8月28日(日) 2011 J1リーグ戦 第24節
名古屋 4 - 1 甲府 (19:03/豊田ス/19,061人)
得点者:9' ハーフナーマイク(甲府)、32' 玉田圭司(名古屋)、34' ケネディ(名古屋)、45'+5 藤本淳吾(名古屋)、69' 藤本淳吾(名古屋)
スカパー!再放送 Ch308 8/29(月)後09:00〜
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勝敗を分けたのは技術でも体力でもない、精神力である。先制されても絶対に勝つという気持ちをプレーに表現してきた名古屋と、同点にされたことで気落ちしてしまった甲府。ストイコビッチ監督の口癖である“Never Give Up For the Win”の精神を発揮した名古屋が、前節に続きまたも逆転勝利を収めた。
試合後、甲府側の取材をする報道陣が次々と口にしたように、前半30分までは甲府が主導権を握ったゲームだった。立ち上がりの1分に名古屋は藤本淳吾がバー直撃の強烈なミドルシュートを放ち先制パンチを見舞ったが、その後は特に中盤がトラップミスやパスミスを繰り返しリズムを崩していく。6分には名古屋MFのトラップミスからボールを奪った片桐淳至のスルーパスにハーフナー マイクが走り込みGKを1対1のチャンスを得るも逸機。しかし「今日は立ち上がりからすごく(DFラインの)裏が取れた」と片桐が言うように、9分、その隙を突いて甲府が先制に成功する。名古屋MFがクリアボールのトラップを大きくしたところをパウリーニョがかっさらい、すかさず山本英臣がDFライン裏へロビングパスを送る。抜け出したハーフナーと柏好文の2選手がオンサイドというビッグチャンスはハーフナーが冷静に流し込み、開始早々にアウェイで貴重な先制点を手に入れた。
ここ数試合の悪い流れとして誰もが警戒していた先制点を与えてしまった名古屋だったが、選手たちは冷静だった。焦らず、着実にパスを回し、サイドに展開する。「徐々にリズムが良くなってきて、パスが回るようになってきた」(藤本)のは前半30分を回った頃だ。ここで試合の流れを大きく変えるスーパーゴールが飛び出した。32分、小川佳純から右サイドに展開されたボールを田中隼磨が中央に折り返す。誰かに合わせたというよりはスペースに流したクロスに飛び込んだのは玉田圭司だ。ジャンプして左足を合わせ、難しい態勢からゴール右上に叩き込んだ。甲府GK荻晃太が少しも反応できない鋭い弾道は、「すごかったね」と自画自賛の一撃。これで追い上げムードに火が点いた名古屋が、さらなる猛攻を展開した。
名古屋の2点目が生まれたのは同点ゴールからわずか2分後の34分。形は違うが、1点目と同様に実に美しいゴールだった。中盤でルーズボールを拾った中村直志がまずは後方の藤本へ、藤本が前方のケネディへ送ると、ダイレクトで中村へ返す。以降、ダイレクトで中村(後)、ブルザノビッチ(前)、中村(後)、玉田(前)、中村(後)と小刻みな前後のパス交換で右サイドに流れていき、深い位置にオーバーラップしていた田中隼へスルーパス。田中隼からパスを受けたブルザノビッチがDFの股抜きパスを小川に送り、落としたボールを再びブルザノビッチがシュートに持ち込むと、GKがファンブルしたところをケネディが抜け目なく押し込み追加点。小刻みなダイレクトパス6本を経由しての美しい流れには、甲府の守備陣もただ後手を踏むばかりだった。
この2失点で「頭が下がってしまった」(甲府・荻晃太)甲府は守勢に回り、名古屋の圧倒的な支配は勢いを増した。前半アディショナルタイムにはDFダニエルがケネディとのポジション争いの中で小競り合いになり、頭突きでの報復で一発退場。このファウルで得たFKを藤本が決め、甲府は前半だけで1人少ない状態での2点ビハインドという厳しい状況に追い込まれた。後半はまさに一方的な展開で、名古屋が思うようにパスを回し、攻め、守った。後半立ち上がりは甲府にもカウンターを返す力が残っていたが、それも15分ほどでガス欠。名古屋は無理をせずにチャンスが作れる時だけ前線に人数をかける試合巧者ぶりでピッチを掌握し、69分にはカウンターに出た甲府の裏を突いて藤本がこの日2点目。スコアを4−1とすると、終盤には負傷欠場が続いていた金崎夢生をテスト起用する余裕まで見せ、危なげなく試合を終わらせた。
両指揮官のコメントは実に対照的で、試合内容とリンクしている。名古屋のストイコビッチ監督は「我々のメンタリティ、最後まであきらめない強さがあった。最後まで信じて勝つという気持ちが出ているのでこのような結果になっている。これが我々のチームが持っている特色だ」と胸を張り、一方で甲府の佐久間悟監督は「点を取られた後に自分たちの力で取り返していくメンタリティーだけは持ってもらいたい」と、チームに苦言を呈した。一言でいえば勝利への執念があるかないか。それを強く持っていた名古屋は逆転に成功し、乏しかった甲府は先制する優位な展開をものにできなかった。ここ10試合で5度の逆転勝利を記録している名古屋は、こと“勝ちたい”という気持ちにおいては並外れている。
課題があるとすれば、逆転イコール先制されているということ。逆転できる強さは本物だが、それには相応のエネルギーを使う。先制してリードを保ち、追加点を狙う試合展開に比べれば、疲労度は雲泥の差。逆転できる強みよりも、着実に勝点3を取る展開に常に持ち込みたいところだ。次節の相手は上位陣との直接対決となる柏。ホームでの対戦ではスコアレスのドローに終えており、課題克服を確かめるには最高の相手といえる。
「面白くなってきたと思う。(今後)レイソル戦もマリノス戦もガンバ戦もある。どのチームがベストなのか様子を見たい」
ストイコビッチ監督は不敵なセリフを残し、家族のためにフランスへと一時帰国の途についた。闘将の自信はチームの自信でもある。ようやく過酷日程から解放された名古屋の選手たちも気分よく中断期に入った。調子を上げてきたチームは4日間の完全オフの後、連覇に向けたラスト10試合へスパートをかける。
以上
2011.08.29 Reported by 今井雄一朗
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