5月21日(土) 2011 J1リーグ戦 第12節
名古屋 0 - 0 柏 (16:03/豊田ス/21,506人)
スカパー!再放送 Ch181 5/22(日)深00:00〜
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「レイソルが今年戦ってきた中で、一番ハードで難しい相手だった」
変幻自在の戦術を操り、この日も的確な指示で試合を優位に進めた敵将が脱帽した。昨季のJ2王者にして現在のJ1首位チームに対し、続出する負傷者と過密日程に苦しむ昨季のJ1王者が見せたのは気迫と執念。攻撃的志向の強いストイコビッチ監督に、0−0のスコアレスドローを「悪くなかった」と言わしめた名古屋は、激しさを前面に押し出すことで公式戦での連敗を止めてみせた。
前節でDFラインの要である増川隆洋が負傷し、もはや野戦病院と化した名古屋だったが、この日は朗報も舞い込んでいた。4月29日の川崎F戦で負傷した田中マルクス闘莉王が戦列に復帰し、いきなりスタメンに名を連ねたのだ。プレシーズンに疲労骨折が判明し、長らく欠場が続いていたダニルソンも前節で途中出場し、今節ではスタメンに復帰。守備を安定させ、さらにはビルドアップでも力を発揮する2選手が戻ってきたことは、名古屋にとって何よりのグッドニュースだった。
開幕から3連勝、1敗を挟んでまた連勝と勢いに乗っている柏だったが、その連勝街道を支えた中心人物である主将・大谷秀和が体調不良で欠場。いくつかの選択肢の中からネルシーニョ監督は「シンプルな理由」で19歳の茨田陽生を選び、リーグ王者との一戦に臨んできた。ブラジル流のボックス型の中盤は今季も健在。レアンドロ・ドミンゲスと大津祐樹、田中順也、そして大エース・北嶋秀朗で構成される攻撃ユニットは、兵働昭弘や澤昌克、工藤壮人ら実力者たちが控えから着々と出番を待つ充実ぶりだ。
試合の大勢は、名古屋の“個”対柏の“組織”という図式が支配した。負傷者が多く、本来の4−3−3の布陣が使えない名古屋は、公式戦再開から4−4−2を採用しているが、守備はともかく攻撃が機能した試合は数えるほど。そこに負傷禍が連係・連動不足を引き起こし、組織としての攻撃に暗い影を落としていた。対する柏は攻守に連動性が高く、組織的な守備から鋭いカウンターを発動し、ポゼッションでも名古屋を圧倒。しかし名古屋は個人能力の高さで局面を打開できるため、反撃に転じた時にはさすがの迫力で応戦。特に復帰初戦の闘莉王は抜群の存在感を見せ、バックパスの処理からビルドアップ、そして正確なロングフィードで形勢を挽回することもしばしば。前半は豊富なスタミナでアップダウンを繰り返す田中隼磨とのコンビネーションで、柏守備陣を大いに脅かした。
しかしこの日の両チームは、いかんせん決定力に欠けた。その理由がそれぞれ異なるのはおもしろいところだ。名古屋は攻撃の形が作れないことが問題だった。先の闘莉王のロングフィードも、クロスを上げるチャンスは作り出すものの、ケネディが不在のゴール前には空中戦に競り勝てる選手はいない。かといって玉田圭司と永井謙佑の2トップの技術とスピードを生かす組み立てがあったかといえば答えはノー。久々に攻撃的MFでの起用となった藤本淳吾も、ゲームメイクの面で力を発揮することはできなかった。
一方で柏がゴールを奪えなかったのは、大きな問題があったわけではない。カウンターでもパスワークでも決定機は多く作っており、一言でいってしまえば決定力なのだが、試合後の選手たちの感想を総合すると、名古屋の個人能力に阻まれた側面も否定できないようだ。「今まで(得点が)入ってたところが入らなかった。その勢いというか、ああいうカウンターでは今まで入ってた」とは増嶋竜也の言。前半15分の大津の決定機も、38分の北嶋も、試合終了間際の大津のシュートにしても楢崎正剛にすべてキャッチされた。その他にも決定的なチャンスはいくつかあったが、それらはすべて枠の外。「今まで入っていた」シュートが、名古屋の守備力の前に沈黙した、という言い方もできる内容だった。
いずれにせよ、スコアレスに終わった試合ではどちらのチームにも決定力がなかったと言う他ないが、名古屋の方がより深刻さは大きい。この日放った8本のシュートのうち、枠内シュートは中村直志のミドルシュートと闘莉王がオーバーラップから見せたドリブルシュートのみ。点を取るのが仕事のFWに枠内シュートがなく、また彼らを生かす攻撃が構築できていないことは問題だ。「グランパスのチャンスはクロスからってイメージがあるでしょ? オレはそれを変えたい」という玉田の言葉はその危機感を端的に表している。
名古屋はさらに、この試合でも負傷者を出してしまった。78分に登場した吉田眞紀人が、入って最初のプレーで柏DFの近藤直也と激しく交錯。頭を強く打ち、そのまま退場してしまった。86分にはゴール前の競り合いで千代反田充も頭を打って負傷退場。アディショナルタイムを含めた試合終盤の約10分間を、交代枠を使い切っていた名古屋は10人で戦った。2選手の状態は検査結果が出るまでわからないが、頭を強く打って退場した選手を、すぐさま次の試合で使うことには危険もつきまとう。ようやく闘莉王とダニルソンが戻ってきた矢先の出来事に、経験豊富な指揮官ですら、ただただ驚くばかりだった。
結果としては、アウェイの柏が及第点の勝点1を手にし、ホームの名古屋は青息吐息の勝点1獲得といったところ。その過程で払った代償を考えれば、勝点1は名古屋にとっては割に合わないかもしれない。新たな負傷者と蓄積する疲労、そして出口の見えない攻撃面での不安。それらマイナス要因を抱えながら、名古屋は週半ばに行われるAFCチャンピオンズリーグのラウンド16を戦うため韓国へと向かう(5/25@水原)。正直、18人のメンバーを選ぶことすらギリギリの状態だが、「まずはメディカルレポートを待ちたい。韓国では良い結果を出してベスト8に進めるよう、我々はハードに戦いたいと思う」とストイコビッチ監督は気丈に話した。そこでよりどころになるのはこの試合で見せた激しいファイティングスピリットだ。満身創痍のチームを支えるのはメンタルタフネスしかない。苦戦は必至だが、今こそ名古屋は「Never Give Up For the Win」という指揮官のモットーを体現する時だ。
以上
2011.05.22 Reported by 今井雄一朗
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