9月24日（土） 2011 J2リーグ戦 第29節
岐阜 1 - 1 愛媛　（16:04／長良川／2,595人）
得点者：61' 東浩史（愛媛）、90'+4 佐藤洸一（岐阜）
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なかなか動きの出ない試合ではあったが、最後の最後に佐藤洸一が決め、岐阜は劇的な幕切れで勝点１を獲得した。その獲得の裏には岐阜のゲームプランと選手の頑張りが一体になった姿があった。

気になる愛媛のメンバーは、左サイドバックに東浩史を、右サイドハーフに小笠原侑生を起用した。
試合は岐阜の守備意識が高く、愛媛が攻めあぐねる様な展開に。ただ、これは「ボールを奪えなかった時、自分たちの守備の陣形をしっかり作って相手を誘いこもう」という木村孝洋監督のプランを忠実に遂行した形で、これが愛媛のパスミスを誘い、ゲームの流れを渡さなかったことに繋がった。
そんな中で単発ながら岐阜も決定機を作る。29分、橋本卓の体を張ったスライディングからボールを拾い右サイドに展開。右サイドでファールを誘い、田中秀人の決定的なヘディングシュートを引き出す。

後半、岐阜が前がかりのプレスをかける。これも「ボールを奪いに行こうと。ホームだから得点が欲しい。バランスを崩してまでボールを奪いにいくのではなく、ブロックをそのまま押し出す様な形で前からボールを奪うチャンスを増やしていく形で」と、指揮官のプランを遂行していたのだ。これがはまり、愛媛を押し込んでいった岐阜だったが、そこに落とし穴が待ち構える。
後半16分、愛媛右サイド、タッチライン際でボールを受けた大山俊輔が中へドリブルへ入ると岐阜守備陣はそれを奪えず、右に走り抜ける齋藤学をフリーにしてしまう。ここに送られ、対応をするも、クロスを上げられると、逆サイドから中央に入って来た東が豪快に決めて愛媛が先制する。
膠着状態の試合を動かす「工夫」や「アイデア」といった「何か」が、愛媛側、大山の岐阜守備陣を引きつけるドリブルで生まれ、スコアが動いた。

これに対し、どうしても得点が欲しかった岐阜は阪本一仁（後半21分）、李漢宰（後半29分）、佐藤（後半33分）と攻撃的カードを続々送り込み攻勢を強める。
その中で見落とせないのがディフェンスラインの強気の姿勢だ。ここで失点をすればほぼ試合が決まるという状況でも、ラインを高く保ち中盤のスペースを消すことに成功した。愛媛の前線が何度も走り抜ける動きをみせ、齋藤が巧みに裏を狙うもラインは下げなかった。
「前には行くんですけど、バランス良く前に行こうと試合前から言っていた」と試合後、田中は前節・徳島線の反省を生かそうとしたことを明かした。このラインキープが流れを引き寄せる要因の一つであったことは明らかだ。終了間際の後半44分にはエリア外ゴール正面で押谷祐樹が放ったシュートがバーを叩くなど、完全に岐阜が愛媛を押し込んだ。
そして追加タイムの4分が過ぎた時、ゴール前に高く上がったボールを拾おうとした野垣内俊が愛媛ディフェンスに倒され、土壇場のところでＰＫを獲得。これを佐藤が決めて、岐阜が最後の最後で同点に追い付き、貴重な勝点1を獲得した。

試合後、両監督とも内容の乏しさについて言及したが、岐阜の戦い方にその要因の一つはあるだろう。
「予想以上に来なかったという印象ですね」とは愛媛ボランチ・渡邊一仁のコメント。しっかりとブロックを築いた岐阜。中盤に入ってくるボールを三田光、橋本を中心に前線、サイドハーフと連動し、中盤で奪い速攻を仕掛けた。だが、これだけでは相手最終ラインにプレッシャーがかからない。
そこで後半、前に出る。「前からプレスをかけた時、相手のパスがほとんどいい形で供給されていなかった」と木村監督は判断し、「バランスを崩してまで取りに行くのではなく、ブロックをそのまま前に押し出して」攻勢に出た。

前半は相手の攻撃を受ける守備ブロック、後半は相手を追い込む守備ブロック。岐阜らしいやり方でゲームを組み立てたということである。流れの中では愛媛のアタッキングエリアでのワンプレーで失点はしたが、プランの遂行では岐阜のゲームだったと言っていいだろう。だからこそ最後、追いついたＰＫは非常に意味のあるものだったのではないだろうか。

まだまだ、球際の厳しさや攻守の切り替え、チャレンジ＆カバーといった意識の部分でのびしろはある様にみえた。それでもチーム一丸になっての勝点獲得。これからの頑張りに期待を持たせてくれる試合だった。

以上

2011.09.25 Reported by 武田賢宗