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※神戸側プレビューはこちら
「内容的にはネガティブなことばかり」だと西野朗監督が振り返ったように、前節の大宮戦は勝利こそしたものの、内容的には決して理想的なものではなかった。それでも『勝つ』ことがチームにもたらすプラスアルファを考えれば、しかも暑い最中の連戦でもぎ取った勝利だからこそ、この白星がもたらす効果は絶大だと言っていい。ただ「逆転するにはパワーがいる。夏場は特にそういう展開は避けたい」と話したMF遠藤保仁の言葉も、的を射たものであることは間違いない。特にこの日の後半のように、自分たちから走るのではなく、相手に走らされる状況になれば、その消耗は殊更、激しさを増す。しかも、大宮戦は最終的に勝ち切れたからよかったものの、必ずしも逆転できるとは限らず、前々節の浦和戦のように、先行し、追いつかれ、一方的に攻め込まれる展開になることも十分考えられるだけに、いかに90分を睨んだ戦いをできるかも、G大阪がこの夏場を勝ち切る上では重要なポイントになってくるだろう。
さて、２試合連続してアウェイでの戦いを強いられていたG大阪だが、今節は７月初のホームでの開催となる。しかも、既報通り、バイエルン・ミュンヘンに移籍が決定したG大阪の至宝・MF宇佐美貴史のラストマッチ。G大阪ではアカデミー所属時代から、数々の『初』でJリーグに、日本に驚きを与えてきたMF宇佐美だが、そのチーム最年少の可愛い弟分を心地よく送り出すためにも、チームは『勝利』を合い言葉により団結を強めている。と同時に、他ならぬ宇佐美自身も、慣れ親しんだ万博の地でのラストマッチに特別な思いで挑むことは間違いなさそうだ。ファンはもちろんのこと、両親をはじめ、東京から駆けつける兄、家族や友人の前で、その決意を存分に発揮してくれるに違いない。
「特別な感情でチームに迷惑をかけたらいけないので、いつも通り挑むことを心掛けつつ、楽しみながら、しっかり心に残るような、ファンの人たちの心にとどめられるようなプレーをしたい」（MF宇佐美）
ただ決して簡単な試合ではない。特に対戦相手の神戸は現在、J１リーグ戦で８試合連続白星のない状況が続いており、チームも選手も何よりも勝利に飢えている。しかも、思い起こせば昨年の終盤戦。残留争いの渦中にあった神戸は最終的にラスト７試合を負けなしで終えて残留を決めたが、そのきっかけになったのがG大阪戦だった。それだけに「今節を浮上のきっかけに」という思いで挑んでくることは間違いない。その勢いに飲み込まれることのないよう、また今季の好調時に神戸が示していた『運動量』に翻弄されることのないよう、序盤から集中した入りの中で先手をとった戦いを仕掛け、優位に試合を運びたい。
キーマンはやはり、前述のMF宇佐美。昨年の神戸戦では、ホーム、アウェイ戦ともに１得点ずつ挙げている宇佐美だが、過去、彼はこのゴールについて「神戸戦でのゴールは、ホーム、アウェイともに僕としてはスーパーだったというか、理想的なゴールだった」と語っている。その再現なるか。これまで数々のメモリアル弾を刻んで来た男だからこそ、自身のラストマッチに花を添えるゴールを期待したい。
「今までもデビュー戦をはじめとして、自分にとって大きなタイミングで決めてきたので、明日も決めることができたら嬉しいし、そういう運が巡ってくるように、あと一歩、あと何メートルのところに拘ってプレーをしたい」（MF宇佐美）
神戸戦を控えた前日練習には約1000人ものファンが練習場へ駆けつけ、別れを惜しむと共に、ラストマッチを前にした彼に温かな言葉を掛けた。そのファンの前を一周し、ハイタッチで別れを告げた宇佐美の目には珍しく涙が。その涙の理由について「練習場に入った時から横断幕を掲げてもらっていたし、グッとくるものがあった。温かい言葉もたくさん掛けてもらって、最後は耐えられなかったですね」と語った宇佐美。これまで「悔し涙しか流したことはない」と話していた宇佐美が、初めて流したと言ってもいいうれし涙が、明日の勝利に繋がることを願っている。
■この試合注目のHOT BALLER：宇佐美貴史（G大阪）
以上
2011.07.12 Reported by 高村美砂
