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あまりにもショッキングな事件が起きた。21日に直撃した台風のため、那珂川が氾濫し、河川敷にあった水戸の練習場「ホーリーピッチ」は水没してしまったのだ。震災に続き、台風の被害に遭うという非常事態。クラブは大打撃を受けてしまった。
本来ならば、試合どころではない状態だ。しかし、選手たちは不安を払しょくし、今週の試合に向けてトレーニングに打ち込んだ。23日はロッカールームもシャワーもない練習場でのトレーニングであった。それでも、選手たちは嫌な顔ひとつせずに8試合ぶりの勝利に向けて、全力を注いだ。「全部受け止めて、跳ね返してやる」。柱谷哲二監督は力強く語った。いかなる試練も乗り越えて、強くなる――強い意気込みがチームから溢れている。今節の岡山戦、水戸にとってどうしても勝たないといけない一戦なのである。
そのためにも2つの課題を克服したい。1つは「カウンターの意識」だ。これまでの水戸はポゼッションを重視したサッカーを繰り広げてきた。しかし、その分、「足元だけでやろうとすることが多すぎる」（柱谷監督）という弊害が生じてしまった。ボールを奪う位置も低く、後ろから組み立てて攻撃をすることで、相手に守備を固められてしまう。いくらうまくボールを回せても、それでは相手の守備を崩すのは容易ではない。
「選手たちにはカウンターが最優先だと話をしてきた。今節に向けて、もう一度原点を確認したい」と柱谷監督は語る。カウンターと言っても、引いて守って少人数で攻めるわけではない。できるだけ高い位置でボールを奪って、そして、2列目の選手が飛び出していき、相手の守備が整う前に攻めきることが狙いである。「カウンターとポゼッションをうまく判断しながら使い分けてもらいたい」（柱谷監督）。
そして、もう1つは、相手のターゲットマンをしっかり抑えることである。前々節大分戦では森島康仁、前節湘南戦は田原豊に前線で起点を作られ、苦しい展開を招いてしまった。「相手のトップの選手を潰すことができず、全体の差が大きくなってしまった」と柱谷監督は振り返る。今節の相手の岡山にはチアゴというリーグ屈指のターゲットマンが存在する。彼を抑えることができるかが勝負の分かれ目となるだろう。
キーマンは加藤広樹だ。191cmという長身を生かした空中戦を武器としている。しかし、ここ2戦では、彼の持ち味を出し切れているとは言い難い。「自分にとって納得できない試合が続いています。前節もやられたい放題やられてしまった。だから、今節は絶対に相手にやらせない。相手のターゲットをしっかり潰して、守備のリズムを作って、主導権を握りたい」と強い口調で語った。チアゴと加藤のエアバトルは今節の最大の注目ポイントとなるだろう。そこで優位に立ったチームが勝利に近づくこととなる。
岡山としては、チアゴを最大限に生かさなければならない。岡山がいい形で攻めるときは大体がチアゴを経由しており、彼を生かすことが勝利への近道である。大切なのは、どうやってチアゴにボールを入れるかだろう。ストヤノフ、金民均といったパスの出し手が多く存在しており、彼らがボールを持った時にいかにパスコースを作れるかが重要となってくる。チアゴ以外にもボールを引き出す動きを見せることで、チアゴへのマークも分散するはず。チーム全体が連動した攻撃を見せて水戸の守備に穴を開けたいところだ。
両チームとも下位に低迷はしているものの、決して下を向くような戦いをしてきたわけではない。むしろ、手ごたえの方が大きいだろう。今はこれまで培ってきたものを、いかに結果につなげるかという段階にある。リーグも終盤を迎え、成長してきた証を結果で示さなければならない。長期ビジョンでチームを強化しているチーム同士の対戦。この1勝は、未来への希望となることだろう。果たしてどちらのチームが未来を明るく照らすことができるか。輝く明日を手にするための激戦が繰り広げられる。
以上
2011.09.24 Reported by 佐藤拓也
