10月12日（水） 第91回天皇杯 2回戦
浦和 4 - 1 宮産大　（19:00／埼玉／4,849人）
得点者：10' 藤山 由昴（宮産大）、14' オウンゴール（浦和）、18' マゾーラ（浦和）、55' 原 一樹（浦和）、76' 高崎 寛之（浦和）
★第91回天皇杯特集
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試合が動いたのは１０分。宮崎産業経営大学は左サイドのテクニシャン、五領淳樹が藤山由昴に斜めのクサビを当てる。基本通りのパス・アンド・ゴー。五領と藤山とで交わされた３本のパスが浦和ＤＦの綻びを招くと、ＤＦラインの背後へ抜け出した藤山が右足でネットを揺らした。先制したのは宮崎産業経営大学だった。

ヤマザキナビスコカップ準決勝から中２日の浦和がターンオーバーを敷いてくることは予想できたが、ペトロヴィッチ監督は３日前にスタメン出場した選手を誰一人として使わず、総入れ替えの布陣を組んだ。そのせいもあってだろう。所々で連係が噛み合わず、しかもJ1チーム相手に大金星を画策する宮崎産業経営大学のほとばしるかのような気迫に圧倒された。
それでも１４分にマゾーラの突破からオウンゴールを誘発し、１８分には山田直輝がボックス内まで運び、その落としからマゾーラが左足ミドルを沈める。すぐさま逆転に成功したものの、攻撃に入った時に選手たちが同じ絵を描けている宮崎産業経営大学に対し、浦和の攻撃には後方からの長い縦パスばかりが多く、“単発感”は否めなかった。

「失点して火がついた」と原一樹は言う。リードを奪いながらも後手に回った前半から、まず奮起したのは原だった。５５分に原が叩き込んだミドルシュートは、まるでこれまで出場機会に恵まれない思いが乗り移ったとでも言うべきか。豪快な一発だった。
２点差としたことで浦和が冷静になれた…というよりは、宮崎産業経営大学が守備を強いられる場面、特にロングフィードによる裏への対応に追われている時間が多かったため、後半は次第に前へ出る推進力が失われていき、前半に何度も見せていたボールサイドに人数をかけたテンポの良いパスワークが鳴りを潜める。つまり、結果的に浦和にペースをもたらす形となった。チーム全体が落ち着きを持ったゆえ、代表から戻ったばかりの原口元気のコンディションチェック、または浦和ユースではインテリジェンス溢れるプレーでバランサーを務める野崎雅也をデビューさせながら、７６分には小島秀仁の右ＣＫから高崎寛之がヘッドによるゴールを加えた。

終盤、一矢報いるために前傾姿勢を取る宮崎産業経営大学は、バイタルエリアでの巧みなパス交換から浦和の最終ラインのギャップを突き、途中出場の久木田頼彦、加藤直也が決定機を迎える。同校を率いる笛真人監督が試合を通じ「予想以上の出来」と評したとあって、宮崎産業経営大学の“らしさ”がふんだんに表れた素晴らしい攻撃を最後にも披露した。だが試合開始直後のようにはいかず、ＧＫ山岸範宏の好セーブもあって浦和が追加の失点を許さずに４−１のまま逃げ切った。

勝利を挙げた浦和と同等、いや、ひょっとしたらそれ以上だったろうか。試合終了後、スタジアムに詰めかけた浦和サポーターから宮崎産業経営大学の選手たちへ向けた大きな拍手が贈られた。大学生たちも手を振ってそれに応え、最後は浦和の監督・スタッフらのいるベンチ前で一礼をする。番狂わせはならなかったが、浦和に真っ向勝負を挑んだ宮崎産業経営大学の大健闘と彼らの清々しさには、天皇杯ならではとも言うべき心地よさが感じられた。
浦和はペトロヴィッチ監督をはじめ、選手の多くが試合後に「勝利」という結果だけを評価し、内容に関しては「不満足」の意を示した。だが“勝利こそ良薬”の今の浦和にとって、しかも１４日間で５試合をこなさなければならないタイトな日程の真っ只中、３連勝という結果はプラス要素にこそなれ、それほどネガティブに捉える必要はないだろう。波乱なく３回戦へ駒を進めた浦和。この連戦の最後には大宮との大一番が待ち受けている。

以上


2011.10.13 Reported by 鈴木潤