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いよいよＪリーグが開幕する。待ちに待った開幕戦で、岐阜は大分と対戦する。今年の岐阜は木村孝洋監督が就任し、新たなスタートを切る。開幕に向けて調整を重ねるチームにおいて、希望と不安要素の2つがはっきりと残っており、木村監督の初陣でそれがどういう形で表面に出るか。ここがこの試合の注目ポイントだ。
まず希望の部分から。希望は一昨年のような躍動感溢れる攻撃が帰って来たことだ。岐阜はもともと一人ひとりの運動量、走力を活かし、高い位置から積極的にプレスを仕掛け、ボールを奪ったら一気に全員が前に出てスピード感溢れるショートカウンターを繰り出す。この高速アタックがサポーターを熱くさせ、『長良川劇場』を実現させていた。
しかし、昨年はゾーンプレスディフェンスを採用し、ボールへの積極的なプレスではなく、全体的に受身に回ってしまったために、ボールを奪う位置が低くなってしまった。攻撃に関わる枚数が少ないために、全体的に攻撃で閉塞感が生まれていた。
しかし、「キャンプではボール回しと対人プレー、とにかく走ることを重点的に徹底してやった。監督は走ることをベースにした練習が多くて、プレスでも相手サイドバックに対してサイドハーフが積極的にプレスに行くなど、前への圧力を意識するようになった」と嶋田正吾が語ったように、今年は守備の形がゾーンプレスではなく、ボールや人に対するプレスに変わったために、より前からの積極的なディフェンスが可能になり、攻撃に関わる枚数が増えた。
高い位置で奪って、全員が走りきる。これをキャンプから徹底したことで、トレーニングマッチでもゴールを量産し、先週の磐田とのプレシーズンマッチでも決定的なシーンを何度もつくり、2ゴールを挙げた。試合後、「いい時の岐阜が戻ってきた」と嶋田が語ったように、一昨年の一人ひとりが長い距離を走って、ゴールに一直線に向かっていくショートカウンターが帰って来た。開幕戦ではこのショートカウンターのシーンをどれだけ多く見せられるか。ここが大きなポイントとなる。
一方で不安要素は失点の多さ。トレーニングマッチでも失点が多く、磐田戦も4失点を喫している。失点パターンは、高い位置でボールを奪いに行く当然のリスクとも言えるカウンター。全体が前掛かりになっている状態でボールを失い、ポジショニングがあいまいで簡単にカウンターを受けてしまうシーンが多く見られる。これには木村監督も「攻撃の際に相手が何人残っているのか、そのために何人残るべきかを考えて対応すべき」と苦言を呈した。昨年以上に守備面での状況判断が求められ、センターバックのラインコントロール、ボランチのカバーリングに掛かる負担は大きくなる。これをどこまで成熟させられるか。まずは開幕でその度合いと、どう改善していけるかをしっかりと見極めたい。
対する大分は、ＤＦラインにてこ入れをしてきた。どこでもこなす攻守のユーティリティー藤田義明が磐田に移籍したが、水戸から若きセンターバック作田裕次、攻撃的サイドバックの藤川祐司を獲得。彼らがどう機能するか。個人的にはＦＷ森島康仁とＭＦ井上裕大に注目したい。森島は昨年、思うようなプレーができず、わずか2ゴールに終わってしまった。今年は背番号を慣れ親しんだ20番に変更し、心機一転で新たなスタートを切らんとしている。U-20日本代表でチームメイトだった、香川真司（ドルトムント）、槙野智章（1FCケルン）、安田理大（フィテッセ）らが世界で活躍し大きな刺激を受けており、その決意は並々ならないものがある。井上は昨年、飛躍の時を迎えた。ボランチで定位置を掴むと、豊富な運動量と的確なポジショニング、展開力で大分の攻守を支えた。今年も安定したプレーを見せられるか。大分の躍進にはこの2人のキーマンの奮起が欠かせないだけに、開幕の出来に注目だ。
両チームともに注目点が多い開幕戦。果たしてスタートダッシュを最高の形で切れるのは、どちらのチームか。国体に向けての改装が終わり、新しくなった長良川競技場で、2011シーズンの幕が開ける。
以上
2011.03.05 Reported by 安藤隆人
