8月27日(土) 2011 J1リーグ戦 第24節
大宮 2 - 0 磐田 (19:03/NACK/10,013人)
得点者:72' 東慶悟(大宮)、76' 渡邉大剛(大宮)
スカパー!再放送 Ch308 8/29(月)後00:00〜
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長いトンネルをようやく抜けた。12試合目にして、大宮はホーム初勝利。タイムアップの瞬間、2点目を挙げて試合を決定づけた渡邉大剛が仰向けにピッチに倒れ込む。顔を抑えていたので泣いているのかと思ったが、助け起こした村上和弘と抱き合う顔はホッとした笑顔だった。だれもが笑顔だったが、うれしさ半分、重圧から解放された安堵半分に見えた。会見場に現れた鈴木淳監督ももちろん笑顔だったが、指揮官はさらに安堵が強めで、「守備的なところが良かった」と、複雑な表情を見せた。
この日の大宮は、いつもと違う布陣で臨んだ。李 天秀を右太もも裏肉離れで欠いたことと「駒野をどう抑えるかがポイント」(鈴木監督)として、左MFに渡邉、左SBに金 英權を配した。
「守備のできる選手が入ったことで、前半は今までのゲームに比べるとポゼッションできなかった」と鈴木監督が振り返るように、前半は磐田のペースで進んだ。FW山崎亮平にDFラインとボランチの間で受けられ、前を向かれる場面が目立った。目的通り駒野のサイドは抑えていたが、一方で「フリーにさせたら危ない選手」(上田康太)である山田大記のいる左サイドでは、左SBの那須大亮やボランチの小林裕紀らもからんで攻め込まれた。
大宮は受身に回っているぶん、思うようにボールがつなげず、つなぎでのミスでたびたびピンチを招いた。久々のスタメンとなった渡邉などは、気の短い監督であれば前半で交代させられてもおかしくないミスを連発した。勢い、ロングボールでの攻めが多くなり、ラファエルを起点にチャンスを作ったが単発に終わった。
しかし後半に入ると磐田の運動量が落ち、大宮がポゼッションを高め、ボランチやサイドバックをからめた分厚い攻めができるようになったが、相変わらずミスが多くてリズムがつかみきれず、一進一退の攻防が続いた。
試合の分岐点となったのは、64分と65分の選手交代だった。磐田が山崎に代えて山本脩斗を投入し、続いて大宮がピンパォンに代えて石原直樹を投入する。前線でボールを引き出していた山崎がいなくなったことで大宮は楽になった。一方、大宮は逆に石原が前線でボールを引き出して攻撃をさらに活性化させ、ラファエルがサイドに開いて起点となり、東や渡邉がペナルティエリア内でプレーする場面が増えていった。
圧倒的に押し込まれ、磐田は完全に浮足立った。たまらず山本康裕に代えてジウシーニョをFWに入れ、山本脩斗を左MFに移動させるが、むしろそれが混乱を招いた感もある。大宮の先制点はその2分後。山本脩斗が寄せきれず上田康太がフリーでペナルティエリア内に正確なロングボールを送り、ラファエルの落としを東が落ち着いたシュートフェイントから磐田ゴールに突き刺した。
これまでは先制したあとの意思統一できず、ラインが下がり間延びして失点をくり返していた大宮だが、この日は「みんなで『もう一回(前から)行こう』とまとまっていた」と深谷友基が語るように、アグレッシブな姿勢を崩さなかった。そして先制から4分後、前線で体を張ってキープした石原からパスを受けた渡邉が、数々のミスを帳消しにして余りある追加点を挙げる。2点差としたことで、アグレッシブさの中にも余裕が生まれた。磐田は直後に那須に代えて故障明けの西 紀寛を右サイドに投入し、駒野とコンビでの崩しに託すが、大宮も疲れの見える金に代えて村上を入れ、石原まで戻ってきて必死に守り、最後まで磐田にチャンスらしいチャンスを与えなかった。
ようやくホーム初勝利を手にした大宮。勝てないことそれ自体がメンタルに左右して終盤のゲーム運びをおかしくしていただけに、この勝利によって得たものは勝点3以上に大きい。この成功体験が自信となり、リードしてからも今日のような戦いができれば、さらに勝星を重ねていけるだろう。
とはいえその複雑な表情が示すように、少なくとも指揮官は今日の内容に満足はしていない。起用した選手が守備的だったことは織り込み済みでも、思った以上に戦い方まで守備的になってしまったことは、常に長い目でチームの強化を考える鈴木監督にとって不満だろう。次節はアウェイのガンバ大阪戦、中盤の底で攻撃を操る上田は累積警告で出場できない。今日をベースに守備的に行くのか、それともあくまで長い目で攻撃サッカーを貫くか、采配に注目だ。
一方の磐田は、敗れたとはいえ65分までの内容は悪くなく、試合を通じてペナルティエリア内での場面も多く作っていた。もし前田遼一がピッチに立っていれば、1点や2点はたたき込んでいてもおかしくなかっただろう。その前田が次節の清水戦で復帰する見通しなのは心強く、静岡ダービーを盛り上げてくれるに違いない。
以上
2011.08.28 Reported by 芥川和久
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