スカパー！生中継 Ch182 後03:50〜
☆totoリーグに投票しよう！
----------
王者が窮地に立たされている。リーグ戦では6試合を消化し、いまだ勝利はひとつのみ。得点にいたってはわずか5と惨憺たる数字である。もともと攻撃的ではあるが、得点力に特徴のあるチームではない。しかし1試合1点以下の得点率は低すぎる数字である。水曜日に行われたアウェイでのAFCチャンピオンズリーグ・ラウンド16では韓国の水原に完敗を喫し、公式戦5試合連続で勝利がない名古屋は、出口が見えないトンネルをさまよっているような状態だ。一番の問題は、やはり得点が取れないこと。得点に至る流れが、現状ではまったく見えてこないことだ。
名古屋の攻撃陣の不振の原因には、どうしても負傷者の影響が否めない。今季の負傷者の多さは異常な数にのぼっているが、中でもケネディと玉田圭司、そして田中マルクス闘莉王の欠場がチームとしての機能不全を引き起こした。現在は3選手ともに戦列に復帰しているが、彼らが不在だった期間に組織練習を積めなかったことで、チームの動きはバラバラのままだ。司令塔として期待されている藤本淳吾はいまだ周囲との息が合いきらず、布陣も4−3−3から4−4−2、あるいは4−2−3−1と定まらなかったことで選手の動きにも微妙な狂いが生じている。ケネディの高さや玉田、永井謙佑の速さといった個人能力を生かす集団としての動きも不足しており、せっかくのタレントを浪費するような戦いを繰り返しているのである。
そこで迎え撃つのが、開幕から7連敗中の最下位・福岡である。ここまで6得点は名古屋を1点上回るが、17失点はリーグワースト。失点シーンを見ていると、対人プレーでの詰めの甘さが目立つ。DFラインは重鎮・田中誠が目を光らせているが、いまだJ1の攻撃力の前に確たる城壁を築き切れていない印象だ。また攻撃面では1トップの城後寿が前節磐田戦で負傷交代。その後の状態が不明だが、彼を欠くとなると前線の基準点を失うことになり、戦いはさらに厳しいものとなる。代役には重松健太郎や高橋泰らがいるものの、安定したポストプレーで周囲を生かす背番号10の不在はやはり大きい。城後がプレーできるか否かは、名古屋との一戦では大きなファクターとなってくる。
試合は不調ながらも名古屋の優位は揺るがない。前述したように、ここ数試合の福岡は個の力に対するディフェンスに綻びを見せている。ケネディ、玉田、永井だけでなく、藤本、小川佳純に闘莉王など、名古屋には一芸に秀でたスペシャリストたちが揃っている。彼らの局面打開力は間違いなくこの試合で最大のアドバンテージ。福岡がその点で何か対策を練ってくるか、そしてそれが奏功するかは展開を握るカギとなるだろう。名古屋が個人能力を起点に一方的な展開に持ち込むことも、十分に予想される。
ただし、名古屋にも不安要素はある。今や1試合にひとり負傷者が出る、悪夢のようなサイクルの中で、今度は復帰したばかりの怪物ボランチ・ダニルソンを失った。これにより再び布陣は4−4−2と4−3−3の間で揺れることになり、何より中盤の守備力が大幅に下がる。中村直志と藤本も守備のハードワークを厭わない選手だが、186?で100mを10秒台という驚異的な身体能力を誇るダニルソンほどの貢献度は期待できない。藤本をボランチに置く布陣はゲームメイクの面では良い効果があるかもしれないが、彼が守備に追われてしまえばそれもなくなる。さらには守護神・楢崎正剛も水原戦で相手と交錯した際に左足を負傷。病院での検査を受けており、欠場の可能性も浮上してきた。苦しい台所事情の中でストイコビッチ監督がどのようなメンバーでいかなる布陣をピッチに描くのか、注目だ。
昨季王者vs昨季J2・3位での昇格チームという構図はあくまで昨季の実績からのもの。現状を見れば、互いに得点力不足に悩む12位vs最下位である。迷い込んだトンネルの先に光を見つけたいのはどちらも同じ。そのモチベーションにおいて相手を上回った方が勝つ。勝点１を分け合うことを良しとしない、アグレッシブな展開の試合に期待したい。
以上
2011.05.27 Reported by 今井雄一朗
