3月6日(日) 2011 J2リーグ戦 第1節
横浜FC 1 - 2 富山 (16:04/ニッパ球/11,306人)
得点者:17' 藤田祥史(横浜FC)、32' 苔口卓也(富山)、70' 黒部光昭(富山)
スカパー!再放送 Ch185 3/7(月)後04:00〜
☆2011開幕特集|totoリーグ |顔写真クイズ
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ようやく迎えた開幕戦。開幕戦は、それまでキャンプや練習試合で積み上げてきたことが最初に問われる試合である。横浜FCにとっては、昨シーズンからの岸野サッカーの継続と補強した新戦力もたらすプラスαにより昇格に値するチームであるかどうか。富山にとっては、昨シーズンの18位、71失点の低迷から、積極性をもたらす新フォーメーション「3-3-3-1」を携えての躍進だ。このゲームで、この問いに結果を出したのは富山だった。
もちろん、サッカーに万能なフォーメーションなどなく、「3-3-3-1」でも「4-4-2」でも、そのフォーメーションだけで試合に勝てるわけではない。重要なことは特徴を信じて試合で与えられた戦術を完遂すること。富山はロングボールを使いながら、3-3-3-1の特徴を生かして高い位置でプレッシャーを掛けることに専念した。横浜FCは、本来の繋ぎながら主導権を取る戦術より、3バックを取るチームを相手にする時のセオリー通り、両サイドのDFラインの裏を使う戦術を優先。その結果、ゲームはロングボールを蹴り合う展開となった。
試合の立ち上がりは、富山が主導権を握り、セットプレーからチャンスを得る。しかし、柳沢将之がサイドでの縦パスを狙いカットできるようになると、次第に流れは横浜FCに移る。そして、17分、サイドチェンジのボールに反応した藤田優人がヘディングで右サイド裏のスペースに流し込むと、富山ディフェンダーが反応にもたつく間に、柳沢が長い距離を走りボールを奪取。そのままボールが藤田祥史に渡ると冷静にゴールに流し込み、横浜FCが先制する。その後も、横浜FCの守備がハマり、富山にロングボールを蹴らせないようになると、試合は横浜FCがコントロール。岸野監督が「予定通り」と述べた通りの展開だった。
しかし32分、横浜FCがDFラインでボールを回す場面で、富山が前線でプレッシャーを掛けると、左サイドの宮崎智彦にボールが渡った時に大西容平がボールを奪取。そのまま苔口卓也にボール渡すと、一度はGKの1対1でポストに当てるが、跳ね返りを冷静に流し込み同点に追いつく。「色気を出して中途半端になった」というように、繋ぐところと安全に行くところの使い分けでミスが失点に繋がった形となった。一方で富山にとっては、練習通り、狙い通りの形であり、このゴールが富山に大きな勇気を与えることとなる。
そして後半に入ると、富山の3-3-3-1はより輝きを増すことになる。この日横浜FCのボランチの一角に入ったカイオにボールが入ると、富山は常に人数を掛けてカイオの左足のプレーを切る。その結果カイオがDFラインにボールを戻すところを、前線でプレスを掛けるというプレーを繰り返し、横浜FCのパスワークを封じる。横浜FCとしては、狙いというよりも繋げないためにDFラインからロングボールを蹴ってしまう状態に陥り、攻撃のリズムを失ってしまう。ゲームの主導権は富山に移り、この流れで69分に富山のロングボールに反応した苔口を横浜FCのGK関憲太郎が倒しPKを獲得。このPKを黒部光昭が冷静に決めて富山が逆転に成功。その後も、リズムを取り戻すべく、横浜FCは三浦知良、西田剛、野崎陽介を投入するが、ロングボールで攻めるのか繋ぐのかという意思統一が不十分なまま時間は経過。最終的に、富山が逃げ切りに成功して貴重な開幕戦勝利を収めた。
横浜FCにとっては、富山の安間貴義監督の術中にハマる形で、不完全燃焼のまま敗戦する形となった。ボールが中盤の頭上を行き来する展開で、中盤のつなぎで横浜FCが得意とする形が取れない時に、どのように戦い方を変化させていくのか。この点の考え方を徹底させることが課題として残った。上手い選手が数多くいるだけに、プレーの選択肢は多い。しかし、それが統一されていなければ、統一されているチームに対して遅れを取ってしまう。この戦い方の徹底こそ「補強によるプラスα」を生み出す第一歩となる。
勝利した富山にとっては、自らの形に自信を得ることができる貴重な逆転勝利となった。今後対戦相手によって3-3-3-1のフォーメーションや戦術は分析されていくと思われるが、自らの戦術を貫くことが結果に繋がるという実感こそ、これからチームを向上させる段階の富山にとっては貴重な体験となる。次節のホーム開幕戦である徳島戦にこの確信をぶつけていきたい。
とにもかくにも、2011年のシーズンは開幕した。富山が見せたパフォーマンスにJ2の進化の可能性を感じるゲームとなった。富山は自信をホームに持ち帰り、横浜FCは課題を解決し、次の試合も両チームにとって成長が確信できる試合になることを期待したい。
以上
2011.03.07 Reported by 松尾真一郎
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