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“ナオキ”コールがこだまする日産スタジアムで背番号1は何を感じたのだろう――。
小雨の降るピッチでサックスブルーの守護神は奮闘していた。序盤から守勢に回ることを余儀なくされ、中村俊輔の高精度のCKも何本も飛んできた。0-0のまま終盤まで持ち込んだが、ぎりぎりのところで守っていることは明らかだった。1つのゴールで一気に“決壊”する――。そんな展開だった。だからこそ後半のPKストップの持つ意味は大きかった。緊張感ある“1対1”は川口能活のタイミングで流れていたのかもしれない。中村俊のシュートに反応し、ボールを弾き出すビッグセーブはチームメイトを強く鼓舞した。だが、再三に渡る好守もチームの勝利につながってこそ。「PKを止めても、勝たなければ意味がない」。試合後の表情はいつも以上に険しいものがあった。様々な思いが交錯したのかもしれない。試合終了のホイッスルが鳴ると同時に、大きな身振りで悔しさを露わにした。
目の前の一戦ばかりを見て一喜一憂しているわけではない。「次のステップに進むための壁にぶつかっていると思う」。前々節の名古屋戦に敗れた際にはそう語っていたが、このチームの可能性を強く感じているからこそ、自ずと沸き上がる思いもあった。それゆえに前節のミックスゾーンでは「本気で優勝を狙うのではあれば最低でも引き分け、勝点1を取らなくてはいけない」と厳しい口調で語っていた。今季、磐田は勝ち続けることができずにいるが、負けが込んだこともない（連勝は2連勝が1度、連敗は2連敗が2度）。引き分けを挟みながら、白星と黒星を交互に繰り返してきたチームはまさに“発展途上”。ここからの踏ん張りがこの先のチーム作りの糧となる。
「“マツ”の分までサッカー選手を続けたい」。
悲しみに包まれた“あの日”を境に、プロフットボーラーとして歩み続ける理由がまた一つ増えた。“未完成”のチームの中で、最も豊富な経験を持つプレーヤーであることは間違いない。最後尾に立つ背番号1は今節もサックスブルーの鍵を握ることになるだろう。
今節は累積警告によりジウシーニョが出場停止となり、前線に山崎亮平、右MFには出場停止明けの山田大記が入ることが予想される。前節からメンバーを変更することになるが、まずは前節抑制されたチームカラーをホーム・ヤマハスタジアムで発揮することだ。それこそが勝利の絶対条件となる。
2戦連続のアウェイゲームとなる仙台もまた勢いがある。前節、名古屋との一戦に僅差で勝利。昨季王者の“行進”を止めると同時に、クラブ史上初めて名古屋に勝利したことは大きな追い風となっている。前節の戦いを例に挙がるまでもなく、彼らは”堅守速攻”に特化したチームである。J1最少失点を誇るディフェンスラインはケネディ、玉田圭司らを要する名古屋攻撃陣をもシャットアウト。序盤に先制点を奪ったことでそのコンセプトがより明確なものとなり、選手個々のハードワークを積み重ねることで強固な守備組織を形成した。連戦で思うようにテンポの上がらない名古屋を尻目に、その後も決定的なチャンスを作り、シュート数でも相手を上回っている。前回の対戦（5月14日）では磐田に3つゴールを許し、勝点1を獲得するにとどまっているが、リーグ序盤のあの頃よりチームのクオリティーを上げていることは間違いない。10年のリーグ開幕戦では開始直後に先制点を奪いヤマハスタジアムで白星を挙げているが、相手より先に得点を奪えれば一気に自分達のペースとなるだろう。
以上
2011.08.23 Reported by 南間健治
