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【2011Jリーグヤマザキナビスコカップ】My First Story No.4 名波 浩(解説者)(11.06.05)

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6月5日(日)からの2011Jリーグヤマザキナビスコカップ開幕を記念して、これまでにサッカーマガジン、サッカーダイジェスト、エルゴラッソ、などで掲載された「My First Story」をJ's GOALでもご紹介します!
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ニューヒーロー賞はうれしい驚きだった

2011Jリーグヤマザキナビスコカップのキーワードは「My First Story」。今回はヤマザキナビスコカップの代名詞とも言える個人タイトル
『ニューヒーロー賞』の初回受賞者、名波浩氏に、現役時代の思い出と、今大会の見どころを語ってもらった。

■実はこの大会で1点しか取っていない

 自分にとっての「My First Story」は、1996年に新設された『ニューヒーロー賞』の初代受賞者に選んでもらったことです。大会が行なわれなかった95年に磐田に加入した自分にとって、ヤマザキナビスコカップに初めて出場したのが2年目の96年でした。ルーキーイヤーを経て、プロでも「やれる」という自信を持てていた頃。その年は、自分に「リーグ戦も含めて全公式戦で先発フル出場する」という目標を課したのを覚えています。

 実際に予選リーグ(全14試合)を通じて全試合フル出場を達成できたので、それを評価してもらっての受賞だと思います。それでも、ニューヒーロー賞に選んでもらえるとは思ってもいませんでした。喜びよりも驚きの方が大きかったですよ。新設されたばかりの賞だったから、予選リーグをこなしているときも狙っていたわけじゃないですし、何しろ磐田は予選リーグで敗退してしまいましたから。振り返れば、歴代で唯一2人が選ばれた年でしょう? もう一人の斉藤俊秀(現藤枝MYFC)は、清水が決勝進出に貢献しているから当然の受賞ですけどね。

今、思い出しましたが、ニューヒーロー賞に選んでもらった理由に心当たりがありますよ。確か前年のルーキーイヤーで、自分はJリーグのベストイレブン候補にノミネートされましたが、新人賞はもらえなかったんです。その年の新人賞は確か(川口)能活(当時横浜マリノス/現在ジュビロ磐田)だったかな。当時は密かに「自分が選ばれるんじゃないか」という淡い期待があったんですけどね。それで、もしかしたらJリーグ側が、新人王を獲れなかった自分に対して、気を使ってニューヒーロー賞に選んでくれたんじゃないかと。きっとそうに違いないね(笑)。

 決勝の前夜祭で授賞式があったんですが、決勝に進んだ清水エスパルスとヴェルディ川崎の選手が大勢いる中で、オレがぽつんといてね。記者や関係者はみんな、決勝に出る2チームが目当てだから、式が終わったらすぐに新幹線に飛び乗って帰った覚えがあります(笑)。それでも、自分は子供のころから個人表彰というものにほとんど縁がなかったから、照れくさいけれどうれしかったですよ。今ではニューヒーロー賞が、その後に成長を遂げていく若手選手の登竜門のような存在になって、ファン・サポーターにも知名度の高い個人賞になっているので、誇りに思っています。

 ヤマザキナビスコカップで印象に残っているのは、ゴールシーンです。実は、キャリアを通して、この大会では1点しか取ってないんですよ。それが96年の予選リーグ、ホームでのG大阪戦でした。ペナルティーエリアの左角でパスを受けて、ツベイバをトントンッてドリブルでかわして打ったミドルシュート。よく覚えていますよ。だって、1点しか取ってないんですから(笑)。

 あと、僕自身初めて決勝に行った97年の鹿島戦は、悔しさの残る大会として印象深いです。ホーム・&アウェイで行なわれた決勝の2戦目、カシマスタジアムで1−5の大敗。直後に行なわれたリーグ戦のチャンピオンシップの相手も鹿島で、大敗の悔しさをバネにできたからこそ、優勝できたんです。


■注目の若手や監督采配 楽しむ要素がたくさんある

 ヤマザキナビスコカップの醍醐味と言えば、やはり勢いのある若手の台頭ではないでしょうか。ニューヒーロー賞の歴代メンバーが象徴するように、それまでは絶対的なチームの柱とは言えなかった選手が、この大会で自信をつけて主力への階段を上っていった例がたくさんあります。日程の都合で日本代表選が抜けなければならないこともあるし、リーグ戦と違って昇格・降格もない大会だから、監督も思い切ったベンチワークをしやすいことも、若手が出場しやすい要因の一つでしょう。

 短期決戦の中で若い選手が持つ特有の「勢い」が、勝ち上がるための重要な要素です。そういう若手が出てくることでチーム内の競争が激しくなって、血の巡りが良くなるものなんです。若い選手には「ベテランは休んどけ」くらいの気概を期待したいですね。僕が現役時代は、若手が成長していく姿を見て「どんどん若手が出てきてほしい」と思いながらも「まだまだ負けられねえ」と思いながらプレーしていました。

 今年の大会でも、楽しみな若手がたくさん出てくるでしょう。特に今、若い選手たちにタレントが多くそろっています。横浜FMの小野裕二、浦和の山田直樹、原口元気、柏の茨田陽生、川崎Fの登里享平、楠神順平など、注目選手は尽きません。またチームとしての初タイトルをこの大会でつかんできた例も多いです。単純に強豪クラブと言われているチームが勝ち上がるのではなくて、その年、その時期の勢いがうまくはまることでサプライズを起こしてきた歴史があります。

 興味深いデータとして見逃せないのが、昨年大会で優勝した磐田をはじめ、一昨年のFC東京、3年前の大分と、過去3大会の優勝チームはACL出場チームではなく、予選リーグを勝ち上がってきたチームだということ。「強い者が勝つ」というほど単純じゃない大会であることも、魅力の一つだと言えます。

 そういう意味で、チームとして注目したいのは川崎Fですね。若手の活きが良いし、優勝すればチーム初のタイトルでもあります。ともに日本代表で戦った相馬直樹新監督への期待も込めて楽しみにしています。現役を引退してから、解説者としてだけではなく、プライベートで親としてサッカーを見に行くことも増えました。5歳の長男は、家でももうボールを蹴っていて、サッカーのことがかなり分かってきたようです。テレビでサッカーを見ていても「パパは出てないの?」って聞いてきますから。まだ僕を現役だと思っているみたいですけど(笑)。

 現役時代は、自分が家族とスタジアムに観戦に行くイメージは全く持っていなかったけど、違った楽しみがあるものです。普通、ひとりで見ていれば言葉を発することもないけど、家族で見れば、自然と会話が多くなるし、より感情的になって喜怒哀楽が出やすいですね。子供が質問してくることに、分かりやすく解説してあげたりね。現役のときでは感じなかった、もう一つのサッカーの楽しみ方を見つけたようで、すごく新鮮ですね。だからこそ、一人や友達同士もいいけど家族でぜひ、この大会を楽しんでほしいと思います。

 最後に一つだけ。実は、うちの5歳になる息子が『オレオ』が大好きなんです。お世辞ではなく、コンビニに行くと何よりも先にオレオを探してカゴに入れるんですよ。そういう意味でも、現役を退いた今でも、僕とヤマザキナビスコとの「Story」は続いています(笑)。

取材・構成:老野生智明[本誌] 写真:J.LEAGUE PHOTOS

週刊サッカーマガジン 3月15日発売号

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■プロフィール■
1972年11月28日、静岡県生まれ。日本サッカー史に名を残したレフティー。95年に磐田入し、同年に日本代表にもデビュー。98年フランス・ワールドカップ出場の立役者となった。磐田で97年のリーグ制覇、98年のヤマザキナビスコカップ優勝、02年のリーグ完全制覇など数々のタイトルに貢献。ベネチア(イタリア)、C大阪、東京Vでもプレー。08年限りで現役を引退し、現在は解説者として活躍中。ヤマザキナビスコカップのニューヒーロー賞、初代受賞者でもある。


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