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【第91回天皇杯 2回戦 大宮 vs 福岡大】レポート:ねらって起こしたアクシデント。福岡大学がJ1大宮をPK戦の末降し、下剋上を成しとげる。(11.10.11)

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10月10日(月) 第91回天皇杯 2回戦
大宮 1 - 1(PK 3 - 5)福岡大 (13:05/熊谷陸/1,500人)
得点者:70' 上田 康太(大宮)、72' 田中 智大(福岡大)
★第91回天皇杯特集
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予感だったのだろうか?藤本主税がPKスポットにボールをセットして間合いを取った瞬間、明らかにそれまでのキッカーのときとは違う、一種異様な静寂にスタジアムが包まれた。一方の不安と一方の期待は現実となり、ボールがポストをたたく乾いた音が響きわたる。落胆するサポーターたちと、お祭り騒ぎのサッカー部員たち。最後のキッカーもきっちり決めた福岡大学が、J1大宮を破る下剋上を成しとげた。

福岡大のサッカーはシンプルだった。ラインを高く保ってコンパクトなブロックを形成し、「大宮のボランチと両SBをプレスのポイントに定め」(乾真寛監督)、そこにボールが入った瞬間に激しいプレスを敢行し、大宮のボール回しを寸断する。攻撃では手数をかけず、どの位置であろうと奪った瞬間に大宮DFラインの背後へボールを送り、手近なFWが走り込む。守備では11対11で粘り強く守り、攻撃では少人数での局面に持ち込むねらいを徹底した。
ただ、そのねらいが100%ハマっていた時間はそう長くない。序盤こそ激しいプレスに戸惑い、ミスを連発してロングボールが多くなってしまった大宮だが、次第にペースを取り戻した。20分が経過するころには落ち着いてボールを回して福岡大を押し込み、前半の残り10分間は、福岡大は完全に自陣から出られなくなった。
前半に大宮が記録したシュートは8本で、そのうちGK藤嶋栄介のファインセーブで防いだものが3本。どれかが決まっていれば、順当に90分で試合は終わっていたかもしれない。福岡大も前半に5本のシュートを放ったが、そのうち4本は20分までのもので、この数字からも苦しい戦いぶりが分かる。

後半も大宮が圧倒的に押し込んだ。しかし余裕があるはずなのに、大宮はミスが多かった。相手のプレスによってミスが出ているのではなく、出し手と受け手でタイミングが違ったり、イメージするコースが違ったり、自らリズムを悪くした。それでも上田康太の直接FKで先制点を奪う辺りはプロの技術を見せつけたが、直後に福岡大のロングボールから、セカンドに走り込んだMF田中智大にたたきこまれた。

残り時間、さらには延長戦と、大宮は石原直樹やケガ明けの李 天秀らを次々に投入して攻めに攻めたが、圧倒的に押し込んでいる割には『入らなければおかしい』というレベルの決定機は少なかった。「クサビを入れてスピードアップができなくて、何となく外に持って行ってクロスか、シンプルに裏に蹴るだけになってしまった」と青木拓矢が振り返るが、敵将・乾監督も「大宮さんのボールはゆっくりしたビルドアップか、一気に飛ばして前に入ってくるかという2種類の繰り返しで、だんだん体がなじんていったのかもしれない」と、その言葉を裏付ける。大宮のシュートは後半と延長を通じて15本を数えたが、粘り強く食らいつき、最後の最後で体を張る福岡大の守備に足元を狂わされた。
そして何より、リズムを悪くするミスが最後まで減らなかった。最後のプレーは延長戦後半から投入された藤本主税の左CKで、大きくファーサイドに飛んだボールはだれにも触れることなく右タッチラインを割った。このときのやるせない空気が、その藤本のPK失敗によって決着してしまったことで、この試合を象徴するものとなってしまった。

大宮が拙かったにしても、福岡大の健闘と勝利を素直に称えたい。1回戦で2得点を挙げたエースFW石津大介と、スピードのあるFW山崎凌吾の2枚看板をケガで欠いていた。おそらくはその2人がいてもやり方は変わらなかっただろうが、押し込まれて前線に1人残ることになるFWを、「押し上げられなくなったときは田中が残って、田中に収めて後ろを上げさせろという指示で、僕が入ったときは全部裏へ抜け出せといわれていた」(清武功暉)と、展開や時間帯を見て、スピード、高さ、技術と選手の特徴によって使い分けた。得点の場面は、本来はDFで187cmと長身の大武峻をFWに入れ、ハイボールに競ったこぼれ球に技術のある田中が飛び込んだもの。もちろん渡邉大剛の言うように「アクシデントねらい」には違いないが、決して運頼みだったわけではない。3回戦ではJ2湘南が相手になるが、再びの下剋上に期待が高まる。

大宮の敗因を求めるとすれば、鈴木淳監督がいかに否定しようと、メンタルの一言に尽きる。試合開始、福岡大ボールのキックオフからいきなりロングボールで右SBの裏を突破され、清武にわき腹をえぐられた。さらにその1分後に、福岡大の大きなクリアが大宮DFラインの裏に飛び、ヘディングで戻したボールをまたしても清武にさらわれて大ピンチを招いた。学生を相手に、一番警戒するべきなのは彼らの勢いなのに、フワフワした緩い立ち上がりで、これ以上ないくらいに勢いに乗せてしまった。
さらには先制点を奪った直後の失点も、集中していればまず起こらないアクシデントによるもの。「アクシデントねらい」で、それを生かすべく策も練ってきた相手に、注文通りアクシデントを起こしてしまった。しかも、失点直後に同点に追いついたことで、さらに福岡大の勢いは増した。最後まで福岡大のハードワークが途切れなかったのは、大宮が彼らの勢いを削ぎ、断ち切ることができなかったからだ。

これで大宮は、文字通り『リーグ戦に集中』するしかない状況になった。残留争いが大詰めを迎える中でミッドウィークの試合を回避できる、それだけがこの試合の収穫で、得たものは小さく、失ったものは大きい。しかしすぐ土曜日には、同じく残留争いの浦和とのさいたまダービーがやってくる。ヤマザキナビスコカップを含めて、これで公式戦3連敗。とりわけショックの大きい敗戦からどう立て直すのか、チーム力が問われる。

以上

2011.10.11 Reported by 芥川和久
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