7月31日(日) 2011 J2リーグ戦 第23節
水戸 3 - 1 愛媛 (18:04/Ksスタ/3,032人)
得点者:49' ロメロフランク(水戸)、55' 小澤司(水戸)、68' 鈴木隆行(水戸)、90'+2 高杉亮太(愛媛)
スカパー!再放送 Ch185 8/1(月)後00:00〜
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前節富山に0対2で敗れ、今季初の3連敗を喫した水戸。停滞の原因と言える3試合でわずか1得点という得点力不足を打破するために、柱谷哲二監督が決断したのが、鈴木隆行と吉原宏太を2トップで先発させるということであった。「隆行の強さと宏太のアジリティーの組み合わせを生かしたい」(柱谷監督)との期待を背負って、元日本代表2トップはピッチに立った。
ご存じの通り、鈴木隆は「被災地・茨城復興のために」という思いで6月にチームに加入した。しかし、昨年10月から試合をしておらず、さらに一度は引退を決意し、サッカーから離れていた時期があるだけに復帰後どれだけコンディションが上がるか本人でさえ分からない中トレーニングに取り組んできた。出場可能となった第21節札幌戦において途中出場で8分間プレーしたものの、前節富山戦はコンディション不良により出場を回避。今節先発出場でどこまでできるかは未知数であった。
それは吉原も同じであった。昨年10月3日に行われた第29節愛媛戦で左足アキレス腱を断裂。必死のリハビリにより、やっとの思いで6月に練習に合流した。そこから驚異の回復力を見せて第21節札幌戦、第22節富山戦でベンチ入りを果たすものの、出場機会を与えられず。さらに、今週は患部に痛みが再発したため、木曜日までは別メニューで調整していた。果たして満足いくプレーができるのか。不安を抱えてのキックオフとなった。
しかし、幕が開けると、やはり「代表」にまで登りつめた選手たちは違った。序盤こそ、周囲との連係が合わず、困惑する場面もあったが、時間を重ねるごとに2人の切れ味は増していき、攻撃の起点として機能しはじめていった。
「お互いに似たようなチーム」と柱谷監督が言うように、両チームとも全体をコンパクトに保ち、タイトなプレスを掛け合う展開となった。だが、鈴木隆と吉原のプレーにより、水戸が流れを引き寄せることとなる。鈴木隆が再三愛媛DFと激しい競り合いを繰り広げ、そして吉原が鋭い動き出しでDF裏のスペースを突いたことで愛媛のDFラインを押し下げることに成功する。それにより、愛媛の陣形が間延びしだし、水戸が試合を支配することとなった。前半はゴールを奪えなかったが、「後半につながる伏線があった。点を取れる感じはあった」(鈴木隆)と、手ごたえをつかみながらハーフタイムを迎えた。
そして、後半開始早々、右サイドを抜け出した吉原がクロスを入れる。DFに対応されるものの、クリアされたこぼれ球をロメロ・フランクが豪快にゴールに蹴り込み、水戸が先制する。さらに水戸は愛媛DFに圧力をかけ続けた。55分には左サイド、フランクからのスルーパスに抜け出した小澤司がゴールに流し込み、追加点を奪う。これまで得点力不足に悩んでいたチームとは思えない迫力あふれる攻撃で連続してゴールを奪ってみせた。
そして、やはり最後に輝くのは千両役者であった。68分、左サイドで鈴木隆が倒されて得たFK、小澤が蹴ったボールは鈴木隆の頭にドンピシャリ。きれいにゴールに押し込み、勝利を決定づける3点目を決めたのであった。
その後、愛媛の猛攻を1点に抑えて勝利を得た水戸。鈴木隆のデビュー戦ゴール、そして吉原の10カ月ぶりの復帰に花を飾る勝利ということで、試合後のスタジアムは歓喜に満ち溢れることとなった。3月11日の震災以降、水戸の町でこれだけの人が一緒に笑顔を見せるのははじめてではないか。そう思えるぐらい幸せな雰囲気がスタンドに漂っていた。
水戸が新たなステップに進んだことを証明する勝利であった。これまでの水戸は一貫してポゼッションサッカーに取り組んできた。だが、ここ数試合は相手を圧倒するパスワークを見せていたものの、フィニッシュの精度を欠き、チームは勝利を手にすることができなかった。そんな決定力不足に苦しむチームが、鈴木隆と吉原というラストピースが加わったことによって、劇的な変化を遂げることとなった。しっかりポゼッションをしながら2トップの「強さ」と「アジリティー」を生かした迫力に満ちが攻撃を繰り出したのである。2トップに頼るのではなく、これまで培ったサッカーの中で2トップを生かして勝ったことがこの試合の最大の収穫と言えるだろう。
吉原は言う。「監督は『J1を目指すチームを作る』と言っている。そこについていかないといけない」。そして鈴木隆もこう語る。「目標はJ1昇格。そうじゃなきゃ、面白くないでしょ」。頼もしいベテランの存在が水戸を新時代へと導く。さらなる上を見据えた戦いが、これからはじまる。
愛媛は完全な水戸の引き立て役に終わってしまった。「もう2、3点取られていてもおかしくなかった」とバルバリッチ監督が語ったように、チームとしていいところを出せないまま完敗を喫することとなった。前節東京Vに勝利した勢いを持ってこの試合に臨みたかったが、「1試合勝ってみんな満足してしまった。上を目指すにはそういうメンタリティーではダメ」と池田昇平は唇を噛んだ。リーグ序盤こそ、上位につけたものの、中盤以降は負けが込んでしまっている。この苦境を跳ね返すメンタリティーを持つことができるのか。今シーズンの正念場を迎えている。
■この試合のCoolballer:鈴木隆行(水戸)
以上
2011.08.01 Reported by 佐藤拓也
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