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【J1:第20節 甲府 vs 広島】レポート:三浦俊也監督が辞任を決断した悲しいことばかりの夜。(11.08.07)

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8月6日(土) 2011 J1リーグ戦 第20節
甲府 0 - 2 広島 (18:35/中銀スタ/11,193人)
得点者:19' 李忠成(広島)、74' 佐藤寿人(広島)
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後味が悪いというか、自己嫌悪になりそうになるというか、担当チームの監督がシーズン途中で辞任する会見を経験し、その現実を上手く消化することが出来ない。選手の能力を上手く引き出して組み合わせることが出来ていないとは思っていたし、このまま続けても難しいと思っていた。でも、実際に三浦俊也監督が「今日をもって監督を辞めたいと思います」と言ったときは顔を直視することを避けてしまった。記者同士では、あれこれ言ったくせに言葉を置き換えて同じことを三浦監督に直接ぶつけなかったことを少し後ろめたく感じたからだが、三浦監督がいつも通りに会見に臨み、いつも通りかそれ以上に穏やかに振舞ったから余計に後味を悪く感じてしまった。

会見後、「お疲れ様でした」と言って握手を求めることは、三浦監督を労うのではなくて自分の罪悪感を薄めようとする行為のように思えて出来なかった。「お世話になりました」と少し小さな声で三浦監督が言って、会見場からピッチ側の引き戸を開いて出て行くときにも何か言おうとしたが言葉は見つからなかった。そして、すぐに海野一幸社長と佐久間悟GMが入ってきて、監督退任の理由説明と新監督の紹介、新監督の会見が始まった。

試合後、土砂降りの雨の中、ゴール裏のサポーターからバラバラにブーイングも出たが選手がメインスタンドに挨拶に来る頃には「俺たちはココにいて甲府の歌を歌う。ゴールはいつだ、心躍らせ待っている〜♪」とゴール裏が一つになって歌っていた。最初はどんな想いで歌っているのか分からなかった。メインスタンドに挨拶に来た選手はみんな心も身体も疲れきっていて、ずぶ濡れだからみんな泣いているようにも見えた。メインスタンドの男性サポーターが「次だぞ、次、前を向け」と大声で選手に気持ちを伝えた。選手にちゃんと聞こえたかどうかは分からないが、凄く心に沁みる言葉だった。そのときもゴール裏の歌声は大雨の中でずっと聞こえていた。甲府のチャントには相手を威圧する歌はなく、全部が応援歌。沁みる言葉と鼓舞する歌が選手を包んだが、この夜、選手はそれを感じることが出来たかどうか…。

選手入場のとき、サポーターは青と赤のコレオグラフィで山梨中銀スタジアムを満たして選手を迎えた。連敗を止めたい甲府の選手はしっかりと守ろうとする意思は見せたが、ポジションを意識しすぎているのかボールに対するプレッシャーが充分ではなく、広島のパスワークにつり出されてボールを回された。補強で獲得したダヴィと金珍圭を加えた甲府の4−4−2は個々の能力を活かすことが出来ず、時速30キロなのに5速のままアクセルを踏んでいるような立ち上がり。一旦は甲府が主導権を取る時間もあったので19分にPKから1点(李忠成)を献上しても希望はあった。しかし、主導権を取った前半の後半は攻めてはいたが、組織的ではなく、スタンドプレーの集合体のような攻撃でお互いの特徴を活かし合っている攻撃ではなかった。記者席の後ろのファミリー席からはブラジル人選手の奥さんがポルトガル語でずっとまくし立てている。何を言っているのかはぜんぜん分からないが、主導権を取っているのに決定的なシュートシーンが少なくイライラしていることだけは分かった。「前にスペースがあるんだからドリしろ。マークされている選手の足元にパス出すな。ウチの旦那にケガさせる気か」くらいのことを言っているはず。前半は「マジでゴールが決まる1秒前」のシーンが2回あったが、2回ともトラップミスでシュートを打てないで0−1で終了してしまう。ずっと前から広島は苦手なのか。

後半、甲府は予定通り片桐淳至を最初から投入してパワーを持って戦いを始めた。片桐、ダヴィ、ハーフナーマイク、パウリーニョが攻撃の形を作り、広島はカウンターだけという時間帯もあったが、甲府のシュートは西川周作の胸の中。そして、甲府の攻撃はスタンドプレーの集合体だから攻撃陣は後半の中ごろには乳酸が抜けなくなっていた。そして、空は切れかけの蛍光灯のようにピカピカと光って雷雲の接近を知らせる。井澤惇が更に投入されて攻撃陣にフレッシュな動きが加わり全体的に躍動感も出てくるが足が止まった選手もいて、お互いにカウンター合戦の様相。広島も甲府の息の根を止められない。しかし、相手をつり出したときの上手さでは2枚も3枚も上手の広島は、74分に高萩洋次郎がペナルティエリアの外でフリーでボールを持つと、甲府はダニエルと内山俊彦が同時にプレスを掛けに出てしまいフリーになった佐藤寿人にループパスが渡り、佐藤がそれを更にループでGK・荒谷弘樹を越してゴールネットを揺らした。「シュートは数ではなく、決定力なんだよ」って教えてくれたようなゴール。

誰もが甲府は止めを刺されたと思うようなゴール。メインスタンドの客さんは雷雲が来る前に帰る理由が見つかりパラパラと出口に向かう。78分に入場者数が11193人と発表されたが、その時刻には150人ほどはもう帰っていた。90分を過ぎると雲行が完全に怪しくなりクィーンの「I was born to love you(雷鳴から曲がはじまる)」が流れるのかと思うような雷鳴が轟き、土砂降りがスタート。メインスタンドのお客さんの多くが一斉に屋根のあるところに動き出し試合どころではない雰囲気。しかし、アディショナルタイムは5分と長め。足が止まっても必死で甲府の選手は戦っていたが、普通なら期待を持つ5分間のアディショナルタイムだが、期待を持つことが難しかった。雨の音でピッチの声は聞こえなくなり、試合が終わったかのように帰り出すお客さんの向こうに見えるピッチで戦う選手の姿が悲しくも他所事のように見えてしまった。

広島よりも10本も多くシュートを打ちながらも0−2で敗れた甲府。ピッチに並んだ選手は何もかも失ったかのような姿で項垂れていた。今日敗れれば何かが起こることを感じていた人は少なくなかったはず。三浦俊也監督の辞任。試合後1時間以上歌い続けたゴール裏のサポーター。「俺たちはこんなに愛しているのに…」という想いをブーイングではなく、鼓舞する歌で伝えようとしたのではないだろうか。監督退任の理由説明と新監督の紹介、新監督の会見中もずっと歌声は聞こえていた。会見後、海野社長と佐久間GM兼新監督がゴール裏のサポーターに説明に行った。厳しい言葉も投げかけられたが最後はサポーターが海野コールと佐久間コールで2人を見送った。でも、これは解決でも手打ちでもない。クラブのあり方に対する立ち位置や考え方の違いが明確になっただけ。ヴァンフォーレ甲府というクラブが成長する過程で避けられない登り坂がこの先にある。J1残留か、J2降格かで登り坂から見える景色は違ってくるだろう。

以上

2011.08.07 Reported by 松尾潤
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