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日本代表に選出された増田誓志が鹿島に戻ってくると、その席は柴崎岳のものになっていた。それは、柴崎が17日からの3日間で行われたU-22日本代表合宿から帰って来ても変わらない。今節の神戸戦も小笠原満男のパートナーは柴崎が務めることになるようだ。
「歯がゆい。取られたという事実は受け止めている」
定位置を奪われてしまった増田は悔しさをにじませた。と、同時に柴崎の能力も高く評価している。オリンピック代表チームでもいずれは柴崎が「ポジション取るんじゃないかな、と思います」と予測していた。それだけ、その座を奪い返すことはそれほど簡単なことではないと感じている。
「疲れや体調を戻すというより、一段上に持っていかないと。前より良いものを出すためにトレーニングするだけです」
そう言って、以前の自分より質の高いプレーを見せることを誓っていた。
現在、リーグ6位と微妙な立ち位置にいる鹿島だが、柴崎・増田の二人を中心としたポジション争いは激しさを増し、モチベーションが落ちる様子は微塵もない。二人の切磋琢磨と同じような現象が、各ポジションで起きている。FWでは、興梠慎三が控えに甘んじるようになり、MFでは、遠藤康のポジションを脅かすフェリペ ガブリエルがベンチに戻ってきた。最終ラインでも西大伍が虎視眈々とレギュラーの座をうかがっている。来週末にはヤマザキナビスコカップのファイナルも控えており、ここでつまずくわけにはいかない。U-22代表合宿でも2得点と気を吐いた大迫勇也は「出続けてるので次も1点取ります。勝ってナビスコに行きたい」と頼もしいコメントを残してくれた。
とはいえ、神戸も気持ち的には同じだろう。現在、12位と残留争いが関係ないように思えるが16位の浦和との勝点差は7。リーグ戦では4試合勝利から遠ざかっており、これ以上未勝利が続くのは避けたいところだ。エースの大久保嘉人が出場停止という苦しい状況ながら、鹿島から勝点1でももぎ取ろうと必死にくるだろう。得意のカウンターを研ぎ澄ませ、鹿島が前に出たところでボールを奪い、一気にゴール前まで迫る算段だ。コンパクトな戦いができるかどうかが、得点力不足を解消し、失点の数字も減らしてくれるだろう。前節の清水戦では若い森岡亮太がJ初ゴールを決めただけに、ベンチの選手たちも波に乗っているだろう。
そうした意味では、ボランチの柴崎のポジショニングには注目だ。相手の長所であるカウンターを消すためには、こちらが攻めているときから注意が必要となる。「マリノス戦よりも名古屋戦の方がよかったし、名古屋戦より筑波大戦の方が良かった」と、試合に出る毎に試合勘を高めているだけに、攻守においてバランス感覚に優れる彼が、どういう位置取りをするのかを見ているだけでも発見があるはずだ。
前々節の柏に対しては、10人の相手を最後まで崩すことができずに敗戦を喫したが、その後に開催されたヤマザキナビスコカップの2試合では延長戦の末に勝利。続く天皇杯とリーグ戦も苦しみながら勝ち、公式戦4連勝と波に乗っている。しかしながら、小笠原は「スッキリ勝ちたいね」と更に高みを見ていた。
「理想は追加点を取って勝つこと。また見てもらえるような試合をしたいね」
以上
2011.10.21 Reported by 田中滋
