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湘南は前節、味の素スタジアムに乗り込み、F東京に挑んだ。こと前半は相手に押しこまれこそすれ、試合を通して決定的なチャンスを与えてはいない。そして終盤、さすがに足が止まり出したホームチームを尻目に前への推進力を弛まず、交代選手の力をさらに加えて同点に追いついた。試合終了目前に追いつかれた第11節愛媛戦のように、同じドローでも2ポイントを失ったかのような印象を抱くゲームもある。反してF東京戦のそれは、開始1分足らずの失点はいただけないものの、勝点1を積み上げた印象が色濃い。
反町康治監督によれば、かの同点ゴールまでには16本のパスが繋がれていた。速攻とは対照的な、ボールを動かしながら相手の隙を窺いフィニッシュに至るさまは、日々取り組むトレーニングの成果に他ならない。たとえば石神直哉は、「マイボールをうまく回せたし、今後さらにいい攻めができると思う」とビルドアップの手応えを口にした。交代わずか3分でゴールを仕留めた中村祐也の復帰も心強い。加えて指揮官は、「7試合を消化した時点で3失点は悪くない」と、ディフェンスの安定についても触れた。むろん目指すはつねに勝利である。ただ、手にした勝点1には数字以上の内容が詰まっている。
ところで、中村の同点ゴールは臼井幸平のピンポイントクロスによって生まれた。その臼井のアシストを導いたのが、中村と同じく交代出場した菊池大介である。裏を突く鮮やかなチェンジサイドは、曰く、「うまくトラップでき、ベストな位置にボールを置けたのですぐに前を向けました。ファーストタッチの大切さをあらためて思います。あのプレーは次に繋がると思う」。反面、その表情は浮かない。「あのプレーがなければ自分は何もしていません。バイタルで自分の持ち味を発揮したかったけど、そこに行くまでのプレーが雑になってしまった。シュートも撃ててないし、自分の課題が出ました」。笑顔の代わりに浮かんだ課題もまた、次へのステップとなろう。
対して、今節湘南と対峙する草津は、7試合で9失点ながら、一方で10得点を挙げている。前節までで2ケタ得点を記録しているのは首位の千葉と2位の徳島、4位栃木、そして草津の4チームのみだ。無得点ゲームは第10節札幌戦の1試合のみと、彼らはコンスタントに得点を重ねている。リーグ再開以降、複数得点のない湘南とは対照的に映る。
草津の得点力を支えているのは、ともに3ゴールを挙げているラフィーニャとアレックスと言えるだろう。総得点の半分以上をふたりで挙げている。彼らチームの得点源を軸に、熊林親吾や後藤涼、松下裕樹らが攻撃にアクセントを加える。前々節はホームでF東京を、前節はアウェイで富山を降し、目下連勝中だ。「しぶといチーム」と反町監督が評したように、F東京には逆転勝ちし、富山にも一度は逆転されながら再逆転劇を果たすなど粘り強さも窺える。迎える湘南としては、安定を見る守備力で草津の攻撃を封じながら、一度ならず確実に機を捉えたい。
昨季、悲喜をともにした草津戦をまえに、菊池は言う。「恩返しの意味でも成長した姿を見せなければいけないと思っているし、絶対に負けたくない。相手を知っているからこそ、もし自分が出たら、草津の嫌がるゾーンへ積極的に入っていきたいですね」。荒天が予想されるなか、菊池をはじめ、湘南は持ち味をいかに発揮できるか。勝点で並ぶ難敵を制し、ホーム連勝といきたい。
以上
2011.05.28 Reported by 隈元大吾
