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名古屋にとっては大一番、という言葉が実にしっくりくる一戦となった。残り6試合となり、首位のG大阪には勝点差4をつけられている。優勝・上位争いにおいて、直接対決での勝利は、相手に勝点を与えずに勝点差3を詰められるため、実質的に2勝分ほどの価値があるといえる。ここで勝点差を1にできるならば、チーム史上初、リーグでも4チーム目となる連覇の夢はぐっと現実味を増す。ゆえに名古屋の最大にして唯一の目的はG大阪を返り討ちにすること。そのための準備は着々と進められてきた。
名古屋が細心の注意を払ってきたのは選手のコンディショニングだ。10月はリーグ28節清水戦を皮切りに、ヤマザキナビスコカップ準々決勝と準決勝、そして天皇杯2回戦の4試合が2週間のあいだに行われる過密日程でスタートしている。しかもナビスコカップの2試合はともに延長戦にもつれこみ、計240分を戦っている。そのため、地域リーグのFC鈴鹿との天皇杯2回戦では大幅に主力を休ませ、また出場した田中隼磨と玉田圭司にしても、それぞれ前後半の45分をプレーしたのみ。国際Aマッチに出場した藤本淳吾とケネディは別としても、主力のほとんどが1週間の調整期間を得ることができている。シーズンの疲労もたまってくるこの時期、週1回のゲーム間隔を維持できたことは大きい。
さらには、離脱していた主力も戻ってくることが濃厚だ。9月23日の神戸戦で負傷したダニルソンと、10月2日の清水戦で負傷した玉田はともにこの一戦へ向け調整を続けてきた。玉田は天皇杯で“調整出場”を果たし、まずまずのプレーを披露。まだ右足首に不安の残るプレーぶりではあったが、随所にらしい動きを見せていた。彼らが戻れば現在の名古屋の最強布陣である4−3−3が過不足なく編成できる。代役として奮闘していた吉村圭司や金崎夢生、永井謙佑らの貢献度も高かったが、逆に言えばその選手たちをジョーカーとしてベンチに残せるということは強みにもなる。
だが、G大阪の牙城はそう低くはない。リーグトップの65得点を稼ぎ出している攻撃陣は脅威。現在11得点でチャンスメーク能力も高いFWイ グノと途中加入ですでに9ゴールを挙げているラフィーニャには、アウェイでの前回対戦でも手を焼いた。遠藤保仁を中心としたパスサッカーに対しては、一度後手に回れば、散々な出来だったヤマザキナビスコカップ準決勝鹿島戦の二の舞になりかねない。序盤から失点が抑えられなかった守備陣も、ここ1ヵ月で無失点試合が2試合と調子を上げてきており、穴はなくなってきている。
このG大阪に名古屋がどのような戦いを挑むか。カギはやはり、全チームが警戒する“高さ”になってくるだろう。ケネディ194cm、増川隆洋191cm、田中マルクス闘莉王185cm、ダニルソン185cm。セットプレー時にはゴール前に壁のようにそびえたつ彼らの絶対的な高さは、それほど上背があるわけではないG大阪の守備陣に対する最大のアドバンテージになる。特に前回対戦でも存在感を発揮したケネディは、高さだけでなくリーチ、間合いという面でも他を圧倒しており、プレーイングサークルの広さで前線に強力な起点を作り出せる。劣勢を跳ね返す“飛び道具”としての役割を含め、ケネディにはこの一戦のキーマンとしての期待が膨らむところだ。
とにもかくにも重要な一戦である。クラブも「アカイ大作戦」というイベントの開催を決め、スタジアムに必勝の機運を高めようと必死になっている。1週間前、鹿島との一戦で驚異的なセービングを連発したキャプテンの楢崎正剛は常々こう言っている。「注目される試合をしたい。しびれるような試合を」と。巡ってきた最高の舞台には、楢崎を筆頭に選手全員が燃えているに違いない。聖地・瑞穂陸上競技場はすでにチケットが完売し、満員の20,000人が集結することも決まっている。この上ないお膳立ては整った。名古屋は全身全霊で、この大一番に臨む。
以上
2011.10.14 Reported by 今井雄一朗
