5月22日(日) 2011 J2リーグ戦 第13節
北九州 1 - 0 京都 (13:03/本城/2,911人)
得点者:90'+4 レオナルド(北九州)
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凪を知らぬ本城の風はこの日、バックスタンドからメーンスタンドへと流れていた。朝まで降っていた雨の影響だろうか、いつもとは違う風向き。記者席で正面から受ける風に私は何かが起きそうな予感を感じていた。そして90分後。予想を遙かに超える劇的な幕切れで北九州は勝点3を手にすることになった。
試合は必ずしも北九州の優位で進んでいたわけではない。京都・大木武監督の「入り方は悪くなかった」という言葉のとおり、序盤は京都が速いボール回しでシュートまで持ち込み、コーナーキックからもチャンスを作った。ただその時間も15分くらいで終わってしまう。「その後は足が止まるというかボールをもらいにくる選手がいなくなった」と大木監督。北九州が豊富な運動量でボールをキープし始めると、京都の対応は後手に回った。ただビッグチャンスを作るまでには至らず前半を終える。
後半に入ると両チームが前戦にボールを集め決定機を作る。53分に北九州は木村祐志のクロスに長野聡がヘディングでシュート。直後に京都は中村充孝が抜け出してシュートを放つが、ともにゴールまでは奪えなかった。
シュートを打ち合う状態が続いていた71分、京都の安藤淳が2枚目のイエローカードで退場。人数が少なくなった京都は「守り守りに入ってしまった」(福村貴幸)。
数的優位に立った北九州にも不安はあった。北九州は前節・東京V戦でも相手に退場者が出たのだが1人多いにもかかわらず4失点を喫していた。わずか1週間後に訪れた同じ場面。しかし北九州の選手たちは動揺しなかった。京都の重心が下がったことも北九州にはプラスに作用し、着実なビルドアップでゴールに迫る。「自分たちの展開でサッカーができた」と木村。三浦泰年監督も「彼らは同じ失敗を二度繰り替えさなかった」と満足の表情を浮かべた。
そして迎えたアディショナルタイム。掲示された3分の追加時間が過ぎようとしたときだった。
京都のディフェンスラインの前にいた森村昂太が残り時間を考えるとミドルシュートの選択肢もあった場面で冷静に左サイドにいた途中出場の林祐征にパス。林にはプレッシャーが掛かっておらずそのままシュートへ持ち込み、逸れたところを詰めていたレオナルドが押し込んだ。「その前のヘディングを外していたので、あれじゃ終われないと思っていた」とレオナルド。ゴールへの強い思いが最後の最後で劇的なゴールを呼び込んだ。
北九州は勝点を10まで伸ばし、9位浮上。冒頭で「予感」などという言葉を使ってしまったが、北九州にとってこの勝利は奇跡でも偶然でもない。焦りの募る時間にあってもきちんとボールを繋ぐ。個人技ではカバーしきれない部分は仲間を信じて、組織として戦っていく。その積み重ねが生んだ結果だ。
一方で京都は退場者が出たとはいえディエゴ、久保裕也の巧みな足捌きでの突破力は武器そのものだ。なぜスコアレスが続くのか。中山博貴が言葉を選びながら話した。「チームのためにというものを一人一人がもっとやらないといけない」。この試合で明暗を分けたのはその一点かもしれない。
以上
2011.05.23 Reported by 上田真之介
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