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「本当にとてつもなく大きいものだということを理解しておかなければいけない」──。今季の目標として掲げる『J1昇格』のことに話を向けると、美濃部直彦監督はひと呼吸おき、自身にも改めて言い聞かせるかのようにそう語った。それはその目標が持つ真の重みを知っているからこその、間と言葉だったように思う。
ただそうした図り知れないほどの重みを感じてはいても、挑む戦いへの迷いなどは一切ない。「僕たちは今年絶対に昇格するという気持ちで戦う」。続いて発せられたストレートな一言からは目指す先へ必ず辿り着くんだという強い意欲と意志がひしひしと感じられた。そして無論それは指揮官だけのものでないはず。選手たち全員もが共有している揺るぎない誓いと言って間違いない。
『J1昇格』をついに目標として明言し臨む今季。徳島にとって勝負の年と呼ぶべきシーズンがいよいよ始まる。
しかしながら、徳島はいきなり非常に難しい戦いを迎えると言えよう。白星発進を欲する気持ちが逆にプレッシャーともなり、のしかかる開幕初戦は、それだけでも難易度の高いゲームだが、そのうえ対する相手がJのニューカマー・鳥取なのだから。彼らの備えているチャレンジャー精神はやはり他チームにはない特別なもの。ひとたび勢い付かせてしまったなら、瞬く間にそれが生み出すパワーの波へとのみ込まれてしまう。実際、6年前を思い返すと、徳島は自分たちがその凄さを体現して見せたではないか（J参戦1年目の開幕戦、アウェイで仙台を3-0と撃破）。
とは言え、最大の警戒こそ払いながらも、徳島がこの一戦ですべきことはシンプルと言っていい。それは、鳥取の出方や戦術がどうあれ、攻守両面において自分たちのサッカーを自分たちから積極的に仕掛けることだ。例えば攻撃なら素早い切り替えや厚みを作る押し上げ、ゴールを意識したボールの動かしで、守備なら高い位置からの連動したプレッシングや早く正確なブロック形成といった部分。シーズンに向けて磨いてきたそれらを集中して実践することが、きっと鳥取の武器としたい勢いを抑え込み、ゲームの主導権と望む結果を引き寄せる力になるはずである。
その上でそうした戦いをするためのキーマンを考えるとこの2人が浮かび上がってくる。3トップの頂点を任せられるであろう佐藤晃大と、2/26に加入が決定（トレーニングには以前より参加）しボランチの位置へ入ることが濃厚なディビッドソン純マーカス。キャンプ時から好調を維持する佐藤がしっかり前線でボールを収められれば、そこへ柿谷曜一朗や杉本恵太らが絡みチームは分厚い攻めが出来るだろうし、急速にフィットしてきているディビッドソンが最終ライン前のエリアに強い睨みを利かせられたなら、守りの安定感はグッと高まり、チーム全体に自分たちのサッカーを展開するための落ち着きがもたらされるに違いない。
確かに榎本達也をはじめ主軸となるべき選手たちをケガで欠くのは痛いところ。戦力的なマイナスを背負っての船出であることは否めないだろう。が、その穴を埋められるだけの能力を持ったピースは他にも十分いる。それに何より、この日を心待ちにして当日スタジアムへ詰め掛けるホームサポーターたちの後押しはそんな不安要素を吹き飛ばす最強の追い風となってくれるであろう。
いずれにしても徳島が狙うは、目指す先へ向けての力強い第一歩となる勝利。それだけだ。
以上
2011.03.04 Reported by 松下英樹
