5月21日(土) 2011 J1リーグ戦 第12節
神戸 1 - 0 広島 (19:04/ホームズ/15,520人)
得点者:36' 田中英雄(神戸)
スカパー!再放送 Ch186 5/22(日)後07:00〜
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試合後のミックスゾーン。最後に姿を現したその男は、取材陣の質問に一つ一つ丁寧に答えていた。目の周りを少し紅潮させ、溢れそうな涙を必死にこらえているようにも見えた。長かった。開幕戦の後すぐに膝を故障し、そこから地道なリハビリを続けてきた。「ケガした人にしか分からない歯痒さもあったし、イライラしてトレーナーに当たった」こともある。それでも懸命にリハビリを続け、そして昨日、テーピングで膝をガチガチに固定した男は“ヒーロー”になった。
今季負け知らずで神戸に乗り込んで来た広島は、李忠成、森脇良太、青山敏弘ら主力を欠いていた。しかも、森崎浩司まで試合当日に発熱で欠場。森崎、青山に代わり、Jリーグ初出場のトミッチ、丸谷拓也がボランチに入った。選手層の厚い広島とはいえ、華麗なパスサッカーに本来の輝きは感じられなかった。特に前半の立ち上がり約20分間は、2シャドーのムジリ、高萩洋次郎にくさびのボールが入った瞬間、あるいはその前のプレーで神戸に潰された。試合後、佐藤寿人は「全部が全部、キレイにやりすぎた。特に前半の20分くらいまではもっとシンプルに前へ放り込んでもよかった」と振り返っている。シャンパンの泡のように次々と選手がアタックしてくるような華麗なサッカーに、広島はこだわり過ぎたのかもしれない。
逆に神戸側から見れば、この1週間で練習してきた広島対策が効果を出していた。2トップが相手の最終ラインにプレスをかけるのではなく、ボランチあたりからプレスを開始。FWとDFの距離をコンパクトに保つことで、狙い通り、広島にスペースを与えなかった。また、両サイドでは、大久保嘉人、朴康造がプレスをしかけ、ボランチの三原雅俊、松岡亮輔がボールを奪う。そんな守備が徹底され、成功もしていた。とはいえ、得点を奪うことはできず、拮抗した状態がしばらく続くことになる。
動いたのは、前半30分過ぎ。神戸の三原が負傷し、より攻撃的な田中英雄が開幕戦以来のピッチに立つと、試合の流れ、いやテンポのようなものが変わる。「(神戸の)ラインが下がっていると事故(失点)につながる。相手を1mでも2mでも下げさせるようにしようと思って入った」(田中)というように、神戸が少し高い位置でボールを奪いはじめると、広島のマークに多少のズレが生まれた。そして田中が入ってから約5分後、バイタルエリアで大久保がボールをキープすると、これに田中がすぐに反応。大久保からの横パスを受け、ミドルを放った。「嘉人が相手を2、3人引きつけてくれていた。後はボールを枠に蹴るだけだった」(田中)と振り返るように、豪快だが丁寧な一蹴は、一度ポストに当たってネットを揺らした。直後、拳を握りながら、咆哮しながら、田中は一直線に和田昌裕監督の元へ走った。そして思い切り和田監督に飛びついた。その2人の周りに次々とチームメイトが集まり、田中はもみくちゃにされた。胴上げでも始まるのではないかという喜びよう。田中英雄が名の通り“ヒーロー”になった瞬間だった。
後半、追いつきたい広島はリスクを承知で攻撃の枚数を増やし、最後まで攻め続けた。だが、それ以上に神戸はハードワークを続け、猛攻をしのいだ。終了のホイッスルが響いた瞬間、90分休まず献身的に走り続けたボランチの松岡や朴は大の字で芝の上に横たわった。試合後、松岡は「誰か起こしに来てくれると思ったけれど、誰も来てくれなかったから、自分で起き上がりましたね(笑)」と冗談交じりに振り返った。おそらく、みんな動けなかったのだろう。それほど神戸の選手はハードワークしていた。
話を試合後のミックスゾーンへと戻す。冒頭文の続き。少し目頭を熱くした、ように見えた田中にある女性記者が質問した。一直線に和田監督の元へ向かったのはなぜか。一度、田中は視線を上に向け、こう答えた。
「膝が完治しているわけではないのに、和田さんは(自分を)信頼して(ベンチ)メンバーに入れてくれた。恩返ししたいという気持ちで(ピッチに)入った。(ゴールで)少しは恩返しできたと思うけれど、これから、もっともっと恩返しするつもりです」。
神戸にとっては、3連勝という結果以上に大切なものをつかんだ試合だったのかもしれない。
以上
2011.05.22 Reported by 白井邦彦
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