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【J1:第9節 川崎F vs 磐田】レポート:一つの課題を改善した川崎Fが、劇的な勝利をおさめる。勝点1が目前の磐田は、終了間際の決勝弾に泣く(11.05.04)

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5月3日(火) 2011 J1リーグ戦 第9節
川崎F 1 - 0 磐田 (14:05/等々力/18,449人)
得点者:90' 小林悠(川崎F)
スカパー!再放送 Ch181 5/6(金)後01:00〜
totoリーグ
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サッカー界の用語の一つにM-T-Mというものがある。試合(Match)をして、課題を抽出し、それを修正すべく練習(Training)を組み立て、また試合に臨む。

磐田を迎えたこの一戦に向け、川崎Fの選手たちは課題を明確にしていた。そのひとつが、ボールサイドへの選手の過度の密集の解消だった。例えば、プレビューでも取り上げた小宮山尊信の「この前の試合(名古屋戦)で言えば、局面(ボールサイド)で寄りすぎていた。そこであえて(フォローに)行かないとか、個でやらせてみたり試してみたい」との言葉がそれを示しており、だからこそ、この試合ではそうした過度の密集をどの程度まで修正しているのかがポイントと考えていた。そして川崎Fは磐田とのこの試合でその課題を修正していた。

試合は負傷によりメンバー外となった稲本潤一に代わり中村憲剛がボランチに入る形でスタートしており、それがこの試合のポイントのひとつとなった。その中村とコンビを組む柴崎晃誠は「横をワイドに使い、攻めようと思っていました。それは修正しようとしていたところで、それができたと思います」と述べている。また、中村も「左サイド、コミ(小宮山)とかコウジ(山瀬)とかが持ったら勝負をさせようと話してた。1対1で仕掛けられる選手なので。4〜5人でなくても1〜2人でやれる」と話している。これは、過度にボールサイドに集中してきたこれまでの戦いを転換したものであり、記者席から見ていて分かる程度には幅を使って攻撃できていた。その結果としてか、川崎Fは磐田を圧倒し続ける。また、そうした傾向に輪を掛けたのが、前半30分の山本脩斗の退場であろう。15分に1枚目のイエローカードを貰っていた山本は、田坂祐介へのラフプレーで2枚目の警告を受け退場に。一人少ない磐田は、那須大亮が「攻められるのは仕方ないが、ワンチャンスを生かせるのかどうかだった。ラインをコンパクトにして、それを続けていた。最終的にゴール前で跳ね返せばいいと思っていたし、どうにか中では跳ね返せていた」と話す通りある程度割り切って守備に重点を置いており、その磐田を川崎Fが押しこむ展開になったのは両チームにとって必然的な流れだとも言えた。

川崎Fは修正を施した戦い方で相手を圧倒するという形で成果を出し、磐田の3本のシュートに対する23本のシュートという数字を出している。そういう点で一定の評価を与えられる試合ではあった。ただその一方で、放つシュートの大半が不正確であり、枠を捉えきれていないという課題が出てきたのも事実であろう。枠に飛ばすことができなければ、シュートを何本打っても得点することは無理である。

また、これまでの2試合同様に数少ない被シュートの場面で決定機を作られており、この試合も前半20分に訪れた磐田のコーナーキックから決定的なシュートを放たれているのが気になった。ちなみにこのシュートは、負傷の杉山力裕に代わり出場した相澤貴志のファインセーブによって事無きを得ている。

そうした流れを踏まえて考えると、後半87分の小林悠のヘディングシュートはもし川崎Fが勝点3を奪えなかったとしたら批判されるべきプレーの一つだった。後半78分にピッチに入った小林は、相馬直樹監督から「左サイドからかなりクロスは上がっていた〜中略〜右サイドのポジションから、思い切って突っ込んで、必ずチャンスはくるから」との指示を受けていた。那須の言葉にもあるように、一人少ない磐田は引いて守る事で、川崎Fのクロスボールをことごとく中で跳ね返し続けていた。だからこそ中に飛び込む枚数を増やすのは合理的な解決策であり、それを実践すべく小林は右サイドから飛び込み続けていた。そんな中での87分のヘディングシュートは「目が合った」という中村からの絶妙なクロスを「ジャストミートしすぎた」事で外したものだった。千載一遇のチャンスだとも思えたこのシュートを外した事で、誰もが引き分けを覚悟した90分に、再び小林に好機が巡ってくる。

「よく覚えてないんです」と話すその場面について、報道陣からジュニーニョのシュートのこぼれ球だったとの説明をうけると、小林は「どんなゴールでもゴールはゴール。勝ちに結びつくゴールだったのでよかった」と穏やかな表情で語った。

試合展開や時間帯を考えると、勝利を決定づける事になるであろうシュートの直後。小林は咆えながらサポーターが待ち受けるGゾーンへと駆け寄り、サポーターと後ろから追いついてきた味方選手たちにもみくちゃにされる。第1子が誕生したばかりの菊地光将と約束していたというゆりかごダンスを完全に忘れてしまうほどの喜びだったという。大きな失望のあとの望外の歓喜である。その尋常ならざる感情の振れ幅を考えれば、事前に用意していたパフォーマンスを忘れてしまっても、それは当たり前すぎる反応であろう。

試合はその後の磐田の猛攻をしのいだ川崎Fが逃げきり、勝利。川崎Fが連敗を2で止めることとなった。

開幕から川崎Fは一つずつ問題点を解決してきた。少なかったシュートを増やし、狭い範囲に固まっていた戦いを転換した。ただ、それでも新たな問題点は浮かび上がってくる。シュートを枠に飛ばすという基本的な課題だが、その課題に劇的な展開の勝利を受けて取り組めるという点で、大きな意味のある試合だったと言えそうだ。

以上


2011.05.04 Reported by 江藤高志
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