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確かに今、徳島は苦しんでいる。が、苦しむのは決して悪いことでない。そこで自らの課題に正面から向かい合い、懸命の取り組みでそれを克服すれば、チームは間違いなく次の段階への前進を果たせるのだから。しかもまだリーグは序盤戦。前節の敗戦後に倉貫一毅も「まだまだやるべきことがあるというのを痛感した試合だった」と語っていたが、シーズン早い時期にこうして自分たちを見つめ直す機会を得たことは徳島にとって幸いと言ってもいいのではないか。
とは言え白星から遠ざかって早4試合。それを考えるとプラス思考ばかりではいられない。内容的な復活が100％でなくとも、ゲームの結果は今節必ず好転させなくては。そうしなければ今が、前進のための成長期間でなく、後々に悪影響を及ぼす長過ぎる足踏みになってしまう。
そこで、徳島が今節の一戦を制するためのポイントを探ると、攻守それぞれにこれだけは改善が絶対と思われる部分が浮かんでくる。攻撃においては3人目の連動、守備においてはバイタルエリアの封鎖がそれだ。
まず攻撃における3人目の連動だが、勝ちを得られなかった最近の4戦を振り返ると、それまで出来ていたその動きがほとんど影を潜めてしまっていた。ボールホルダーに対してファーストサポートには入っても、肝心の次が欠如。それによって多くの攻めが単調なものとなり、組織的に相手守備を混乱させた場面は数えるほどだったと言えよう。しかし前節・F東京戦で選手たちはその重要性とそれが持つ威力を改めて認識したはず。なぜなら後半見せた1シーン、佐藤晃大と津田知宏のパス交換に3人目として柿谷曜一朗が絡んだ崩しはあの日本代表・今野泰幸が締めていた中央ゾーンを完璧なまでに攻略。フィニッシュに精度を欠き同点とはいかなかったものの、完全な決定機を生み出したのである─。それを思えばやはり3人目の連動は不可欠。今節ゴールをこじ開けるためにはやはり多くの局面でそれを蘇らせることが必要だ。
続いて守備のバイタルエリア封鎖については、前節如実にその改善の必要性が浮き彫りとなっていた。もちろんF東京の上手さがあったのは事実だが、それを差し引いてもあれだけバイタルエリアを使われるとゴールマウスを守るのは難しい。しかも今節対する湘南にはプレー精度抜群のアジエルがいる。その位置で彼に自由を与えてしまえば致命傷に繋がるのは間違いないだけに、徳島の最終ラインとボランチ陣は90分徹底してその場所を封鎖しておかなければならない。
ただ、チームにはディビッドソン 純マーカスの出場が微妙という問題が存在する。倉貫の相棒として前節は濱田武が入り、また運動量豊富な衛藤裕もその位置を務められるが、ことによっては島村毅をアンカーに据えるシステム採用の可能性もある。それに関しては美濃部直彦監督の決断に注目が集まるところだが、いずれにしても徳島としては前記2つの課題を全員のハードワークによって改善することが望む結果を引き寄せる絶対条件となるに違いない。
そして対する湘南も多くの部分で徳島に似ていると言えよう。
前節今季初の連敗を喫し突然の守備崩壊まで起こしてしまったチームは、「自らを見つめ直さなければいけないいい時期」（反町康治監督の前節終了後コメント）にある。さらに引きずっている課題解決が今節のカギで、2試合続いた早い時間の失点を是が非でも無くさなくてはならない。その上こちらもボランチ・ハン グギョンの出場がどうかという状況にあり、やや中盤の守備に不安が残るのは否めないところだ。
ただ、湘南が修正力の高い組織であるのは疑う余地のない事実。大黒柱である坂本紘司を中心にきっと相当立て直した姿を見せてくると予想される。
リーグの戦いはやはりそう簡単にいかない。どのチームにも厳しい試練があり、それをタフに乗り越えたチームだけが先へ進めるということなのだろう。
果たしてこの一戦で前節までの状況を打開し再び前へ歩み出すのは、徳島か、湘南か。両者の今後を占うと言っても過言ではないこの一戦は見逃せない。
以上
2011.06.24 Reported by 松下英樹
