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【J1:第25節 磐田 vs 清水】清水側プレビュー:さまざまな思いや期待が重なる静岡ダービー。清水の選手たちは、深い悲しみを強いエネルギーに変える強さを見せられるか(11.09.09)

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9月10日(土)J1 第25節 磐田 vs 清水(19:00KICK OFF/エコパチケット販売はこちらリアルタイムスコアボード
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まずはこの場を借りて、今週の火曜日(6日)に急逝された清水のGKコーチ、眞田雅則氏のご逝去を悼み、謹んでご冥福をお祈りいたします。

突然の悲報は、静岡ダービーに向けてトレーニングを続けていたチームにも、大きな衝撃をもたらした。そのため7日(水)の練習は、急きょランニングとミーティングだけのメニューに切り替えられ、深いショックと悲しみを抱えた選手たちは、何とか気持ちを落ち着かせるのが精一杯という状況だった。

しかし、「僕らはプロとしてピッチの上でやるべきことをしっかりやるだけだし、眞田さんも天国でチームを見守ってくれていると思うので、とにかく次のダービーに集中して、明日から前を向いてやっていきたいと思います」とキャプテンの小野伸二が語ったように、選手たちは必死に気持ちの切り換えを図った。

そして翌日の木曜日からは、サッカーに集中することで悲しみを忘れようとする気持ちもあるのか、「選手たちは高いモチベーション、強いエネルギー、ポジティブさを見せ、素晴らしい雰囲気で練習ができた」(ゴトビ監督)という形でダービーに備えている。練習自体は非公開だが、ピッチからかなり離れた所まで大きな声が聞こえてきたことからも、気持ちの入った練習をしていることがうかがえる。そのため、試合への集中力やチームの団結力という面での不安は少ないだろう。

清水は現在、首位のG大阪と勝点17差の8位。だが、トップ4との直接対決もすべて残っており、まだ優勝はあきらめていないし、ACL出場という大きな目標もある。その意味でも、残り10試合の初戦である今回の静岡ダービーは、何としても勝点3がほしいゲームだ。エコパで戦うということもあり、アウェイという意識はあまりなく、眞田コーチを思う気持ちは選手たちと変わらないサポーターも、ホームのような雰囲気を作ってくれることだろう。

戦力面では、左足裏を痛めたエース・高原直泰の回復が予想以上に長引き、センターバックの岩下敬輔が警告累積で出場停止なのは痛いところ。しかし逆に、非常に頼もしい新戦力も加わった。
スウェーデン代表で長く活躍し、イングランドの名門アーセナルが歴史に残る無敗優勝(03-04シーズン)を成し遂げた時代の中心選手であったフレドリック ユングベリ。日本での認識以上にヨーロッパでの知名度は非常に高く、カルバン・クラインの下着モデルを務めるなどセクシーさでも人気の選手だ。
もちろん、その実力も世界のトップクラス。走るスピードだけでなく、判断の速さや切れ味の鋭さも含めたプレーのスピードが非常に速く、スピードに乗った中でも広い視野と正確な技術を発揮することができる。それは日本人選手が苦手とする部分でもあり、Jリーグではまさに別格のレベル。34歳になって全盛時ほどのランニングスピードや切れはないかもしれないが、清水での練習(まだコンディションは不十分な段階)を見ていても、判断の速さや前を向くうまさは非常に目立っている。
ゴトビ監督としても、彼をサイドアタッカーとして使うよりも、中央に置いてプレーメーカーの役割を任せたいと考えているようで、本人も「(チームとして)ボールをしっかりと動かし、落ち着きを持ってプレーできるようにしていきたい」と語っている。その意味でも、彼のキープ力、視野の広さ、パスの正確さなどは存分に生かされるだろう。
周囲の選手にとっても「(ユングベリは)キープ力があってタメが作れるし、前を向けるから、相手が集まってサイドが空きやすくなると思うし、練習でもいつもより裏にボールが出てくることが多くなって、僕らもやりやすい」(高木俊幸)と、ユングベリが入ることによる効果は大きい。ゴトビ監督が目指す、自分たちがボールを保持しながらスピーディーに攻めるサッカーには、ピッタリ当てはまる存在と言えそうだ。

そのように期待は非常に高いユングベリだが、長い期間実戦から遠ざかっており、コンディションもこれから上げていくという段階なので、しばらくは90分間のフル出場は難しいだろう。しかし、ゴトビ監督は明日のベンチ入りを明言しており、「試合に全部でなくても、彼は違いを出せる」と語っている。先発の可能性もゼロではなく、彼がピッチに登場したとき、清水の戦いにどんな変化が表われるのか、大いに楽しみにしたい。

また高原の代役は、永井雄一郎か木曜夜にオーストラリア代表から戻ったばかりのアレックスということになりそうだが、磐田は守るときにはしっかりとブロックを固めて守ってくるので、単調な攻撃ではなかなか攻め崩すのは難しい。単純に外から攻めるだけでなく、一度中を経由して外を使ったり、サイドチェンジを有効に使ったりという工夫や、ラストパスやフィニッシュの精度という部分は、以前からのチームの課題でもあるので、そのあたりをどれだけ改善できるかという部分にも注目したい。

守備に関しては、磐田の武器である前田遼一と山崎亮平という強力2トップが久しぶりに揃い、2列目にも西紀寛と山田大記という恐い存在が並ぶ可能性が高いため、彼らをどう抑えるかが大きなテーマ。そのためにゴトビ監督は「守備の組織を作る速さが重要。それができれば高い位置からプレッシャーをかけることができる。また磐田はロングボールをFWに入れてくることも多いので、そのセカンドボールを奪うことがゲームをコントロールするためのカギとなる」と語る。
とくに前田は競り合いに非常に強く、キープ力も抜群なので、その1対1で負けないことと、セカンドボールを確実に拾って2列目の選手につけいるスキを与えないことは欠かせない。逆にそこで後れをとれば、DFラインを下げざるをえなくなり、さらにセカンドボールを拾われて、押し込まれる展開になりかねない。
そこは、どちらが主導権を握れるかを分ける重要なポイントになるので、試合展開を見るうえでも大きな見どころとなるだろう。

さまざまな状況や思いが幾重にも重なる今回の静岡ダービー。ただ、清水にとっては絶対に勝たなければいけない試合であることは間違いない。「選手たちは今後の試合を眞田さんの家族に捧げたいと思っています」(ゴトビ監督)。深い悲しみを強いエネルギーに変換する心の強さを、選手たちがピッチ上で見せてくれることを期待したい。

以上

2011.09.09 Reported by 前島芳雄
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