12月12日(日)Jユースカップ2010:2回戦
F東京 3-0 新潟(13:00/深川G)
得点者:8'武藤 嘉紀(F東京)、10'オウンゴール(F東京)、77'武藤 嘉紀(F東京)
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アルビレックス新潟ユースは4-4-2ではなく、3年生の平松宗をワントップ、1年生の伊藤航希をアンカーに置く4-1-4-1でFC東京の2トップを中央からケアするゲームプランで臨んできた。しかし、立ち上がりからF東京の育成力と今年のユースの安定感を見せ付けられた。8分に武藤嘉紀にヘディングで決められ、10分にはクロスボールがオウンゴールとなり10分で0-2と大きなリードを許してしまう。新潟は4-4-2にシステムを変更して前の人数を増やし、3失点目のリスクを背負って1点を取りに行った。
その後もF東京は何度も決定機を作るが、肩に力が入りすぎていたのか、「打つ前から決まったつもりで喜んでいたのかもしれない」(倉又寿雄監督)というシュートはことごとく外れるか、トップチームのサブを何度も経験している新潟のGK・渡辺泰広の好セーブに阻まれた。この展開のなか、新潟は19分の平松、27分の川口尚紀のシュートが決定機だったが1点を奪うことが出来なかった。新潟は前半のシュートがF東京の13本に対して3本と圧倒されたが、こういう展開のなかでグループリーグを勝ち上がってきたチーム。選手に諦めの雰囲気はなかったが、この日の相手は別格だった。
1回戦の新潟対塩釜FCの試合にケガで練習が出来ない2人の選手をビデオ撮影を含むスカウティングに派遣したF東京・倉又監督。監督自身も選手が撮ったビデオを見てスカウティングをするが、まずは選手にスカウティングレポートを提出させる。これも育成の一環。新潟の選手も意外だった4-1-4-1は予想できなかっただろうが、「相手よりも自分たちのサッカー」(倉又監督)というF東京には、新潟のシステム変更はまったく関係なかった。ワンツーでサイドの裏を取れるし、ボランチの佐々木陽次(3年)、橋本拳人(2年)はボールを失わないし、相手のボールを鬼のように奪いに行くからサイドでも中央でも主導権は意のまま。前半に3点目が取れなかったことは課題だが、無失点という結果の方が重要だった。
後半のF東京は、立ち上がりは前からボールを奪いに行ったが、5分もするとペースを落として守備のブロックをしっかりと作った。90分間フルに前掛りのプレーが出来ないからで、こうなると新潟が使えるスペースと得点の希望はほとんどなくなる。新潟も必死で喰らいつくからF東京の守備がバタつくこともあったが、カバーが足りなくなることはなく、後半はまともなシュートを打たれることはなく、公式記録のシュート数はゼロ。F東京はこうやって戦い方を90分の中で選手の判断で変えることが出来る大人のチーム。もちろん、守備一辺倒ではなく、奪ったボールの展開は速いし、後半もサイドはF東京の支配下。3点目がなかなか入らないだけ。77分に武藤が3点目を決めたが、この日のF東京なら2-0から2-1になったとしても慌てることはなかっただろう。倉又監督は、決定機にシュートを外したことは大きな問題とは考えておらず、失点しなかったことを評価している。「5-1よりも1-0の試合の方がいいと思っている」と話した。
F東京の3年生は大学進学が決まっているようだが、すぐにプロの世界でプレーして欲しいと思う選手が多かった。技術、運動量、戦う姿勢のバランスがよく、本当に素晴らしい。ボランチの佐々木は、「同じエンブレムのトップチームがJ2に降格したことは残念だけど、ユースからクラブを盛り上げたい。(大学に進学するが)トップチームに戻ってクラブの力になりたいという気持ちをみんなが持っている。倉さん(倉又監督)にお世話になったので、倉さんのためにも優勝して、F東京に戻ってきたい」と話す。F東京にとって育成組織とその集大成であるユースは誇り。多くのサポーターもユースの戦いぶりをみて誇りに感じたと思う。全勝できるほどJ2リーグもサッカーも甘くはないが、まさかの降格に沈む雰囲気のなかでF東京のユースチームはクラブの誇りと希望の象徴になっている。
新潟は難しい内容の試合が続く中で、少ないチャンスに決定力を活かして決勝トーナメントに進出してきたチーム。しかし、F東京に対してはチームとして通用しなかった。試合後には片淵浩一郎監督から厳しい言葉が選手に投げかけられたし、GKの渡辺からも「やりきれないのも実力」という言葉が出た。それでも、ここまで来なければこの経験は出来なかった。16歳の川口、伊藤、早川史哉、福嶋竜二らを中心にこの経験を来年どう活かすかとうチャンスが残っている。この悔しさをどう成長につなげるのか楽しみにしたい。
以上
2010.12.13 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
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