12月4日(土) 2010 J2リーグ戦 第38節
富山 3 - 3 愛媛 (12:34/富山/3,661人)
得点者:16' 石井謙伍(愛媛)、20' アライール(愛媛)、29' 石田英之(富山)、71' 渡辺誠(富山)、78' 石田英之(富山)、88' 福田健二(愛媛)
スカパー!再放送 Ch183 12/6(月)後02:00〜
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DFに当たったクロスボールがゆっくりとゴール前へ放物線を描く。後半残り5分、ピッチに入ったばかりのFW長谷川満が落下点へと走り込む。約1年ぶりの出場で、この日が引退試合だった。神様がいた。観客の多くがゴールの予感にこぶしを握ったことだろう。
ジャンプは届かずシュートにも至らなかったが、長谷川は「持ってるなぁ、と一瞬思った。安間監督から『ダイビングヘッドがノルマだ』と言われていたので遠かったけれど飛んだ。自分らしいプレーを少し見せることができてうれしかった」と振り返った。
富山は引退する「Jへの扉を開いた伝説の選手たち」(安間貴義監督)が先発。2点差をひっくり返して有終の美は目前だった。しかし、ドラマはここで終わらなかった。残り2分、愛媛は今季チームをけん引したFW福田健二が同点ゴールを決めて意地をみせた。試合後の引退セレモニー、富山のMF渡辺誠は「サッカーにさまざまなことを教えられた。喜び、苦しみ、感謝…。きょうも厳しさを教えてくれた」と語った。
富山はJFL時代からプレーする13人を含む14人の引退と契約満了が決まった。スタジアムに漂うセンチメンタルな気分を切り裂いたのは愛媛のFW石井謙伍。前半16分、MF赤井秀一の左CKをニアに走り込んで鮮やかなヘディングシュートを決めた。同20分には再びCKからDFアライールがこぼれ球を蹴り込んでリードを広げた。
安間貴義監督はこの時点で今ひとつ機能していない4-5-1の布陣に見切りをつけ、中盤をひし形にした4-4-2へ。「逆転をイメージし、あえて相手にサイドを攻めさせることにした」。愛媛のウイークポイントとみていた攻めから守りへの切り替えを突くためにリスクを負う決断をした。同29分、2トップの位置に上がったFW石田英之にゴール前でチャンスボールがこぼれ、反撃の合図となる得点が生まれた。昨季のチーム得点王の石田も戦力外通告を受けてこの日が富山での最後の試合。2失点で一度はあきらめかけたハッピーエンドへのシナリオがサポーターの望む最高のかたちで再び進み出した。
後半は1点を追う富山のペースで進むが、なかなかシュートまで持ち込むことができない。しかし、前線のチェイシングやDF陣の体を張ったプレーの積み重ねが、同26分の同点弾に結びついた。DF西野誠のアーリークロスに渡辺が頭で合わせてゴールネットを揺らした。渡辺は昨季ホーム開幕の愛媛戦で富山のJリーグ初得点をマークしており、最後も勝負強さを発揮。歓喜する仲間に押し倒されてもみくちゃにされた。
そして同33分、MF江添建次郎からの縦パスを受けてFW苔口卓也が左足でシュート。GKが弾いたボールを再び石田が決めてついに逆転に成功した。
愛媛は同点に追い付き、12勝12分12敗の11位でフィニッシュ。バルバリッチ監督は「(きょうのように)相手にリズムを渡して自分たちがパニックになるのは、この1年の問題点でもあった。しかし、シーズンを総括すれば、満足はできないにせよ、不満ではない」と語った。
富山も失点の多さに苦しんだ今季を象徴するかのように、最後に追い付かれてしまった。しかし、「メンタルが弱いと言われ続けた中で、0−2の劣勢をはね返し、引き分けにもってきた。満足しているし、きょうのメンバーを誇りに思う」と安間監督は話す。よく戦い、少し足らないところもあった。教訓を含む結果は、旅立つ選手たちと転機を迎えるクラブにふさわしい。
最終戦の来場者は3661人。富山は来季、Jリーグ3年目を迎える。まだまだたくさんの新たなサポーター、クラブに関わる仲間を増やしたい。そして彼らに、2010年の最終戦を見たことを誇らしく語ろう。
以上
2010.12.05 Reported by 赤壁逸朗
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