9月24日（土） 2011 J1リーグ戦 第27節
磐田 1 - 0 新潟　（19:03／ヤマハ／9,251人）
得点者：90'+1 荒田智之（磐田）
スカパー！再放送 Ch185 9/25（日）深01:00〜
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この日の主役は前田遼一でも、山崎亮平でもなかった。加入2年目の“苦労人”がついに大仕事をやってのける。

待望のＪ1初ゴールはドラマティックな形で決まった。90＋1分、CB藤田義明から前線のジウシーニョへロングボールが入る。それまで粘り強い守備を続けていた新潟・黒崎久志監督が「（酒井）高徳と（鈴木）大輔の間のところで、結果的にはクリアをはっきりしなかったことがシュートにつながってしまった」と悔やむワンプレーを見逃さず、こぼれ球を拾った前田遼一が右足でシュート。ポストに当たったボールにいち早く反応したのは終盤に投入されたばかりの背番号19だった――。

2008年から2年間在籍した水戸ではリーグ戦76試合に出場し、31ゴールをマーク。その実績を引っ提げて2010年、満を持して地元・静岡に凱旋。清水東高の先輩・高原直泰（現清水）がかつてつけたサックスブルーの背番号19に、新しく荒田智之という名前が刻まれた。前年に前田遼一、イ グノ（現G大阪）という2枚看板でゴールを量産した磐田への加入は、プロ3年目の大きなチャレンジだった。J2というタフな環境で実力を磨き続けてきた彼は整備された“クラブハウス”という施設にまずは驚き、シュート練習で枠を外した際には自らボールを拾いに行こうとしてスタッフに慌てて制される場面もあった。ただ、環境が変化しても気持ちを前面に押し出すプレースタイルが変わることはなかった。

チャンスは早い段階で訪れている。2010年、負傷欠場となった前田遼一に代わり、リーグ開幕戦に先発出場。勝利を飾ることはできなかったものの惜しいシュートを放つなど片鱗を見せた。4月中旬のヤマザキナビスコカップでは加入後初ゴールをマーク。J2からJ1に活躍の場を移したストライカーは順調にステップアップしていくかのように見えた。だが、その後は思うように出場機会を掴めず、終わってみればこの年のリーグ戦先発は開幕戦1試合のみ。持ち味の一つである相手の背後を突く直線的な動き出しだけでは通用しない部分もあった。守備のスターティングポジションとして相手のパスコースを細かく限定することも求められる磐田では攻撃ばかりに専念することもできない。チームメイトのレベルも格段に上がるJ1の舞台に、多少戸惑いもあったかもしれない。

今季も辛抱強くチャンスを待ち続ける状況に変わりはない。リーグ戦、カップ戦を含め今季先発したゲームはまだなく、今季加入した大卒ルーキー・金園英学に先を越される格好にもなり、ベンチ外となる試合も少なくなかった。それでも己に屈しない強いメンタリティーがこの男にはある。地道ながら自分自身のプレーを追求することを止めることはなかった。戦前、磐田・柳下正明監督は「（動きの）“幅”」という表現で彼の課題とする部分を説明していたが、試合後の監督会見でこう話していた通り、ポジティブな変化も芽生えていた。「2トップのところで張るポジションではなく少し下ったところでボールを受ける動きなどを覚え出しているし、くさびを受けた時のミスが少ない。そのあたり、非常によくなっていると思う」。

ゴールが決まるとチームメイト達が待ち構えるベンチに飛び込み、揉みくちゃにされた。試合後、興奮冷めやらぬ様子でゴールをこう振り返った。「みんな本当に90分しっかり守ってくれていたし、得点を取って勝利に貢献できればいいなと思っていた中で取れたゴールだったので本当に嬉しかった」。もっともスタジアムインタビューに向かう際には複数のチームメイトにしつこく“妨害”されていたが、ワイルドな風貌に似合わず、チーム屈指の“いじられ”キャラである。

週中に控えるヤマザキナビスコカップも含め、今後もふるいにかけられる立場に変わりはないだろう。この試合を欠場した金園もじきに負傷を癒し、状態を上げてくるはずだ。途中出場ながらこの試合で3本ものシュートを放ったジウシーニョの存在も忘れてはならない。激しいポジション争いこそチームを活性化させる。この日のゴールでこの競争に新たに名乗り出た背番号19だが、シーズン終盤戦を戦うチームには大歓迎だ。

以上

2011.09.25 Reported by 南間健治