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【J2:第15節 栃木 vs 水戸】栃木側プレビュー:北関東初の「J1昇格」、「脱・北関東」へ向けた新たな一歩。ダービー2連覇中の水戸を撃破し、栃木が北関東の歴史を塗り替える。(11.06.03)

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水戸側プレビューはこちら

屈辱は消えない。「ボコボコにされた記憶しかない」。リーグ戦再開を翌週に控えた水戸とのトレーニングマッチ(4月17日)を、水沼宏太はそう振り返る。トレーニングマッチとはいえ水戸に、グリスタで、0‐4で敗れ去った記憶は簡単に消去できるはずがない。天の配剤としか考えられない、200試合出場を古巣の水戸戦で果たす大和田真史は、「リーグ戦再開前のトレーニングマッチのリベンジだと思っている。なにがなんでも勝ちに行く」とリベンジマッチに闘志を燃やす。トレーニングマッチも含めてホームでの対水戸戦は未勝利。不名誉な記録を背負ったままJ1へ行けるはずがない。栃木にとって今季は歴史を作る年。そのひとつに北関東ダービー制覇が挙がる。ならば、ダービー2連覇中の水戸を撃破するしかない。

昇格を争う徳島を前節4‐0で圧倒し、連敗を抜けた栃木。勝因のひとつに松田浩監督が「悔いのないメンバーで戦いたい」と話した、メンバー構成が挙げられる。大久保裕樹と高木和正の副キャプテンコンビの戦列復帰は、先制点を2人で叩き出したことからも小さくなかった。また、キャプテン落合正幸は試合前に円陣を組んで気合を注入した。ベテランと中堅がメンタル面でチームにもたらした波及効果は絶大だった。今節もダービーに挑むに相応しいメンバーが揃うはずだ。

徳島戦では選抜された18人が危機感を共有し、絆を深めたことで勝点3を掴んだ。驕りは即、敗戦に繋がるが、大和田は徳島戦で得た自信の効果を、「先に失点しても徳島戦で得点できたことを思い出せれば、やばいと焦らない。今は前の選手が得点できているので我慢もできる」と言う。その一方で、「先制した時に徳島戦のような展開になると思うと足をすくわれる」と付け加えた。だからこそ、大和田とツインタワーを組む渡部博文は「5分間集中」の重要性を訴える。前後半開始と得点後の5分間、気を抜かずに集中できたことが前節は無失点に繋がった。特にここ最近、課題だった後半の立ち上がりに失点せず、逆に得点を奪えたことは大きな進歩だった。ダービーでも5分刻みに声を掛け合い、集中力を切らさない作業を継続し、2戦連続の完封に繋げたい。

栃木が徳島に大勝し、水戸が鳥栖に0‐5と大敗した要因を、松田監督は先制点だと言う。水戸の特徴として誰もが口を揃えたのが、「勢い」。若さが最大の武器だけに、勢いに乗ると痛い目に遭うのは先刻承知。堅個な守備をベースに、岡本達也と常盤聡の2トップの推進力を活かした縦への鋭さは栃木に匹敵する。水戸のカウンターは要警戒だ。だが、必要以上に恐れることはない。今週のトレーニングではカウンターを打たせないために、「DFの数合わせ、立ち位置、攻撃中の準備、ボールを失った時のファーストDFの質」(松田監督)を確認した。カウンターを打たせずに打つ準備は整っている。縦パスを効果的に2トップのリカルド・ロボと崔根植に入れることでリズムを作り、チームとしての通算100ゴールでダービーを勝利で飾れたら栃木としては言うことなし。先手を取ることで水戸に若さゆえの脆さを、鳥栖戦のように露呈させることが理想的な展開だろう。

「水戸は監督の魂が乗り移った時には強い。我々としてはそれ以上の魂を持って戦う必要がある」(松田監督)
必要以上に昂ぶる必要はないが、いつも以上に気持ちを込めなければダービーでの勝利は手繰り寄せられない。勝利を渇望することが魂を燃焼させる発火剤となるならば、連勝、ダービー制覇、J1昇格と高い目標を掲げる栃木の渇きは、大敗後に挽回を目論む水戸のそれを上回っているはずだ。北関東の歴史を塗り替えるチャンスは目の前に転がっている。水戸に挑んでは跳ね返された歴史を、栃木は自らの手で塗り替える。

以上

2011.06.03 Reported by 大塚秀毅
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