6月19日(日) 2011 J2リーグ戦 第17節
栃木 2 - 1 北九州 (18:03/栃木グ/6,800人)
得点者:2' 崔根植(栃木)、25' 安田晃大(北九州)、81' リカルドロボ(栃木)
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ミッションは、想像以上に困難だった。「敵は自分の中に居る」と松田浩監督は戦前に話したが、恐れていたことが起きた。開始早々に先制したことで最大の敵である「気の緩み」が生じた。失点も喫した。しかし、後半に持ち直し、勝利に結び付けることができた。北九州戦に向けて「昨年との違いを見せられればいい」と話していた、水沼宏太は言う。
「後半に引き離せたのはチームが成長した証。昨年だったら1‐1で終わるか、点を決められて負けていた」
昨季の本城では今節と同様の展開でドローに終わったが、今季は苦しみながらも勝ち切った。
簡単に手にした勝点3ではない。だからこそ、ずしりと重みがある。カクテル光線に照らし出されたゴール裏で、サポーターと選手が大きく左右に揺れながら歌った県民の歌には、これまで以上に厚みがあり、魂が込められ、その分だけグリスタに響き渡った。12節に陥落した首位に、栃木は返り咲いた。
「自分に勝つことのチャレンジではないのかということで試合に臨んだ。そういった意味では最高の入り方をした」(松田監督)
前節2‐0で湘南との上位決戦を制した後だけに、立ち上がりが心配されたものの、栃木は開始33秒にあっさり先制した。クラブ最速タイのゴールは崔根植の左足から生まれた。申し分のないスタート。しかし、栃木は自ら落とし穴にはまってしまう。「1点が入り、我武者羅さが悪い方向に出てしまった」とはGKの鈴木智幸。後方からビルドアップしてくる北九州に対し、前線から力任せにボールを奪いに行ってしまう。2トップが勢いよくボールを取りに行くが連動性に乏しくプレスがはまらず、例えば21分にダイレクトでボールを敵陣ゴール前から自陣ゴール前まで運ばれた。ボールの取り所が定まらずに、25分には安田晃大にプロ初ゴールを献上。湘南を手詰まりにしたような、コンパクトさは見る影もなかった。
同点とされたことでハーフタイムに指揮官から檄を飛ばされた栃木。崔の負傷交代でピッチに立った廣瀬浩二がかき回し、形勢を逆転させる。レオナルドを投入するも、使い方が不明確だった北九州とは対照的に、栃木は立て続けにチャンスを作る。迎えた81分。ロングキックをパウリーニョがヘディングで後方にすらし、船山貴之のポストプレーから最後に左足を振り抜いたのはリカルド・ロボ。エースの2戦連続弾でクロスゲームを辛くもものにし、栃木は今季2度目の連勝を飾った。
「なんとか前半で追い付けたのは、今日は負けたけど大きかった」とは安田。北九州は出鼻を挫かれながらも焦らず、自分達のスタイルを貫き、「相手を走らせて奪った点は評価できる」(三浦泰年監督)。4‐4‐2から3‐5‐2へ陣形を変えて行うビルドアップは有効で、栃木に後手を踏ませることができた。ただ、前節の鳥栖戦もそうだったが、試合の入り方が悪く、流れを変えるために力を使ってしまっている。三浦監督の就任から日は浅いが、確たるスタイルはでき上がっている。開始15分での失点を減らすことに加え、「僕等はチャレンジャーなので失うものはない。1日1日、1試合1試合成長するのがテーマ。今のサッカーをぶれずにやりたい」と言う宮本亨のような思いを共有できれば、更なる躍進に繋がるはずだ。
「自分達だけでは解決できない事を、ハーフタイムに外から言ってくれるスタッフが居る。監督が喝を入れてくれることでできた部分もあるが、最初から言われずにできるチームにならないと昇格争いには食い込めない」(水沼宏太)
自分で判断し、自分で行動できるのが大人のチームであり選手だが、超一流と言われる選手達でもメンタル面には間違いが起こる。今後も間違いは生じるだろうが、その頻度をどれだけ減らせるかが重要であり、どれだけ早く修正できるかが、昇格争いから脱落しないための鍵となる。
次節、栃木は首位攻防戦を千葉とフクアリで行う。徳島、湘南との上位対決で快勝できたのは、自分達の持ち味を出せたことが主因だが、一方で相手に心のスキがあったのも事実だ。オーロイ不在でも千葉は千葉。受けに回ることなく挑戦者として、昇格レースのライバルに果敢に立ち向かいたい。
以上
2011.06.20 Reported by 大塚秀毅
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