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【Jユースカップ2010 Pick Up Player】武藤 嘉紀選手(F東京)(10.12.11)

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12/12 13:00 F東京 vs 新潟@深川G
★Jユースカップ2010特集
★Jユースカップ2010出場チーム紹介

「何をやっているんだろう」。武藤嘉紀には後悔がある。2ヶ月前の記憶が鮮明に焼きついて離れない。FC東京U-18は、高円宮杯決勝で広島に1−2で敗れた。先制しながらも前半終了間際に同点ゴールを奪われ、勢いに乗った広島に逆転負けを許した。「最初は、涙も出なかった。あの瞬間、終わったという喪失感しかなかった」。自分のゴールで優勝を勝ち取るはずだった。それが、広島の喜ぶ姿とは対照的に肩を落とす仲間の姿に胸が締め付けられた。武藤は試合終了の瞬間、その光景を遮るように奥歯を噛み締めて目を閉じた。

「準決勝の舞台に立てなかったからこそ、決勝でチームを勝利に導きたかった。不甲斐なく思いましたし、自分の力の無さを痛感した。何でこの舞台で結果を出せなかったんだろう」。準決勝は出場停止となり、決勝の舞台には仲間に連れてきてもらった。「準決勝前は落ち込んでいました。相手は(三菱)養和だったし、大学受験で2人いなかった。だから不安でしかたなかった」。落ち込む姿に仲間から声を掛けられた。「俺たちが決勝に連れて行くから信じて待っていろ」。ピッチの外からチームメイトを見守った。試合開始前から不安で足が震えていた。だが、チームメイトは、言葉通り3−1で三菱養和を下して決勝戦へと導いてくれた。足の震えは収まり、頼もしい仲間に胸の中が奮えた。

「2点目を奪ったときには、もう嬉しくて、嬉しくて、まだ終わっていないのに泣いていました。試合が終わった後も、自分や受験でいなかった選手たちのユニフォームを着込んでピッチで喜んでくれた。その姿を見ていいチームとチームメイトと出会えたなって、そう思えた」だからこそ、決勝で勝ちたかった。叶えられなかった自分に腹が立った。それほど責任感が強い男だ。

「初めて見たときに、何か持ってるなって。そう思わせる選手だった。まだまだ大人になりきれていないところもあるけど、素直だし、本当にサッカーが大好き。ボールを一個与えていれば、一日中、ボールを蹴っている。本当にサッカー小僧って選手だよね」倉又寿雄監督は、武藤の3年間を振り返っていた。元々、両足でボールを自由に扱う器用な選手だった。身体能力も高く、キーパー以外のポジションならどこでもできる。1対1には抜群の強さもある。観る人をワクワクさせるドリブルもある。「守備を身につければ、さらに伸びる」と考えた倉又監督はその武藤をサイドバックとして育ててきた。そして、今春の出来事を思い出して頬を緩めた。「あいつは、今年1年間は前線のポジションで挑戦したいと、俺に断言してきた。そんな選手は今までいなかったよね」

指揮官を驚かせるほど、武藤は3年間で精神的にも逞しくなっていった。武藤は来春のトップチームへの昇格候補の一人だったが、大学進学を自ら決断している。自ら口にした決断にはリスクも伴う。それでも彼は自分の意志を貫いてきた。この好漢は、ちょっと骨太だ。「これまでも自分の意志で決めてきた。だからこれからも自分が決めたことに責任を持ちたい。周りからの期待を受け止めて、それを自分の力にしていきたい。もう結果がすべて。大阪で優勝カップを持ってみんなで喜び合いたい」。

武藤がボールを持つと、マークが集まる。得意のドリブルには勇気が必要だ。だが、彼なら躊躇したくなる弱気を振り切り、俺が突破するという意志を示す一歩を踏み出せるはずだ。2ヶ月前の苦い記憶を振り切り、FC東京U-18は連覇へと踏み出す。

2010.12.10 Reported by 馬場康平
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