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【J1:第9節 仙台 vs 福岡】レポート:善戦を続ける福岡の攻勢を凌いだ後で、仙台は終盤に逆襲。CKのチャンスで得た1得点を守りきり、3連勝で首位に立つ。(11.05.04)

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5月3日(火) 2011 J1リーグ戦 第9節
仙台 1 - 0 福岡 (14:03/ユアスタ/15,859人)
得点者:78' 赤嶺真吾(仙台)
スカパー!再放送 Ch185 5/5(木)前06:30〜
totoリーグ
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このサッカーで、どうして結果が出ないのか分からない。試合序盤から積極的に仙台に仕掛けてくる福岡を見ていての、筆者の偽らざる感想である。
一番の決定機は開始7分に掴んだセットプレー、丹羽大輝がフリーでのヘディングを放った場面かもしれないが、仙台のCKをクリアした後、松浦拓弥がドリブルで抜け出して独走という、相手チームは違えでも2008年のJ1・J2入れ替え戦第2戦の悪夢を彷彿とさせる場面(今回は粘り強く食らいついた朴柱成がシュートを阻む)などもあり、仙台は幾度も肝を冷やさせられる。
また、そうした素早い攻めの一方、ボールを握った時間帯でも、中町公祐が中央から運動量豊富に左右スペースへフォローに回り、巧みなボールタッチを絡めて起点を作る。仙台は前節同様、守備からカウンターという流れで押し返そうと試みていたのだが、福岡のこうした攻めからなかなか意図の通りにボールを奪うことができない。
その後福岡は不幸なことに、中町が前半終了間際に左太腿裏の肉離れで交代を余儀なくされるものの、代わりに入った鈴木惇が後半に入ると彼なりの持ち味を発揮。前半の福岡の要素に加え、正確なロングパスを生かした逆サイドへの散らしや、セットプレーでの高精度のキックで福岡のチャンスを次々生み出す。右サイドでは田中佑昌が、左サイドでは松浦が中央を伺う脇を、キム ミンジェが駆け上がってリズムが生まれ、さらに中央でも短いパス交換から岡本英也が抜けだし、あわやGK林卓人との1対1という場面も。アウェイのユアテックスタジアム仙台で、ここまで福岡がペースを掴むとは。仙台は連勝の川崎F戦、浦和戦と比べても、比較的苦しい試合展開を強いられていた。

だが試合が終盤にさしかかるにつれて、今季の福岡がこれまでの素晴らしい戦いぶりと共に抱える、もう一つの姿が顔を出し始める。
今季、5年ぶりにJ1での戦いに臨んだ福岡だが、昨年の仙台もそうだったように、J2生活が長かったチームは、J1の様々な壁に直面する。
その一つが「試合終盤での体力」。常に格上との戦いに臨む意気込みから、毎試合キックオフ時には高いテンションを元手に善戦を演じられるものの、その中で各々が、知らず知らずのうちに力を消費してしまい、終盤に入ると一気に苦しさが襲ってくるのだ。
そして福岡はまさに今その壁と戦っているのだが、今節も残念ながら、仙台にそこをつけ込まれることになった。序盤からの攻勢が一段落した63分、仙台はボランチの高橋義希に替えて、FWの中島裕希を投入。梁勇基が一時的にボランチへとポジションを一列下げることになったのだが、これが仙台にとっては「反攻」の合図だった。あと一歩と手が届きそうなところに見える、仙台ゴールの攻略のために、さらに攻勢に出たい。しかし足は止まり始める。このジレンマでバランスが崩れ始めた福岡の守備に対し、この日は赤嶺真吾、太田吉彰があまり出せなかった「裏への抜けだし」を持ち味として生きている中島の投入は、冷酷なまでに効果を発揮した。攻撃でこそ持ち味を発揮できる鈴木も、試合後の会見で篠田善之監督が振り返ったように、守勢一方になると存在感を発揮しづらい。福岡の布陣は間延びし、そのぽっかり空いた中央部でボールを引っかけ、あるいはクリアボールを拾えるようになった仙台は、次々とチャンスを掴みだした。
そして78分。試合を決めたのは、速攻から得た左CK。梁が放ったボールは一旦ファーサイドへと大きく振られ、それを鎌田次郎が頭で中央へ押し返す。振られたボールに反応し、バックステップで戻ってきたGK神山竜一は、ポジションを取っていた角田誠を含む両軍のフィールドプレーヤーの密集に引っ掛かり、 山なりに戻ってきたボールに十分な対応ができなかった。こうした状況の中、一旦は競り合いで倒れていた赤嶺が、鎌田からの折り返しに素早く反応し、足首の捻挫を抱えた体でボールに飛びかかる。競り勝った頭が捉えた球は、空中からこぼれ落ちるかのように、ゴール右隅へと吸い込まれた。結果的にこれが決勝点に。
仙台にとっては直後の84分、対面する山形辰徳との小競り合いによって、(どんな背景があったとはいえ)無駄な2枚目の警告を受けた朴柱成が退場となるが、残った10人は朴の分まで冷静に振る舞い、相手のファールを誘うなどしながら、5分という長いアディショナルタイムを凌ぎきった。仙台はこれでリーグ再開から3連勝(手倉森監督指揮下のJ1での3連勝は、2年目にして初めてのこと。クラブとしては延長勝ちを含む5連勝というのが2002年にあるが、90分以内での3連勝は同年と共にクラブのタイ記録)。一方福岡は開幕から4連敗、我慢はもうしばらく続く。

試合後、個人的に印象に残った光景が、監督会見の場にあった。
他のクラブはよく知らないが、仙台の監督会見では時折、会見を終えた監督を、チームを見続けている仙台の取材陣が拍手で見送る。
ただ基準は本当に曖昧。勝利を上げただけでは発生せず、大勝、完勝、劇的な勝利の場合のみ、自然発生的にそれは起こる。あるいは退任が事前に報じられた監督の最終節後会見で、労いをこめて送られることもある(2004年のベルデニックや06年のジョエル・サンタナはこの例)。
川崎F戦、浦和戦はそれが発生した。ただこの2試合はそれぞれ、震災によって「開催自体に意味がある試合」であり、また在仙メディア以上に、中央からのメディアが多く詰めかけたことを差し引かないといけない。
そして今節だが、仙台のメディア中心となった記者席から、拍手は起こらなかった。終盤の盛り返しは見事だったが、やはり序盤、福岡にペースを掴まれたことは、反省点として考えなければならない。少なくとも筆者はそう思っていた故に、妥当な反応だと思えた。
会見で手倉森監督自慢のダジャレが炸裂したことも含め、チームの周囲は「日常」に戻りつつある。震災との戦いはこれからも続くが、そうした視点とは別に、今節で首位に立った仙台にはこの先、以前のように「サッカーの内容」への視線が強まっていく。そんな日々が帰ってくる予感がする。

以上
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