6月12日(日) 2011 J2リーグ戦 第16節
愛媛 3 - 2 鳥取 (13:04/ニンスタ/2,775人)
得点者:25' 実信憲明(鳥取)、32' 阿部祐大朗(鳥取)、66' 齋藤学(愛媛)、88' 内田健太(愛媛)、90'+1 前野貴徳(愛媛)
スカパー!再放送 Ch183 6/14(火)後04:00〜
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これほど劇的な結末に出会えるのなら、たとえ激しい雨に打たれて声援を送り続けても報われるというもの。2点のビハインドをひっくり返す、逆転ゴールが愛媛にもたらされたのは時計の針が90分を過ぎてから。その決勝点がJ初ゴールとなった前野貴徳は、そのまま一直線にゴール裏で待つサポーターのもとへ駆け寄った。「興奮していてよく覚えていないけどサポーターと喜びを分かち合おうと、いつの間にか走っていた」。前野の足元には、ゴール前の混戦の中で粘ったジョジマールからボールが渡った。そしてファーストタッチでディフェンスを振り切ったその左足に、迷いはなかった。歓声に沸くスタジアムの興奮が頂点に達した後、タイムアップのホイッスルが鳴った。
しかし、愛媛は前半だけで2点を失った。さらに「PKも外して、流れは最悪だった」と池田昇平は振り返ったが、45分を終えた段階では全く予想できなかった展開だった。前半の愛媛にチャンスがなかったわけではなかったが、2点目を奪われた直後には石井謙伍のシュートがポストを叩いた。さらに、PK失敗の後も小笠原侑生が抜けだしたが、これもGK小針清允に阻まれた。反撃のきっかけをことごとく逸した前半。しかし、振り返れば2点を失い、さらに雨脚が強まる中で愛媛に残された選択肢はなかった。「つなぐサッカーよりも、グランドにあったサッカーをするという意思統一ができていた」と齊藤学は語ったが、前半の終盤に生み出していたチャンスもシンプルに前へとボールを運んだ結果だった。
さらに、ピッチコンディションも愛媛が徹底した「雨の日のサッカー」に味方をした。後半以降、特に水がたまっていたのが鳥取のゴール前。そのペナルティエリアまで運び込まれたボールに、鳥取の守備陣はてこずった。追撃の狼煙になった齊藤のゴール、そして内田健太の同点ゴール。いずれも鳥取がペナルティエリアの外にクリアし切れなかったところを、愛媛は見逃すことなく得点に結びつけた。齊藤とジョジマールのツートップに内田を絡ませ、両サイドバックを高く押し出したバルバリッチ監督の采配も的中した。ピッチコンディションやゲームプラン、ベンチワークなど様々な要素がもたらした逆転劇でもあった。
ただ、その根底にあったのは直近3戦無敗の中で愛媛の選手に生まれてきた自信。「去年は失点をした後に精神的、フィジカル的に落ちていた。しかし、今年はそれが少なくなっている」と今週のトレーニングの際に語っていたバルバリッチ監督。さらに「先制をするに越したことはないが、先制されても落ちることなく自分たちのペースでできるのはいいこと。失点をすることは仕方がないし、それも流れの一部だと思い、そのままやれば追いつけることを覚えてくれた」と続けていた。
これに加えて「気持ちの面でこれを続けられれば、そう簡単に負けない」と試合後に内田が口にした闘争心。2点目のゴールを決めた時の雄叫びからも、その気持ちは十分に伝わってきた。ホームで同点に追いついた段階で、勝ったかのような喜び方には「まだ同点」と突っ込みたくもなったが、結果的にはあの盛り上がりが最後の逆転ゴールにもつながった。こうしたメンタル面での成長は、昨季までの愛媛にはなかったもので今季の大きな進歩ととらえていいだろう。
ただ、選手たちが口を揃えて反省したように、立ち上がりの悪さは修正しなければならない大きな課題。これで愛媛の直近4試合は3勝1分けだが、3試合で先制を許している。どれだけ実力があるチームでも、今のように先制点を与え続ければいずれはつまずく。先制してポゼッションをし、主導権を握って勝ち切る本来のサッカーはまだまだ突き詰めなければならない。逆にその部分では、少なくとも前半の45分は鳥取のゲームだった。勝つには勝ったものの、サッカー内容では負けたホームでの「PRIDE OF 中四国」第2戦。鳥取とは最終戦でまたぶつかるが、「PRIDE OF 中四国」が目指すように今後も4クラブで互いに切磋琢磨を繰り返す中で、愛媛のサッカーも高めたい。そして、始まったばかりのこの争いが、北関東や九州のそれを上回る濃密なカードになってゆくことにも期待したい。
以上
2011.06.13 Reported by 近藤義博
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