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なんともにぎやかな1週間であった。6月8日に行われた鈴木隆行の加入会見には、「水戸ホーリーホックはじまって以来じゃないかと思うぐらい」（柱谷哲二監督）多くのメディアが会見場に駆け付け、その模様を大々的に報じた。かつて日本中を歓喜に巻き込んだ男がJ2で、被災地である故郷で、そして、アマチュア契約でプレーすることを決断したというのだから、注目が集まるのも無理はない。残念ながら鈴木隆はルール上、選手登録できるのが7月15日以降となるため今節は欠場することとなるが、それでもこの盛り上がりをチームの力にしたい。
ただ、大切なことは“変わらないこと”であり、“続けること”。前節栃木戦では上位につける相手に対して、球際、運動量、戦う気持ちで圧倒。勝利こそ逃したが、前々節鳥栖戦で0対5という大敗を喫した幻影を振り払った。「意味のある、大きな勝点1だった」と柱谷監督は納得の表情を見せ、試合後、選手たちは「今日のサッカーをベースとして、続けていくことが大事」と口をそろえた。
それは試合だけの問題ではない。先週はピッチの外にも伝わるような激しいトレーニングをこなし、その成果が試合で表れたのだ。それを今週も続けられるかが大きなテーマであった。「鳥栖戦から本当にみんなの気持ちが強くなっている。今週も本当に厳しいトレーニングをしたし、いい意識でやれている実感がある。毎日のトレーニングが楽しみなんですよ」と話す村田翔の充実した表情が今の水戸の状況を物語っている。もう鳥栖戦のような試合をすることはないだろう。
8試合ぶりの勝利へ。そのためには富山の3−3−3−1という特異なシステムを崩さないといけない。ビエルサ前監督時代のチリ代表が採用していたシステムで、人と人との距離を縦横でコンパクトにして、局面で強さを見せるのが狙い。攻撃面では1トップがサイドに流れることで、サイドで数的優位を作り、縦にスピーディーな攻撃を仕掛けてくる。どんどん人を追い越して攻撃を仕掛けてくるのが特徴だ。今まで体験したことがないシステムだけに最初は違和感を覚えることだろう。
水戸としては、相手のプレスにはまる前に素早くサイドのスペースにボールを入れて、攻めたいところ。システム上、守備時には中央に人数が多いため、「人数をかけて守られたら崩しようがない」（柱谷監督）だけにボールを奪ってからいかに速く攻められるか。守から攻への切り替えの早さが勝負のポイントとなりそうだ。
そして、勝利のために必要なのはゴール。5試合でわずか1得点では勝つことはできない。それはFW陣が痛いほど分かっていることだろう。また、鈴木隆加入により、「ポジションを渡したくない。点を取って自分が必要だと思ってもらえるようにしたい」と語る岡本達也をはじめ、若きFW陣はいまだかつてないほどの危機感を抱いている。その思いをプレーにぶつけて、結果につなげられるかが今節の見どころでもある。鈴木隆は出られないが、彼らの活躍こそ、“鈴木隆加入効果”でもある。FW陣の奮起に期待したい。
現在17位の富山と14位の水戸とは、勝点1差。今季の目標を13位に定めている富山としては、アウェイでもしっかり勝点3を奪って、水戸を追い抜きたいところ。攻撃陣には黒部光昭や朝日大輔といったベテラン選手が多いが、中盤には19歳の平出涼や森泰次郎、最終ラインにはルーキーの松原優吉といった若手が多く起用されており、彼らの若さ溢れるアグレッシブなプレーを安間貴義監督は期待していることだろう。水戸同様、長期スパンでチームを作っている段階の富山。これまで2分3敗と勝利のない水戸から勝利を奪うことで、大きな一歩を踏み出せるはず。富山にとっても重要な一戦であることに間違いない。
以上
2011.06.11 Reported by 佐藤拓也
