10月8日（土）第91回天皇杯 2回戦 仙台 vs ソニー（15:00KICK OFF/ユアスタ）
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★第91回天皇杯特集
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話は1998年に遡る。Jリーグが2部化する前、プロとアマチュアの混在したJFLが日本の2部リーグに相当した最後のシーズンに、同年がJFL昇格1年目だったソニー仙台FCと、翌年からベガルタ仙台と名前を変えることになるブランメル仙台が激突する「仙台ダービー」がおこなわれた。ブランメル仙台の2勝で終わったこの対戦は、両チームが翌年から違うカテゴリーでプレーすることになったためにしばらく実現しなかった。

それから12年。昨年9月5日に行われた天皇杯2回戦でこのカードが復活した。試合は1回戦から中1日でこの戦いを迎えた宮城県代表・ソニー仙台がJ1・ベガルタ仙台の猛攻に耐え、延長戦の末に桐田英樹の挙げたゴールを守りきって勝利。所謂「ジャイアント・キリング」を達成した。
あれから1年と1ヶ月。ユアテックスタジアム仙台を舞台に、再び2回戦で仙台の2チームが当たることとなった。ともに今季、ホームタウンが東日本大震災の影響で大きな被害を受け、そこから立ち直る長い道の途中にあるチーム同士。例年以上に大きな意味を持つ対決となった。

ソニー仙台は宮城県多賀城市を本拠とする社会人チーム。JFL開幕を控えた3月11日に被災し、会社や練習場、スタジアムのある多賀城市や七ヶ浜町も津波で被害を受けた。会社の復旧とともに自主的にチームで避難所を回り、「ホームタウンとのつながりを再確認できました」と田端秀規監督は振り返る。
ソニー仙台は5月16日に練習を再開したものの、JFLには後期日程からの参加となった。特別措置としてソニー仙台が勝点を加えるチャンスである「災害復興支援試合」も合わせて今シーズンの成績が決まることとなったが、スタートの遅れもあってなかなか初勝利は遠かった。しかし推薦で宮城県代表として出場が決まった9月4日の天皇杯1回戦で岩手県代表・グルージャ盛岡に勝利して今季公式戦初勝利を挙げると、JFLでも後期第9節で初勝利。第10節には負傷で戦列を離れていた瀬田貴仁主将も復帰。「今年もチャレンジャー精神を持って、相手に少しずつプレッシャーをかけられる戦いをしたい」と瀬田主将は意気込んでいる。

一方、ベガルタ仙台は昨年の雪辱に燃えている。J2優勝の勢いそのままに準決勝まで進んだ一昨年に国立競技場での試合を経験し、「またあの雰囲気を味わいたい」（手倉森誠監督）と意気込んだ前回大会は、ソニー仙台を相手に初戦敗退した。
2009年の快進撃の立役者である渡辺広大は、その国立競技場での準決勝のみ出場停止でピッチに立てなかった経験を持つ。そして昨年の悔しい瞬間をピッチの上で迎えていた。「今度こそ国立のピッチに、そして今度は元日のピッチに立ちたい」。彼を筆頭に、この仙台ダービーを勝ち抜いたうえで、チームは悲願のタイトルを目指している。梁勇基と曹秉局をそれぞれの代表で欠くが、「天皇杯の初戦は難しい戦いになる。でも僕たちは誰が出ても、J1の5位の力を見せたい」と松下年宏は意気込んでいる。

戦術的なポイントは、ソニー仙台の2列目とベガルタ仙台の両サイドバックの駆け引きにありそうだ。
1回戦でともに得点した麻生耕平・森原慎之佑を2列目に配置するかたちを今季のソニー仙台は基本としている。粘り強い守備から攻撃に転じると、この飛び出しとドリブルに優れる2列目と2トップがタイミングよく出入りすることで相手最終ラインにギャップを作る。これにパスの名手大瀧義史、前回ベガルタを沈めたスーパーサブ・桐田英樹、長身FW菅原太郎をうまく絡めた総力戦で、ソニー仙台は再びジャイアント・キリングを狙う。
ベガルタ仙台はJ1でも威力を発揮している集団カウンター攻撃を、この試合でも発揮できるか。相手の守備組織の上をゆく厚みを生み出すために、朴柱成、田村直也といったサイドバックが相手2列目の裏に起点を作って、ソニー仙台の守備ブロックを引きはがしたいところだ。
「この早い段階で潰し合いになるのは勿体ない。でもここで全力でプレーさせてもらえるという思いを大切にして戦い、勝ちたい」（手倉森監督）。特別な想いが詰まった、公式戦4度目の「仙台ダービー」が、10月8日の15時に幕を開ける。これは、ただの2回戦の1試合ではない。

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2011.10.07 Reported by 板垣晴朗