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雲ひとつなく晴れ渡った空から刺すような強烈な日差しが降り注ぐ。じっとしているだけで汗が吹き出し、ジリジリ肌が焼けていくのが分かる。そんな中、選手たちは仲間を鼓舞し、ボールを追い、互いに激しく体をぶつけながらゴールを目指す。
第２節の甲府戦で今シーズン初勝利を挙げて乗り込んだ等々力陸上競技場。福岡は川崎F相手に互角の戦いを展開しながらも３失点。後半に岡本英也の２ゴールであと一歩のところまで川崎Fを追い詰めたが、結局、勝利を得ることができなかった。チームに進歩の跡は見られた。しかし、決定機を決めきれず、あっさりと失点する傾向は変わらず。それが、いい試合をしながらも敗れるという状況から抜け出せない要因になっている。
鈴木惇は話す。「自分たちにとって必要なのは内容ではなく勝利。どんな形であっても、たとえ点の取り合いになっても、最終的に勝点３を取りたい」。それはチームに所属する26人の、そして熱い声援を送り続けるサポーターに共通する思いだ。雁の巣球技場で流す汗も、互いにぶつけ合う大きな声も、すべては勝利を得るためのもの。スタジアムに足を運び、90分間飛び続け、チームの名前を叫び続けるのも勝利を手にするためのものだ。下を向いてはいられない。福岡は迎える大宮戦で勝利を目指す。
福岡にとっての最大のポイントは、15試合で35失点を喫している守備をいかに落ち着かせることができるかにある。全てに問題があるのではない。前節の川崎F戦でも、前線のチェイシングと、それに連動した中盤の守備で相手の自由を奪い、ボールの出しどころを限定して最終ラインがボールを弾き返した。実際、先制点を奪われる38分までは、今シーズンＪ１最多タイの得点力を誇る川崎Fにチャンスらしいチャンスを与えなかった。しかし、問題は失点のシーン。いい守備をしながらも、余りにも簡単に、しかもそれを３回も繰り返した。ひとつ、ひとつの要因を探れば、ちょっとしたミスや、ちょっとしたポジショニングのズレなど、些細なことから始まっている。しかし、15試合を戦って２失点以上を喫した試合が11もあるという現実は、チームとしての守備に問題があることを示している。個々の集中力はもちろん必要だが、チームとしてディテールにどこまでこだわれるのか。それが大宮戦では求められている。
その福岡が迎える大宮は、現在４勝６分５敗の12位。ここまで粘り強く戦いながらＪ１中位のポジションをキープしてきたが、前節の敗戦で今シーズン初の連敗。その流れを断ち切るために強い思いでレベルファイブスタジアムに乗り込んでくる。チームが志向するのはポゼッションサッカー。ロングボールに頼らずに後方からビルドアップするのが特徴だ。まだ発展途上のチームと言えるが、前節では敗れたとはいえＧ大阪と堂々と渡り合っており、志向するサッカーに迷いはない。
注目されるのは２トップのラファエルと李天秀。ラファエルはトップの位置にこだわらず、広い範囲を自由に動き、高いキープ力でボールを収めて攻撃の起点を作る。一方、李天秀はユース年代から活躍が注目されてきた韓国を代表する選手。そのパワーは福岡にとっては脅威だ。そして、ゲームを作るのが今シーズンから加入した東慶悟と、上田康太の若い２人。五輪代表でもある東は、ここまで３得点を挙げているサイドアタッカーで、ボランチを務める上田は巧みなパス捌きを特徴とするが、ともにラストパスにも非凡なものを持っており、大宮の攻撃の中心を担っている。福岡が勝利を得るためには、まずはこの４人を自由にプレーさせないことが必要だろう。
そして福岡は、甲府戦に続いてのホーム連勝を目指す。試合を重ねるごとに、少しずつ、少しずつ進化を見せているが、それを結果という形で表現することが求められている。そのためには、「攻守に渡ってハードに戦うこと。そして先制点の意味が大きい」と篠田善之監督は話す。抱えている課題は少なくはない。やらなければいけないことも多い。しかし、勝利を得ない限り福岡が前へ進む道はない。戦いの場所はレベルファイブスタジアム。総力戦で勝利を手に入れたい。
■この試合注目のHOT BALLER：成岡翔（福岡）
以上
2011.07.12 Reported by 中倉一志
