屋の強力な攻撃陣を封じ込められるかどうかにある。
鈴木淳監督が「ケネディを起点にいろいろな攻撃パターンを持っている」と警戒するように、まずはケネディをいかに抑えるか。「競り勝つのは難しいが、僕らセンターバックがしっかり体をぶつけていく。クロスを上げる選手に自由に蹴らせないことも大事だし、落としも上手いからセカンドボールをいかに集中して拾えるか」とDFリーダーの深谷友基が語るように、ケネディに対峙する選手だけでなく、11人全員が守備意識を研ぎ澄ませなければならない。田中マルクス闘莉王や増川隆洋らも上がってくるセットプレーも脅威だ。「クリアもコーナーキックにしないことや、ゴール前で無駄なファウルをしないことだったり、とにかくピッチのどこでも、一瞬も気を抜けない試合になる」(深谷)と、体力以上に精神力が問われそうだ。
ただ、「相手は攻撃に人数をかけてくるぶん、(自陣に)引き込んでうまくボールを奪えばチャンス」(渡邉大剛)でもある。ポイントは「相手に引かれる前、スペースのあるうちに攻めきる」(橋本)ことだ。「向こうのセンターバックは高さがあるので、機動力で崩していく」と鈴木監督がいうように、「相手の裏に抜け出したり、アーリークロスを入れたり」(橋本)などで、少ないチャンスをモノにしていきたい。
一方の名古屋も、大宮がそうした戦いを選択してくることは百も承知のはず。引いた相手からも勝点３を奪ってきたからこそのリーグ王者である。ダニルソンの出場停止は痛いが、そのぶんダブルボランチにすることでカウンターへのリスク管理を高めてくる可能性もある。「ここ(リーグ戦も終盤)にきて、我々のやり方も大事だが、相手の弱点を上手く突けるような配置や動き方を考えていくことも必要」と鈴木監督は語るが、相手の布陣が直前までつかめないというのは逆に大宮にとって痛い。
いずれにしても、少なくとも前半は名古屋が攻め、大宮が守ってカウンターをねらう構図になるのは間違いない。ただ、同点のまま推移すれば名古屋には焦りが生じる一方、大宮としても劣勢のままでは90分は持たない。どちらのベンチにも、選手交代で流れを食い止める、あるいは引き寄せようとする場面が出てくるはず。その点で、大宮のベンチには李天秀や石原直樹といった切札がいる。粘り強く守って、ベンチの采配が勝負を分けるような展開まで持ち込むことに期待したい。
以上
2011.10.21 Reported by 芥川和久
