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【J1:第17節 広島 vs 山形】レポート:勝利を導いたドクトルの執念。開放的なサッカーを貫いた広島、山形を突き放す(11.06.23)

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6月22日(水) 2011 J1リーグ戦 第17節
広島 3 - 2 山形 (19:04/広島ビ/7,593人)
得点者:27' 佐藤寿人(広島)、33' 大久保哲哉(山形)、43' 李忠成(広島)、72' 太田徹郎(山形)、80' 森崎浩司(広島)
スカパー!再放送 Ch181 6/23(木)後04:00〜
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何かが、彼を動かしていた。
それは衝動であり、予測でもあり、そして燃えたぎる感情でもあった。

衝動とは、「ここで前に出れば、得点になる」という予感と言い換えてもいい。鋭い予測とは、リベロである自分が前に出ても仲間が後ろをカバーしてくれる、必ずパスを出してくれるという信頼がベースにあってこその、試合を読む力だ。
そして感情とは、この場合は怒り。山形の同点シーン、宮本卓也のクロスをヘディングでクリアできなかった悔しさがきっかけとなり、森崎和幸の心の奥底に眠っていた巨大な感情の渦が全身の血管をかけめぐり、筋肉を、神経を刺激し続けた。「自分に対しての腹立たしさが、カズを突き動かした」とペトロヴィッチ監督は言う。「そういう感情は、確かにあった」と広島のリベロも認めた。

80分、相手を押し込んだ状態で森崎和は縦パスを出す。李忠成に入ったその瞬間、何かを振り払うかのように彼は前へと走った。西河翔吾の退場によって最終ラインに入っていた佐藤健太郎とのバトルに勝利した山崎雅人のパスを受けた時、リベロはペナルティーエリアの中に。流れの中で彼がここまで飛び込んできたのは、今季はまだ記憶にない。
紫の8番の疾走は、山形の選手たちを驚かせた。あわてて宮本がカバーに入る。だが彼の足と手は身体に絡み、リベロを芝生の上に転がしてしまった。広島ユースの先輩の独創的な発想と走りの前に、山形の主力に成長した後輩はPKを与えてしまった。
兄が奪ったPKを弟が蹴る。スポーツライターが好みそうなドラマティックな光景だが、正確無比な右足を誇る兄がPKを苦手としているのに対し、爆発的な左足を持つ弟はPKに絶対的な自信を持っているという現実的な選択だ。完全にGKの逆をとった森崎浩司のゴールにより、広島は3試合ぶりの勝利を手にした。

「ドクトル」の称号を持つ森崎和幸は、ここ2試合「らしさ」を出せずに得点できなかった広島の状態を、深く深く、考えていた。その考察の上に出した結論は「考えすぎないこと」。矛盾しているようだが、それが思考の究極まで辿り着いて出したドクトルの結論だった。
「最近はみんな、サッカーを楽しめていない。楽しんでプレーするのが、サンフレッチェのサッカーじゃないのか」
その想いは、イレブンに伝播していた。試合開始から、山形の引いた守備ブロックなどおかまいなしに、紫の戦士たちの躍動は続く。ボールに触りたい。つなぎたい。前に運びたい。ゴールしたい。そんなシンプルな欲望が運動量に転化し、知性が加わって適切な距離感覚につながった。右サイドに開いた李忠成のスルーパスがブロックを引き裂き、ミキッチのクロスから佐藤寿人のゴールにつながった一連の攻撃は、広島が得意とする機能美に満ちたプレー。盛田剛平が出した精度抜群のロングボールはオフサイドギリギリに飛び出した李のゴールを生み、ショートパスだけでないダイナミックな引き出しも見せつけた。
「チャンスを決めて2点差以上にできなかったことが苦戦の原因」とペトロヴィッチ監督は厳しく指摘したとおり、試合運びの部分での稚拙さは否めないが、昨日のビッグアーチで表現されたサッカーは、広島らしい開放的な楽しさに満ちていたことも事実。それが、ここ2試合の閉塞感を突き破ったことも、また現実だ。

そんな開放的な広島サッカーの前に、山形の選手たちは前半、気圧されているように見えた。しかしただ一人だけ、売り出し中の若きアタッカー・伊東俊だけは、そんな重苦しさとは無縁。ミキッチに対して積極的に仕掛けPKを強奪したシーンも含め、前半から怖いものなしのプレーを展開。「ファーストタッチもいいし、スピードの強弱もつく。視野も広く、キックもいい」という小林伸二監督の絶賛に値するパフォーマンスは、山形の希望。プロ初得点を決めた太田徹郎、途中出場で積極性を見せた川島大地らも含め、若い力が着実な成長を見せているこのチームに、敗戦の中でも陽光が輝く予感は漂ったことは確かだ。

試合終了と同時にピッチに転がり、大の字になった森崎和幸。身体を突き動かしてきた巨大な感情は飛び散り、疲労と勝利の余韻だけが全身を覆っていた。試合後、最後にミックスゾーンに現れたリべロは、勝利の要因を一言で語る。
「執念でした」
キャラクターに似合わない感情的なこの言葉だが、この2文字ほど、この日の広島を示している言葉はあるまい。楽しく美しいサッカーを展開しながら、やや集中を欠いた時間帯で失点してしまった。その悪い流れを強い想いで引きちぎり、勝利を力づくで奪い取る「執念」こそ、「タイトル」という未踏の金字塔に近づく王道であることも、ドクトル・カズは知っている。

以上

2011.06.23 Reported by 中野和也
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