5月22日（日） 2011 J2リーグ戦 第13節
Ｆ東京 1 - 1 湘南　（16:04／味スタ／15,423人）
得点者：1' ロベルトセザー（Ｆ東京）、78' 中村祐也（湘南）
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FC東京が味の素スタジアムで湘南と対戦し、１−１で引き分けた。開始直後の１分にFWロベルトセザーの来日初ゴールで先制。主導権を握って試合を支配したが、２点目を奪いきれず、78分に追いつかれてドロー決着。新システムの初陣を勝利で飾ることはできなかった。

先制点は50秒足らずで生まれた。スローインを起点に右サイドを崩すと、梶山陽平の折り返しにロベルトセザーが走り込んで左足を合わせた。ボールはサイドネットに突き刺さり、ゴールネットを揺らした。

ここから東京の時間が始まった。ロベルトセザーを1トップに置き、その後ろに田邉草民、羽生直剛、鈴木達也を並べた新布陣が機能。羽生が最終ラインの背後に飛び出し、湘南のゾーンを乱すと、セザーと鈴木のスペースを空けた。また、配給役が複数存在することで、ボールの狙いどころが定まらない湘南を翻弄。田邉と、梶山、さらにその背後からもボールが供給され、相手陣内で面白いようにボールが回った。

しかし、後半に入ると、徐々に湘南を敵陣に押し込めなくなってしまう。GK権田修一は「今日のゲームに関してはやりたいサッカーができていた。ただ、もっと90分、支配してもよかったと思う。ボールを失った時の切り替えが早ければ、ミスをしてもそれがリスクにはならない。だからこそ、その切り替えの部分をもっと続けていくべきだった」と悔やんだ。権田が言う守備への切り替えの遅れは、後半の主導権争いに大きく影響した。反町康治監督は試合後、「前への推進力を出せた」と、述懐している。湘南は奪ったボールをすばやく前へと運び、Ｆ東京を押し返した。

そして78分、同点ゴールを与えてしまう。ボールウォッチャーとなったＦ東京はズルズルと下がってしまい、ボールホルダーへのプレッシャーが疎かになる。パスで揺さぶられると、最後はDF臼井幸平のクロスをFW中村祐也に押し込まれて失点。湘南の我慢強さには、脱帽しなければいけなかった。彼らは、前半から振られ続けても凌いで後半に訪れる自分たちの時間を生かして勝点１をもぎ取った。
「今年のJ２は、どこもロースコアのゲームが多くなってきている。それだけ実力が拮抗している。それが、こうした勝点差になっているのだと思う」（反町監督）
１−１のスコアが両チームの現在地を顕著に表す。ともに“2点目の課題”という場所に落ち着く。1点では、ゲームを決めきることはできない。不確かなものを確かなものに変えるためには2点目を奪わなければいけない。逆に言えば、それを身につけたチームが混戦のJ２を抜け出すはずだ。

湘南は、反町監督が言う「ハーフラインよりも前でボールを奪いにいくサッカー」を続けている。得点力をつけるために、取捨選択を繰り返して自分たちの良さを生かす最大限のカタチを探っている。
Ｆ東京も、湘南のいる位置まで追いついた。前節までは、そのラインすら踏んでいなかった。「パスを繋ぎ倒す」スタイルへと戻り、ようやく“これが東京のサッカー”という姿を見せることができた。ここからは、“2点目の課題”に取り組んでいくことになる。相手監督からは試合後、「スローインから得点しているチーム」と、揶揄された。ただ、これは裏を返せば、金言にもなる言葉だ。富山戦と、今節はサイドこそ違うが、ともに相手陣内の深い位置からのスローインをきっかけにゴールネットを揺らしている。タッチラインを挟んだ同じ場所にポイントが作れば、得点機は増えるかもしれない。左サイドバックの中村北斗が相手サイドバックと、中盤の間にポジションを取って左サイドの起点となった時間帯が存在した。中央でパスが回せるのなら、サイドバックの攻撃的なポジショニングをもっと生かしてもいいはずだ。2点目の壁を破るための課題は、必ずゲームの中に隠れている。権田の言った攻守の切り替えや、球際の強さを維持しつつ、さらシステムの機能性が高まれば、味スタに歓喜の声は戻ってくる。沈みがちだった飛田給駅からの帰り道が少しだけ楽しくなり始めた。

以上

2011.05.23 Reported by 馬場康平