4月12日（火）AFCチャンピオンズリーグ2011 名古屋 vs アルア（19:00KICK OFF/瑞穂陸）
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国内外のタイトル二冠を狙うJリーグ王者が、アジアの舞台で苦しんでいる。アウェイ中国での初戦でまさかの敗戦を喫し、2戦目の韓国Kリーグ王者・FCソウルには開始早々に先制するも後半に追いつかれた。2010年のJリーグを席巻した勝負強いチームは、いまだその本来の姿を見せられずにグループFの最下位に沈んでいる。その状況で迎える中東UAEのアルアインとの一戦は、負ければグループリーグ突破から大きく後退する崖っぷちのゲームとなった。

前節のソウルとのホームゲームでは、エース玉田圭司の負傷欠場を受け、名古屋は思い切った策に打って出ていた。従来の4-3-3の布陣を4-4-2　に変更し、ツートップにケネディと新人の永井謙佑を起用。4-4-2はストイコビッチ監督の名古屋にとっては勝手知ったるフォーメーションだが、布陣変更の理由は「永井をゴールとケネディに近いところでプレーさせたかった」(ストイコビッチ監督)という異例のもの。昨季のJリーグ得点王ではなく、ルーキーFWを生かすためのシステム変更は、永井がその快足を生かしてプロ初ゴールを決めたことで半分は成功といったところ。後半は永井の足も、ケネディの高さも、田中マルクス闘莉王や増川隆洋のセットプレーも封じられ、追加点は奪えなかったことから考えれば、布陣変更は奇襲としての効果を挙げるにとどまった。1週間のトレーニングを経て、“永井システム”がどれほどブラッシュアップされているかは、勝敗に直結する要素となるだろう。

対するアルアインもまた崖っぷちである。現在の順位は3位だが、名古屋との差は得失点差のみ。いまだ今季ACLでの得点はなく、チーム状態としては名古屋よりも厳しいといえる。国内リーグでも12チーム10位と低迷しており、こちらも得失点差はマイナス。失点が多いというよりは得点が少ないといった様子で、その原因はエースストライカーの交代にある。リーグ序盤の10試合で7得点を挙げたホセ・サンドが移籍し、得点源を失ったチームはブラジル人のエリアスとルーマニア人のバデアを補強したが、チームの結果にはつながっていない。とはいえエリアスは加入後の4試合で3得点。直近のリーグ戦では2得点でチームを11試合ぶりの勝利に導いており、決して侮ることはできない。中東特有の身体能力の高さにも警戒は必要だろう。初戦、2戦目と東アジアのフィジカルに手を焼いた事実を、忘れてはいけない。また、アルアインの監督は2006年にFC東京を率いていたガーロ氏であることも付け加えておく。

しかし名古屋が集中すべきは自分たちのスタイルを貫くこと。さらに言えば、本来の強さを取り戻すことである。真剣勝負から離れ、試合勘も鈍っている現状では難しいことかもしれないが、意識ひとつでプレーの質は変わる。五分の局面でボールを奪う気迫があるか、ゴールを奪おうという意志があるか、そして、絶対に勝つという執念があるか。それ次第で名古屋はあの憎らしいほどに強かった昨季の姿を取り戻せるはずだ。ソウル戦の後、闘莉王が記者に向かって吠えていた。「失点した相手が前に出てくるのは当然。その時こそチャンス。それぐらいわかっているはず。相手にとって嫌なことをする。何のためにやっているんだ」。それこそが名古屋が王者となった最大の理由であり、強さの秘訣だったのだ。

今や得点源としての期待を一身に受ける永井にも注目は集まるが、彼を生かすも殺すもチーム次第。ソウル戦の後半に背番号18の存在感が薄まったことを考えても、新人に過度の期待は禁物だ。まずはしっかりとした守備からポゼッションし、ゲームを支配する。分厚いサイド攻撃を構築して、中央の攻撃態勢を整える。名古屋のサッカーはある意味で基礎の積み重ねである。Ｊ屈指のタレント集団に、それができないはずはない。勝てば名古屋は今季の公式戦初勝利となる。勝利に勝る良薬なし。ACL巻き返しのきっかけをつかむためにも、Jリーグ王者が狙うのは勝点３のみだ。

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2011.04.10 Reported by 今井雄一朗