9月14日(水) 2011 ヤマザキナビスコカップ
清水 2 - 1 新潟 (19:04/アウスタ/6,939人)
得点者:6' 本間勲(新潟)、16' 大前元紀(清水)、74' アレックス(清水)
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試合の流れが、非常にわかりやすく変わっていったゲームだった。清水がその変わり目を早いうちに起こし、その後は流れを手放すことなく戦い抜いたことが、亡き眞田雅則GKコーチに捧げる逆転勝利へとつながった。
まず、立ち上がりを制したのは新潟だった。アウェイながらピッチの幅を有効に使ってパスをつなぎ、「立ち上がりはスムーズに自分たちがポゼッションできて、そこからラインの背後を突いて突破するというところができていた」と黒崎久志監督が振り返ったように、主導権を握って清水ゴールに迫る場面を作っていた。
一方、清水のほうは、全体的に動きが悪く、パスもつながらず、球際でのプレッシャーも効かないため、新潟にボールを支配され、ズルズルとラインが下がっていくばかり。ゴトビ監督の言う「黙祷して眞田さんのことを思い出し、プレーに集中することが難しかったと思う」という原因がすべてではないだろうが、試合への入り方に失敗したことに間違いなかった。
そして開始6分、新潟がポゼッションして押し込む中、DFの千葉和彦の縦パスをブルーノ・ロペスがワンタッチのヒールパスで裏に流し、2列目からボランチの本間勲が飛び出して冷静なループシュートで先制点を決めた。
新潟にとっては早い時間にアウェイゴールを奪う最高のスタート。逆に清水にとっては、ゲームプランが大きく狂ってしまう最悪のスタート。しかも、精神的な支えである小野伸二と高原直泰が不在で、先発の平均年齢が23.36歳という若いメンバーで戦うゲーム。これまでの清水であれば、焦りが出てさらにリズムを崩し、悪循環に陥ってしまいかねない状況だった。
しかし、この試合では逆に失点によって一気に目を覚まし、自分たちのサッカーを取り戻すことができた。そこで大きな役割を果たしたのが、久しぶりにコンビを組んだ岩下敬輔と平岡康裕のセンターバック2人。強気にDFラインを押し上げて中盤をコンパクトに保ち、前線や中盤に前からの守備を徹底させた。プロ初先発の鍋田亜人夢を中央に置く平均年齢20.33歳の3トップも、精力的に前からプレスに行けるようになり、中盤の3人もそれに追従し、とくに山本真希の運動量は光っていた。
これで新潟のパス回しにプレッシャーをかけ、高い位置で奪う回数を増やしたことによって、逆に新潟はリズムを失い始める。「ボランチやセンターバックのところで横パスが入ったときに相手が狙ってプレッシャーをかけてきた部分があった。そこでボールを失ってカウンターを受ける場面が何回かあって、そのあたりからリズムを崩してしまった」と黒崎監督も試合後に語った。
こうして、まず守備で本来の形を作った清水は、攻撃でも冷静かつ辛抱強くパスを回し、徐々にリズムを良くしていく。その意味でも岩下と平岡のコンビは大きく貢献した。けっして安易にロングボールを使うことなく、高い位置を保ちながらテンポ良くボールを動かし、縦パスを通すシーンを増やしていった。GKの山本海人も、バックパスを大きく蹴り返す場面がほとんどなく、確実に味方につないでいく。アンカーのカルフィン・ヨン ア ピンもシンプルにボールをさばいていったことで、清水がポゼッションする時間は着実に増えていった。
そうした流れの変化が感じられ始めた16分、太田宏介が裏に飛び出して左サイドで起点を作り、戻したボールから高木俊幸がアーリークロス。そこにファーサイドから走り込んだ大前元紀が、ここしかないというコースに強いヘッドを叩き込み、GKの手を弾いてゴールネットを揺らした。
大前が彼らしい高い決定力を発揮した同点ゴールにより、清水はさらに活気づき、流れの変化は決定的なものになった。ビルドアップの面でも大きな役割を果たす小野と高原を欠く中、若いチームが誰に頼ることもなく自力で流れを取り戻していけたことは、今後に向けて大きな自信となるだろう。
「後ろの(パス回しの)テンポが大事だというのを感じました。後ろで良いテンポで回せていたから、攻撃にも良い形でもつなげられたと思うし、それができれば逆転もできるということを証明できたと思います」と、大きな働きを見せた平岡も振り返る。それを立ち上がりから徹底し、毎試合継続していくことが、今後の清水には求められる。
後半に入っても、清水がペースを握り続けた。前半で手応えをつかんだ鍋田が、前線でボールを収めて起点になる場面を増やし、11分の大前のシュートや19分のCKからの岩下のシュートなど、決定機の数でも清水が上回った。
さらに後半17分からアウスタでの初出場を果たしたフレドリック・ユングベリは、前回の磐田戦よりも格段に動きが良くなり、ボールに絡む回数も増えた。ドリブルのキレも増し、そこから後半29分には鮮やかなラストパスで、アレックスの勝ち越しゴールをお膳立て。初出場から30分ちょっとのプレー時間で、清水での初アシストを記録した。
また、終盤に疲れが出てきた中、ユングベリに預ければボールが落ち着くというのは、周囲の選手たちの大きな助けになっただろう。最後は新潟に攻め込まれる場面もあったが、そうしたユングベリ効果もあってカウンターはうまく機能し、最後まで試合のコントロールを失うことないまま、清水が第1戦を2-1で制した。
一方、アウスタでは2試合連続の逆転負けを喫した新潟のほうは、一度失ったリズムを自分たちの力で取り戻すことができなかったのが最大の課題。「つなぐのか蹴るのかという自分たちの戦い方がはっきりしなかった部分があった」(千葉和彦)という面もあり、長いボールを使ったとしても、前線の動きと合わないシーンも目立った。ただ、次に向けて課題が明確であるため、修正も可能なはずだ。
清水としても、2-1のスコアでは決定的なアドバンテージとは言えない。新潟としては、自信のあるホームゲームで無失点で勝てば文句なく準々決勝に進むことができる。したがって、2週間後のアウェイゲームに向けて清水がやるべきことは、この試合の15分以降で見せたサッカーの完成度を、より高めていくことに尽きる。
以上
2011.09.15 Reported by 前島芳雄
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