5月8日(日) 2011 J2リーグ戦 第11節
F東京 1 - 0 富山 (16:04/味スタ/14,174人)
得点者:81' 羽生直剛(F東京)
スカパー!再放送 Ch181 5/10(火)前08:00〜
☆totoリーグ
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会見場で着座した富山・安間貴義監督は、悔しさと達成感を滲ませていた。「一泡吹かせようと思っていた」。その言葉どおり、F東京は試合終盤まで富山に苦しめられた。
F東京は、ホーム味の素スタジアムで富山と対戦し、1−0で開幕戦以来となる勝利を飾った。途中出場の羽生直剛が81分、ゴールネットを揺らし、チームに380分ぶりの歓喜をもたらした。だが、試合開始から富山の3−3−3−1システムに苦戦。中央を固める守備に手を焼いたのは、この試合が初めてではない。昨夏に対戦した、広島戦でも同様のことが起きた。中央を固めた相手に苦しみ敗れている。広島のペトロヴィッチ監督は、試合後の会見でこう語っていた。
「外からまったくクロスをあげさせない守備ができるチームは、この世界のどこにも存在しません。ただ私は、コーナー付近からクロスを上げてくれたほうが守りやすいと思っています。時として、クロスがそのままゴールされてしまうこともある。それはサッカーではよくあることです。対戦相手は、我々の佐藤や、高萩、森崎浩のように直接ゴールに繋がるような走りや、そこに出てくるボールを嫌がるものです。それが、脅威になる。サイドというのは、あくまでも二次的なもの。サイドからクロスを上げられて決められると、サイドを崩されたという話になるが、今日は、サイドから何度、クロスを上げられても失点しなかった。サイドから崩された、崩されていないということは戦術的に興味のある話ではない。たとえばバルセロナや、チェルシーのような世界のどの強豪クラブもサイドはやらせていても、自分たちが使われて嫌なところはしっかりと抑えている。サイドは使われても仕方ないと割り切っている。センターバックには弾き返すことができるいい選手がいる中で、彼らは守備をしている。そういうサッカーをご覧になっていただければ分かると思います。信じてください、サッカーにおいてゴールに向かって仕掛けていく中央の攻撃こそ最も危険な攻撃なのです」
外からの攻撃だけでは、相手の守備を崩しきることはできない。DF今野泰幸も、試合前に「速攻と遅攻を使い分けなければいけないし、外からだけではなく、外、中、外と動かして相手の隙を狙わなければいけない」と、話している。F東京は、大きな展開でサイドを攻略しようとしたが、効果的には働かなかった。ゲーム序盤に、サイドチェンジを何度か狙ったが、その多くが相手にカットされてしまっていた。十分にワンサイドに相手を寄せることもできていなければ、中央を経由せずに外から外と急ぎすぎて相手には的を絞りやすい展開になっていたからだろう。ただ、何度かワイドを起点にできた時は、そこから個人技で中央に攻め入ることはできた。しかし、富山の献身的な守備を崩してゴールを割ることはできなかった。
富山の術中にはまりかけていた。だが、富山側にもアクシデントが起こった。「前半の(吉川)拓也にしても、谷田、池端も、本来はずっと残っていて欲しい選手でしたが、全員負傷退場してしまったことはアクシデントでした。見てのとおりDFをベンチに一人もいれなかったのは、一泡吹かせようという思いの表れでアタッカーの選手ばかりを連れてきました」。富山は試合終盤、攻撃を活性化させるはずのカードをすべて負傷退場によって後半開始早々までに使い切ってしまった。これによってゲームプランが崩れた。富山には、限られた選択肢しか残されていなかった。安間監督は、前線を2トップに変更し、2列目の3枚でボランチと、サイドバックの守備を担当させた。2トップは、奪ったボールをショートカウンターで攻められるようにサイドバックの背後に置いてカウンターの機会をうかがわせた。だが、このプランも、機能したのは数回。疲労度が濃くなり、攻め込まれると押し返せなくなってしまっていた。
この状況でF東京ベンチには、カードが残されていた。大熊清監督は「もう少しペナルティエリアに入る人数を増やしたかったので、飛び出す選手を考えていた」と言う羽生を68分にピッチへと送り込んだ。そして、ゴールは生まれた。
81分、左サイドのタッチラインから梶山陽平がスローインで谷澤達也へとボールを投げ込む。この時、ライン際にいた羽生が一気に加速してDFを振り切ると、谷澤がスペースに落としたボールを持ち出してゴール前へと割って入った。羽生は右足を振り抜き、ゴールネットを揺らした。羽生のプレーこそ、この日だけでなく、今のチームに欠けているゴールへと仕掛ける走りだった。
また、羽生は試合後、「それぞれの長所を生かし、短所を補うこと。チームが繋がらなければいけない」と、補完しあう大切さを話している。羽生がリスクを冒して思い切りよく飛び出せたのも、この日、最終ラインの前で防波堤となり続けた、徳永悠平の守備意識の高さがあったからだろう。本来のポジションとは違う2人でも補い合えるのだ。
富山の安間監督は「控え室の前で倒れこんでいた選手たちを称えたい」と語っていた。彼らの「すべてを出し切ろう」と臨んだ敢闘精神と、実力差を補うために走り続けた運動量は素晴らしかった。やることが整理され、その中で次のステージに向けた材料も十分に理解している様子だった。
逆にF東京は、少し前まで当たり前にできていた、ポジションにこだわり続けるプレーが疎かになりかけている。自由な発想を押さえ込むことはよくない。ただ、無秩序とそれは決定的に違う。後方で献身的にポジションを取り直していた今野のプレーも見習わなければいけない。誰かのスペースを空けるために走った選手が、この日、何人いたのか。それも、もう一度見直さなければいけない。一つ一つの細かいプレーが繋がっていく。F東京が掲げた「J1復帰」の前には「強くなって」があるように、何かを疎かにして次のステージに到達することはできない。勝ったからこそ、次の話を始めるべきだろう。
以上
2011.05.09 Reported by 馬場康平
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