4月30日（土） 2011 J2リーグ戦 第9節
草津 1 - 0 熊本　（13:04／正田スタ／3,258人）
得点者：17' 熊林親吾（草津）
スカパー！再放送 Ch183 5/1（日）後03:30〜
☆totoリーグ ｜中断期間を振り返るJ2編
----------
決してキレイなサッカーではなかった。だが草津の選手たちは勝利を目指して必死に戦い抜いた。そして、熊林親吾のゴールをチーム全員で守り抜き、ホームのサポーターに勝点３を届けてみせた。中断明けの特別なゲームとなったホーム開幕戦で、草津はひたむきにプレーすること、チームが一つになることの意味をピッチで表現した。

草津は序盤から熊本の高さに苦しみ続けた。トップでターゲットとなる長沢駿を抑え込むことができずに守備ラインはズルズルと後退していく。13分には長沢のヘッドがポストに当たるなど草津は肝を冷やす時間が続く。「熊本、強し」。スタジアムに漂い始めた、そんな雰囲気を払拭したのは熊林親吾だった。

16分、草津はアレックスが右サイドでボールをキープ。ＤＦ二人に囲まれながらもサイドを突破、ゴール前へマイナスのパスを送る。そのボールにニアで反応したのは萬代宏樹だった。しかし、その後方から「スルー」の声が飛ぶ。萬代はその声を信じてシュートフェイクから絶妙なスルー。そのボールを２列目から走り込んだ熊林がゴールへと突き刺す。「アレックスがパスを出した瞬間にゴールがイメージできた」（熊林）。草津は、３人のコンビネーションで熊本のゴールネットを揺らしゲームのムードを一変してみせる。

だが、その後は我慢の時間帯が続いていくことになる。正田スタの荒れたピッチを嫌った熊本は、中盤を省略し前線へロングボールを放り込んでくる。「熊本のロングボールによって中盤の選手も下がり気味になり前線との距離が開いてしまった」（副島監督）。草津はゴール前で奪ったボールをうまく繋ぐことができずに前線へロングボールを返していくのが精一杯。ゲームは、両陣地をロングボールが飛び交う展開へと移行していく。

しかし、草津の守備陣は辛抱強く、ロングボールを跳ね返し、セカンドボールに食らいついていった。「こんなに長い時間、ロングボールを入れられ続けたことはないので難しかったが全員で声を掛け合いながら守りきった」（櫻田和樹）。草津はバイタルを固めて熊本の捨て身の攻撃に応戦、最後はラフィーニャを投入し前線でキープしアディショナルタイム４分間（前半１分、後半３分）を加えた９４分間を守り抜いた。

熊本の高さはゲームを通じて脅威だった。前線でターゲットとなった長沢は高さだけではなく強さ、さらにはうまさも備えていて一人で抑え込むのは至難だった。さらにその後方には同じく１９０センチ超えのファビオが控え、空いたスペースへ飛び込んでくる。この日は先発した仲間隼斗を含めた３人の連携が噛み合わなかったが、歯車が噛み合えば破壊力は増す。高木監督は今ゲームで齊藤和樹、田中俊一のルーキー二人を途中起用したが、熊本には伸びシロのある若いタレントも多く、シーズンを重ねるにつれチーム力は増すことだろう。

一方、草津は中断明けから指揮官が抜擢している右ＳＢ古林将太と左ＳＢ永田拓也が、難しいゲームで特長を発揮した。古林は度胸満点のプレーでチーム活性、迫力ある攻撃参加でボールを運びチャンスを作った。また永田は闘志溢れる守備を披露、球際で激しく体を寄せて左サイドを死守した。１９歳の古林と２０歳の永田の若き両ＳＢが今季どこまで成長するのか。彼らの成長がチーム飛躍のカギを握っている。

再開前、草津は必ずしもチーム状態が良いわけではなかった。しかし、チーム一丸となった戦いぶりで中断明け連勝を果たし、順位は２位千葉、３位湘南らと勝点で並ぶ６位まで浮上した。４月末とは言えまだシーズン序盤で順位に一喜一憂する時ではないが、最下位に沈んだ昨季を考えれば、チームは希望に満ちている。東北出身で東日本震災の支援活動に力を入れる熊林は「支援は今だけではなく継続が大切。僕たちも継続して良い結果を残して勇気が届けられるように頑張る」を話した。中断期間で草津は大きく変わった。この戦いを継続していくことに大きな意味がある。

以上

2011.05.01 Reported by 伊藤寿学