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山形の理想は前節で大宮を破り、残留ボーダーへの勝点を5差に縮めてホームに戻ってくることだった。しかし、結果は1-1のドロー。15位・大宮までの8差は小さいものではない。直接叩いて浮上を狙える対戦も多くはない。ただ、残り12試合の早い時期に勝ち星を多くつかむことで、状況を変えることはまだ可能だ。一戦必勝を掲げて勝点を積み重ね、残留争いのライバルたちの背後に忍び込む。
前節は大宮のパスワークに翻弄された部分はあるが、前半は自陣で守備に追われる展開が続いた。73分に先制を許したあとは慌てることなく、攻撃の積極性を発揮して追いついたが、「勝てた試合だった」と悔しさをあらわにしたのは石川竜也。「勝たないといけない試合が多いので、そこは『守備から』では勝てない。点を取られてからでは遅い。積極的な攻撃を前半からやらなきゃいけない」と、先に失点する試合が続く現状に危機感を滲ませた。「もう、取れるぞというところにきていてる」小林伸二監督も攻撃への手ごたえを口にする。「大宮戦はピッチが濡れていて速かったからミスが多かったと思うけれど、もうちょっと自信を持って、怖がらずに回せたら変わるんだろうと思う」。リスク管理なしに前に出るのはただの無謀だが、成長してきた攻撃力を発揮する場面はもっとあるはず。長谷川悠が前節で負傷し、今節の出場は微妙だが、攻守の切り換えで上回ることと、相手のプレッシャーにひるむことなくプレーすることがチャンスを大きなものにする。
無得点、12失点の悪夢の3連敗をアウェイで喫した清水は、アウスタに戻った前々節・大宮戦では後半に一気の3得点で3-0と勝利。そして前節、幸先よく8分に先制して前半を折り返したが、PKで同点に追いつかれると、その1分後にも早いリスタートで守備が整わないままクロスから失点。突如として追いかける展開になった。2点目は高木俊幸、最後は高原直泰のゴールで追いついたものの、先制し、前半を1-0で折り返したゲームとしては悔いが残るもの。アフシン ゴトビ監督も「結果に関しては非常にガッカリしていますし、本当に勝ちたい試合でした」と落胆を隠さなかった。3失点はすべて途中出場の播戸竜二のゴールだったが、この失点シーン以外にも、クロスボールをディフェンスラインの背後に入れられ、相手に飛び込まれるシーンが散見されている。サイドバックが高い位置でプレーするだけにサイドを突かれるケースは多いが、センターバックが戻りながらの対応や、ディフェンスラインの統制が取れていない状態で受けるクロスをどう処理するのかは、安定的に勝点を積み上げていくには課題となる。前節は加入したてのカルフィン ヨン ア ピンをアンカーに起用したが、今節は村松大輔も出場停止から戻ってくる。
一方、ホームでの2試合はどちらも3得点しているが、気を吐いているのが小野伸二だ。ボールを扱うテクニックやゲームをコントロールする能力は言うまでもないが、ここ2試合はクロスに対していい状態でゴール前に入り得点を挙げている。大宮戦では相手ディフェンダーの手前にポジショニングして太田宏介のクロスを迎え、前節は大前元紀の右クロスに対し、高原の後方に飛び込み頭でねじ込んだ。「先制点というのが、このチームのキーポイントだと思っているし、そういう意味でなるべくゴール前に入っていくことで可能性を見出せると思っている」と、チャンスの場面で確実にゴール前に入っているのは好調の証だ。
清水はウィングが中に入ってサイドバックが出てくるケースはあるものの、ポジションの流動性がそれほど激しくはない。山形にとって、マークの把握などは難しくないが、清水はボールを握れる選手やドリブルを得意とする選手が多いだけに、前節では小野と枝村匠馬が入ったシャドーの飛び出しに確実に付くことも含め、1対1の対応は大きなカギを握る。奪ったあとは1ボランチの脇やサイドバックの裏など狙えるスペースはあるが、動きだしを早くすることとイージーなミスを少なくすることで多くのチャンスをつくりたい。
過去のリーグ戦での対戦は清水の5戦5勝。前回の対戦ではアディショナルタイムのPKで明暗が分かれているだけに、山形にとってはその悔しさをぶつけたい試合でもある。「多少はリスクを冒して裏へ飛び出したり、走って動かないと何も状況が変わらない」(下村東美)。追い込まれた状況には違いないが、攻めて勝利をつかみ取ろうとする熱は高まる一方だ。
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2011.08.23 Reported by 佐藤円
