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大敗を喫したＣ大阪戦後、「自分たちの警戒が足らなかった」と振り返ったネルシーニョ監督の言葉どおりである。前節に限らず、柏はここ数試合で急激に失点が増加しており、その要因はパス、トラップ、判断、ポジショニングなどプレーひとつひとつにミスが多発し、それが綻びの糸口となっている。
ただ、柏は戦術的な基盤がしっかりしているため、回帰できる場所を持つ強みがある。仙台戦へ向けたトレーニングでは、特に前線からの守備に関する修正を主眼に置き、入念な確認作業に時間を費やした。レアンドロ・ドミンゲスは出場停止、そしてジョルジ・ワグネルを今回はスタメンから外す可能性が出てきた。確かにレアンドロを欠くことは痛手だが、ボランチに大谷秀和が戻り、左サイドバックに橋本和、２列目にハードワークができる澤昌克と兵働昭弘が入れば、むしろ守備に関してはグッと安定感が増すのではないか。
そして前線は、田中順也と北嶋秀朗が３試合ぶりに２トップを組みそうだ。６月５日、ヤマザキナビスコカップ第１戦で仙台と対戦した時、仙台が比較的サイドを自由に使わせてくれたこともあり、柏の攻撃は外からの比重が高くなってしまい、その結果クロスボールをことごとく仙台ＤＦに弾き返された。その試合後、北嶋は「もう少し中を使ってもよかったかもしれない」と猛省していたのだが、今回はその反省を生かして中と外の攻撃をバランス良く使い分けられるか。右サイドバックに酒井宏樹、左に橋本を置けば、サイド攻撃には計算が立つ。そこで前回の対戦にようにサイド攻撃偏重にならず、クサビの縦パスを北嶋に入れ、彼のポストプレーを起点に中央での攻撃を繰り出すことが仙台の堅い守備をこじ開ける突破口になると思われる。
一方の仙台は、第１８節の清水戦で開幕から続いた無敗が途絶え、前節の名古屋戦ではホームで１−１のドロー。この結果だけを見て一時の勢いに陰りが見えてきた、と思うのは軽率以外の何物でもない。清水戦は単に結果が黒星だったというだけでパフォーマンス自体は称賛しうるものであり、名古屋戦でも２、３本のパスで相手陣内を切り裂くカミソリのように鋭いカウンターを何度も見せた。事実、梁勇基の芸術的な先制弾はカウンターから生まれている。後半、オウンゴールで追いつかれた後は名古屋の圧力に押し込まれたものの、名古屋の強力攻撃陣をアタッキングサードで封鎖する粘り強い守備はヤマザキナビスコカップ第１戦で柏を完封した姿そのままであった。チームの完成度や一体感を見ても、仙台は依然として強さを失っていない。
ただ、今節は菅井直樹を出場停止で欠く。“超”がつくほど攻撃的なこのサイドバックは、仙台の攻撃になくてはらない存在として、今季はその力を大いに誇示している。その選手の欠場を仙台がどう対処してくるかは注目ポイントだ。しかも先述のとおり、柏は左サイドバックに橋本の起用が予想される。１対１で仕掛けられる力を有する橋本は、最近では守備力の向上も著しい。これまでとは布陣が異なる仙台の右サイドと柏の左サイド、ここでの攻防でイニシアチブを握った方が試合を有利な展開へ運びそうだ。
柏にとっては、もしナビスコカップ第１戦のように仙台の守備に手を焼き、スコアレスの状況が続くようであれば、途中から流れを変えるサブメンバーにも大きな期待がかかる。例えば怪我から全体練習に復帰した水野晃樹。正直、水野のベンチ入りは定かではない。だが、レアンドロを欠くからこそ、水野のようにドリブルやクロスなど、個の力で打開できる選手は不可欠になろう。
６月の連戦前、北嶋は「試合に出る１１人だけじゃなくて、全員の力で乗り切る」と話していた。おそらく北嶋の言う「全員」とは、サポーターを含めた柏に関わる全ての人々を指すものと推測される。すでに仙台戦のチケットは完売。日立台に集うサポーターを含めた総力戦で、柏は今の苦しい状況を必ず乗り越える。
■この試合注目のHOT BALLER：北嶋秀朗（柏）
以上
2011.07.08 Reported by 鈴木潤
