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熊本のJリーグ４年目のシーズンはホームから始まる。昨年は、高木琢也監督を迎えて守備面を整備したことで、09年にリーグワースト２だった失点が減り、昇格の可能性を残して終盤まで戦った。最終的にはかなわなかったものの史上最高の７位という結果を残し、選手たちはもちろん、サポーターも、昇格という大きな目標を現実的なものとして捉えることができた。クラブが掲げた今年のスローガンにあるように、今季はその目標を実現させるために臨むシーズン。地元の期待もこれまで以上に大きく膨らんでいる。
そのために必要なのが、昨シーズン築いた守備をさらに進化させ、攻撃面をより充実させること。若い選手を中心にバランスよく補強した新加入選手の顔ぶれを見ても、そうした狙いが見て取れる。ここまでのトレーニングマッチでは、オプションのひとつとしてボランチを１枚にした布陣に取り組んでおり、それぞれが特徴を発揮。もちろん、シーズンを通して考えればシステムやメンバーは変化していくと思われるが、開幕が近づくとともにケガで一時離れていた選手たちも徐々に戻りつつあり、高木監督も「それなりの準備はできたと思う」と手応えを口にする。
とは言え、独特の難しさがあるのが開幕戦。東京Vとは過去２シーズン５度の対戦で４勝１敗と勝ち越しているが、「去年もしんどかったイメージがあるし、楽に勝てたゲームはなかった」と福王忠世が話すように、チームの中にはそうした結果にも分がいいと捉えている向きはなく、むしろ誰もが「うまい選手が多い」と口を揃える。３日の練習の前には１時間ほどミーティングを行い、ここまでのトレーニングマッチの映像を見なおし、東京Vの映像も見てイメージを植え付けた。４日の練習も非公開となったため先発の予測は立てづらいが、高木監督も「守備の時間が長くなると思う」と話しているとおり、戦い方としてはあくまで守備から入るというものになる。
ホームでの開幕戦というシチュエーションは、ピッチでプレーする選手たちにとって大きなモチベーションであることは確か。そうした開幕戦ならではの雰囲気に流されてバランスを崩したり、攻撃に軸足を置き過ぎたりするのではなく、「相手の長所を消せるようにハードワークして、主導権を握れない時間も我慢」（片山奨典）できるかがポイントになるだろう。その上で、高い位置で効果的にボールを奪い、早い切り替えでフィニッシュまで持ち込むことが必要。高さのある長沢駿が前線に加わってターゲットが明確になり、チームとしての意思統一も進んでいるが、周囲の選手がいかにいい距離感をもってサポートできるかにも注目だ。
昨シーズンは開幕戦で千葉と引き分け、波に乗れたことでスタートダッシュに成功し、それが最終順位にもつながった。２節以降、京都、岡山、湘南と難しい相手との対戦が続くことも踏まえれば、是が非でも結果を手にしたい今節。「内容が悪くても、勝点を取れるチームになっていかないと昇格は難しい。１年前と比べて、昇格という目標に向けて同じ方向を向けるようになったのは進歩だし、周囲の雰囲気も変わった。その熱を冷まさないためにも、勝ち続けることが大事」。今季自ら志願してキャプテンとなった南雄太はそう話す。
最後になるが、熊本からJリーグクラブを誕生させるにあたって大きな力となった県民運動推進本部の本部長として尽力された、熊本県体育協会長の永野光哉氏が、今月１日に事故で亡くなられた。選手たちはこの試合で喪章をつけてゲームに臨むが、これまでの恩に報いるためにも、熊本からJ1へという思いが実現に近づいていることをピッチ上で表現し、勝利を手にしたい。
以上
2011.03.05 Reported by 井芹貴志
