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【J1:第12節 浦和 vs 鹿島】レポート:「勝つのが不可能だった負け試合」から引き分けに持ち込んだ浦和。システム変更が今後の鍵を握るか(11.05.22)

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5月21日(土) 2011 J1リーグ戦 第12節
浦和 2 - 2 鹿島 (16:03/埼玉/37,521人)
得点者:13' 西大伍(鹿島)、62' 増田誓志(鹿島)、67' 高崎寛之(浦和)、69' マゾーラ(浦和)
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あの展開からよく追いつけた。おそらく多くの方がそういった感想を抱いたに違いない。浦和は2試合連続の引き分けで5試合白星から遠ざかることになったが、鹿島に2点を奪われる敗色濃厚の状況から執念の粘りを見せた。「勝つのが不可能だった負け試合を後半に2−2まで持っていったことについては選手を称賛したい」とペトロヴィッチ監督も最後まであきらめなかった選手たちを評価した。

浦和はこの日も序盤から苦しい戦いを強いられた。鈴木啓太をアンカーに置く4−1−2−3でスタートしたが、そのシステムは攻守に渡って機能しなかった。前からプレスをかけようとしても、どこに追い込んでどこで取るかというのがはっきりしていないので簡単にかわされてしまい、前後分断で中盤は間延び。「アンカーの両脇のスペースが空いていて、相手のFWが動き回る選手なのでスペースを使われた」と永田充が語ったように、危険なスペースを鹿島の攻撃陣に提供して己の首を絞めてしまう。「鹿島の選手が嫌な位置にいたので我慢の時間になった」という高橋峻希のコメントからも守備対応で苦しんでいた様子がうかがえる。

そして攻撃面ではゲームを組み立てることがまったくできていなかった。今週の練習でDFラインからのビルドアップを確認する時間が設けられていたが、実戦で生かされることはなかった。システム的にアンカーの鈴木がボールを引き出さないと中盤は作りにくいのだが、鈴木は守備を持ち味としている選手であり、展開力を武器にはしていない。キックの精度、パスをもらうための動きにも課題があるため、DFラインの選手としてはパスが出しにくい。そうなると苦し紛れに前に放り込むしか選択肢はなくなり、ロングボールを放り込んでは跳ね返されるという形を繰り返す。業を煮やしたスピラノビッチが自分で運んで前に当てようとする場面も何度かあったが、どちらにしても鹿島にボールを渡す結果になった。

単純なミスも多かった。せっかくセカンドボールを拾ってもすぐに奪われ、キックの精度を欠いて相手にパスしてしまう場面もあり、増田誓志に「単純に浦和がボールを渡してくれていた回数が多かったし、それで楽になったときもあった」と言われてしまう。GKがスローで相手にボールを渡してしまうという信じられないシーンもあった。

前半は完全に鹿島が試合を支配していた。特にピッチを幅広く動いていた興梠慎三が様々なエリアで起点となり、攻撃を活性化させていた。コンディション不良が目立っていた小笠原満男はベンチからも外れたが、代わりにスタメン起用された増田誓志がうまくゲームを作っていた。13分にはタイミングも精度もドンピシャのサイドチェンジを見せ、西大伍の先制点を演出している。
過去4試合全てで先制点を許していた守備陣は、変なところでギャップを作ったり、ポジショニングがおかしい瞬間もあったりと不安定なところも覗かせたが、浦和の攻撃が単調だったことも手伝って危ない場面は作らせなかった。

後半、浦和は鈴木とエスクデロ セルヒオの2人を山田暢久、マゾーラに代え、中盤の構成を山田と柏木陽介のダブルボランチに変更。機能していなかったポジションに修正を加えると、前半に比べれば多少はボールが回るようになったが、1点リードしている鹿島がブロックを作って待ち構える形を取っていたので、効果的な仕掛けはあまり見せられなかった。

そして62分、鹿島は追加点を奪う。右サイドの野沢拓也から本田拓也を経由して左サイドのアレックスに展開、そして興梠から再び右の野沢に戻すと、最後は野沢のグラウンダーのクロスをゴール前で完全フリーになっていた増田が「だれでも決められるボール」を押し込んだ。鹿島の崩しは完璧だった。

これで試合は決まったかに見えた。鹿島が完全に主導権を握っている。浦和は何もできていない。その状況で0−2。ペトロヴィッチ監督が「勝つのが不可能だった負け試合」と表現したのも納得の展開だったが、ここから浦和が挽回するからサッカーはやはりおもしろい。ペトロヴィッチ監督が64分に高崎寛之を投入して2トップに変更すると、この采配が奏功した。交代からわずか3分後、原口元気のパスを受けた高崎が左足でゴールネットを揺らした。

それは高崎の個人技がもたらしたファインゴールだった。だが、同時に鹿島は「やはりどこかおかしい」と感じざるをえないシーンでもあった。高崎のゴール自体は非常に素晴らしいものだったが、原口のアシストはカウンターから始まっていた。いつもの、嫌らしいまでに試合運びのうまい鹿島であったなら、0−2とリードしている状況ではあのようなカウンターを不用意に許すことなどなかったはずだ。「ブロックを作ってまずは失点しないようにして、カウンターで3点目を狙うというのが鹿島だけど、そういう意識が欠けていた」と青木剛。それは今季の苦しい状況が浮かび上がってくるような失点の仕方だった。

これで勢いに乗った浦和はさらにその2分後、今度はマゾーラが個人技でスタジアムを沸騰させる。左サイドで高崎のパスを受けると、クロスしか選択肢がないような角度から左足を一閃、ニアを豪快にぶち抜いた。「本当はクロスを入れようと思ったが、突発的な判断で、瞬間的に蹴った方がチャンスになると思った」というスーパーゴールで浦和は同点に追いついた。

浦和はシステム変更がピタリと当たった。手も足も出ない状況からエジミウソンと高崎の2トップに変更すると、怒濤の猛攻を見せた。試合後、複数の選手が4−4−2の方がやりやすいと口にしていた。マルシオは「後半にシステムを変えたことでFWもやりやすかったと思う。今後も同じシステムでやっていけばチームの状況は変わっていく。いいきっかけになったと思う」と力を込める。今季2勝目を挙げることはできなかったが、一寸先も見えない暗闇の中に差し込んだ一筋の光。選手との対話を重んじる指揮官が今後どのような決断を下すのか、注目したい。

以上


2011.05.22 Reported by 神谷正明
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